勝ち続ける自民党、もう政治は変わらないの?西田亮介氏「政治の社会学」を語る!選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2024年2月28日に公開された動画のテーマは……「支持率低下でも自民党が勝ち続ける理由」

ゲストに社会学者で東京工業大学・准教授の西田亮介氏をお招きし、制度や歴史、社会学的に見た、自民党が勝ち続ける構造を解き明かしていただきました。

この状況は変わらないのでしょうか……?

【このトピックのポイント】
・支持率の低下が止まらないのに、地方選で勝ち続ける自民党
・自民党が勝つ「鉄板の方程式」とは
・政治は、本来人々が幸せに生きるためのものであるはず!

各地の選挙、依然として自民党が強いのはなぜ?

派閥の政治資金パーティを巡る裏金問題などで支持率の低下が止まらない最近の自民党ですが、各地の選挙では、図のように与党系が勝利を続けている印象を受けます。

西田氏は、この状況を「それほどおかしくない」とコメント。ひとつひとつの選挙の背景をひもときます。

・京都市長選挙は相乗りだったので、自民党がどうこうということではない。むしろ、共産党候補が善戦したという印象
・江東区長選は不祥事によるもの
・武蔵野市長選は前市長の国政へのくら替えによるもの

ただ、西田氏は、1月の八王子市長選についてだけは「ちょっとずるい」と眉をひそめます。

伝統的に保守の強い地盤で、萩生田光一・前自民党政調会長の地元の八王子。その萩生田議員は、八王子市長選挙の投開票翌日の1月22日に、自身の政治資金収支報告書に2,700万円あまりの不記載の裏金があったことを明らかにする記者会見を開きました。

西田亮介氏「投開票があるまで、有権者に示さなかったわけですよね。そんなんでいいのかと思いますね」

「驚異の支持率の低さ」でも選挙に勝ってこれた自民党。自公の協力がカギ?

続いては、衆院選の歴史を振り返ります。

2000年、当時の森内閣の支持率は17%と「驚異の低さ」でありながら、与党側が271議席と、絶対安定多数を確保しているのが目を引きます。

MC伊藤由佳莉「自民党が強かったことには、どういう要素があるのでしょうか?」

西田氏は、2000年に公明党が与党側に回り始めたことで自公連立が始まり、選挙協力するようになったという転換点を示し、ここで無党派層が増えたり、自民党への女性の支持率があがったりしたことが、自民党の底上げにつながったと指摘します。

続いては2017年、内閣支持率37%、不支持43%で自民党は危険水準に近づいた時期ですが、ここでも自公で313議席を獲得、大勝しました。

西田氏はこの結果を「野党がばらけていたのが大きい」と指摘します。

そして今日。自民党派閥の政治資金パーティなどで支持率が下がった状況でも、与党が勝ち続けている強さはいったいどこにあるのでしょうか。

西田氏は2つのポイントを指摘します。

まずは、選挙制度です。小選挙区・比例代表制である現在の衆院選では、以下の構図ができあがっているため、与党が常に有利となっています。その上で西田氏は、「相手(野党)が弱いことがとても大きい」と評します。

与党…候補者を擁立し一本化できている
野党…ばらけており、小選挙区でも比例でもまとまった票が獲得できない

もう1点、西田氏は1990年代と今日の違いを「自民党内の改革派の存在」で説明します。

ロッキード事件、リクルート、東京佐川……「政治とカネの問題」が続く中、改革派が自民党を割って出ていったという歴史があります。

ところが現在は「まったく真逆」だと西田氏は言い切ります。

西田氏「改革というよりも、そんなに不祥事が表沙汰になっていない、あるいは大きくなっていない人たちは自民党に残り、『出て行けば』程度で、除名にもしない。これくらいでは迫力が出ないし、万が一不祥事を起こした人が外へ出ても、そこに野党系が連なることはできない。利がないから」

結果として、「政治とカネ」の問題を内包したまま、自民党は「大きな塊として残り続ける。そして野党は弱いまま」と西田氏は分析します。

内閣支持率、自民党の政党支持率も下がっていますが、野党の支持政党率が上がっているわけでもありません。

西田氏は、与党から離れた人たちの受け皿は「支持政党なし=無党派層」となっており、彼らが投票に行かない限り低投票率が続き、自公連立政権の勝利が「勝利の構図・鉄板の方程式」として続いてしまうことを憂います。

幸せに生きるために政治があるはず。どう心を持てばいい?

例えば、1993年選挙では自民党から分裂した政治家たちの動きがあり、細川政権につながるというダイナミックな動きがありました。

MC伊藤「改革と、政党の政権交代が結びつかないのはなぜでしょう?」

しかし、小選挙区・比例代表並立制では組織の後押しがとても重要になります。地方議員の支援も必要です。自民党を離れて、そうした支援がなくなるのは「怖くてしょうがない」だろうと、西田氏は政治家の心の動きを推し量ります。

自公連立が続く中、地元の人も、立候補者を応援するというだけでなく、自民党候補だから支える、という応援姿勢があるでしょう。

「それがなくなってしまうという条件のもとで、自民党から飛び出して選挙を戦う『ちゃんとした』政治家はもういないんじゃないかと思いますね」と西田氏は寂しそうに語ります。

一方、「支持政党なし」に傾いてしまう有権者には、政治が変わらないという諦めがあるのでしょうか。

西田氏は、「政策に国民の考えが反映されていると思うかどうか」という質問に対して、「昭和から現在に至るまで、一貫して『反映されていない』の回答が『反映されている』を上回っている」という内閣府の調査結果を紹介。国民が主観レベルでそう感じるならば、投票に無力感を覚えるのは無理もないだろうと推察します。

また、同じ内閣府の調査では、2010年代以降、「世の中に満足している」という回答が、「満足していない」を上回るようになっているとのこと。

世の中に満足していていて、かつ政治には諦めているという状態が「何をやっても我々の声は政治にとどかない、無駄」という諦めを育て、投票行動の低下につながっている。それが、現代の日本社会における「政治の社会学的問題」だ……と西田氏は唇を噛みます。

MC伊藤「このままの状況だと、解散総選挙があっても、与党有利に変わりない?」

政治や、政治が選ぶ政策は、我々の生活やビジネスに深く関係しています。暮らしの背景には必ず政治があるのです。次の総選挙に間に合わないとしても、変わるポイントは2点あると西田氏は説きます。

・野党がひとつにまとまることができるか?
・民主党系の政党は信頼されていない。大きな連立を作る、別のまとまり方が必要ではないか。キーワードは子育て・無償化?

なお、トーク後半の内容は、今月発売されたばかりの西田氏の新著でも、存分に語られています。ぜひお読みください!

明日の自信になる教養2 ー池上 彰 責任編集『幸せに生きるための政治』
著者:西田 亮介
責任編集:池上 彰
https://www.amazon.co.jp/dp/4048975676?tag=kadoofce-22

動画本編はこちら!

支持率が低くても自民党が勝ち続けられる謎に迫る!

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