『ドラえもん』『こち亀』で登場した発明品、今では当たり前となったサービスや商品といえば……

藤子・F・不二雄による児童漫画『ドラえもん』は、世代を超えて愛される名作である。長期にわたって連載されたため、ギャグ、シリアス、SF、長編もの、そして大人が読んでも感動する話など、様々な話が描かれた。

そんな『ドラえもん』の数ある作品の中から、テーマに合わせて“とっておき”の作品を集めた傑作選コミックスシリーズ『とっておきドラえもん』が、小学館から刊行されている。8月28日には、シリーズ7作目となる『ぞくぞくぶるるホラー編』が発売された。

実は、『ドラえもん』にはホラー漫画顔負けの、身の毛がよだつ怖い物語が意外にある。今回は選りすぐった全15編を収録。特に、使い方次第では恐ろしい展開になってしまうひみつ道具と、それに振り回されるのび太たちが描かれた作品が多い。

収録される作品は「怪談ランプ」「のろいのカメラ」「不幸の手紙同好会」「人食いハウス」など、タイトルを列挙するだけでゾクゾクするものばかり。しかも、『ドラえもん』は児童向けの漫画なので、タイトル(もしくはひみつ道具の名称)が直球ストレートすぎるため、かえって恐怖をかき立てる。

収録作品の中でも「どくさいスイッチ」は、ファンの間ではよく知られた危険なエピソード&ひみつ道具のひとつだ。何しろ、気に入らない人間や生物をこの世から消し去ることができるのである。しかも、消し去られた人間ははじめからこの世に存在していなかった設定にできるのだ。

また、「人間製造機」はタイトルからして、怖すぎるだろう。こんなひみつ道具がデパートで販売されている未来の世界の秩序は、いったいどうなっているのか。気になって仕方がない。『ドラえもん』のブラックユーモアあふれる作品世界に浸ることができるのも、『ぞくぞくぶるるホラー編』の魅力といえるかもしれない。

今回、通常版と同時発売される特別版には、A3サイズの「光るポスター」が2枚、折り目なしで同梱。光を当ててギラッと光るポスターと、部屋を暗くしたときにほのかに光るポスター、対象的な2枚を楽しめる。

なお、コミックスの巻末には、『富江』シリーズや『うずまき』など数多くのホラー漫画を世に送り出した漫画家・伊藤潤二による解説も収録。『ドラえもん』に潜む恐怖を、独自の視点で解き明かした解説は必読だ。

(文=元城健)

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