ポテンシャルは当代最高レベル BMW「i7 M70 xDrive」 

多くのメーカーが将来的な販売計画をBEV(電気自動車)に一本化する中で、BMWは早い段階から様々な市場向けモデルの供給を宣言している。実際、現行モデルのG70型 7シリーズは、多様性重視というBMWのスタンスを示す良い例となっている。

ラインアップはガソリンエンジン(直列6気筒+2WD)の「740i」とディーゼルエンジン(直列6気筒+AWD)の「740d xDrive」、BEVの「i7 eDrive50」と「i7 xDrive60」の4つ。ICE(内燃機搭載車)とBEVが同じプラットフォームの上できれいに作り分けられているのだ。

BEVの「i7」がラインアップの頂点に位置するのは、突出した動力性能を考えれば当然だろう。今回紹介するBMW「i7 M70 xDrive」がそれだ。

現行モデルの7シリーズは先代までとは違い、ロングホイールベースに統一されている。ホイールベース内の床下にリチウムイオンバッテリーを搭載し、前後に駆動用モーターを置くAWDモデル。フロントモーターの最高出力は258psでリアモーターが489ps、システム総計は659psに上る。さらに驚かされるのはトルクが1015Nmに達していることだ。

全長5390ミリ、リムジンサイズのボディは荘厳でフォーマルな印象。4つのシャープなヘッドランプにはスワロフスキー製のクリスタルが採用され、超大型のキドニーグリルと相まってフロントマスクのインパクトは十分だ。名門ゴルフ場のエントランスが似合いそうな雰囲気をまとっている。

大型のリアドアを開けると、VIPのためのシートスペースが現れる。試乗車にはオプションのエグゼクティブラウンジシートが装備されており、電動オットマンをはじめとする快適機能が一通り備わっていた。

ステアリングを握りスロットルを踏み込むと、見た目とのギャップに驚かされた。エンジンとは違い、電気モーターはいきなり最高出力に達するのでBEVの加速は強烈という予備知識があっても開いた口が塞がらないはず。このクルマがMパフォーマンスモデルであることを思い知らされた。

これまで世に出たクルマの中でも、これほど“スピード”と“ラグジュアリー”が理路整然と同居しているモデルはめずらしい。2つの要素は一方が増せばもう一方は減る、というトレードオフの関係にあるのが一般的だが、電子制御エアサスペンションや可変式ダンパー、アクティブスタビライザーといったハイテク技術によって、極上の乗り心地と鋭い加速感、ハンドリング性能が高いレベルで融合している。

BEVはホイールベースが長いほど床下に大きなバッテリーを積むことができ、航続距離が延びる。十分なホイールベースの確保はリムジンに求められる広いリアシートスペースの充実とも合致している。その一方で、小回りが利かなくなり、ハンドリングのスポーティさは失われがちだが、それらは後輪操舵システムによって解消されている。

歴代の7シリーズは先端技術のショーケースのような役割を果たしてきたが、現行モデルは特にその傾向が強く完成度が高い。ただ大きくて、高級で、荷物がたくさん積めるだけの4ドアセダンではない。ハンズオフが可能なアダプティブクルーズコントロールを含め、ポテンシャルは当代最高レベルといえる。自動車の「今」と「これから先」を感じたいのであれば選ぶべき一台だ。

BMW i7 M70 xDrive 車両本体価格: 2208万円(税込)

Text : Takuo Yoshida

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