サステナビリティ関連用語は伝わりにくい?――英調査で判明した「言葉の壁」と企業に求められる役割

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あなたが当たり前に使っているサステナビリティ関連用語は、本当に相手に伝わっているだろうか。英国の調査会社と広告代理店が、サステナビリティ関連用語の消費者認知度を調査した。その結果、企業の情報発信で一般的に使われていても、意味を理解している消費者が少ない用語があると分かった。一方、半数程度の消費者が、気候変動対策において企業の影響力が大きいと認識していることも示された。企業には消費者教育の役割が期待される。(翻訳・編集=茂木澄花)

英国の調査会社「トラジェクトリー(Trajectory)」と広告代理店「フリートストリート(Fleet Street)」が、このほど新たな調査を行った。サステナビリティの情報発信で企業がよく使う用語に対する、消費者の認知度を調べたものだ。「サステナビリティの言語表現(The Language of Sustainability)」と題したこの調査では、英国の1000人の成人に対してアンケートを行った。その結果、一部の用語の認知度が極めて低いことが分かった。

調査された主な用語と、その意味を完全に理解していると回答した人の割合は次のとおり。
・サーキュラーエコノミー(circular economy) 4%
・カーボンオフセット(carbon offsetting) 11%
・グリーン(green) 24%
・サステナブル(sustainable) 26%
・オーガニック(organic) 32%
・環境にやさしい(environmentally friendly) 35%
・地元産(locally sourced/grown) 40%
・使い捨てプラスチック削減 47%
・リサイクル可能(recyclable) 55%
・ネットゼロ(net zero) 59%

「カーボンオフセット」は、企業がネットゼロ目標を達成するために欠かせない方法の一つだ。しかし、この言葉の意味を完全に理解していると答えた消費者は、11%しかいなかった。「サーキュラーエコノミー」も幅広く企業が取り入れている用語だが、自信をもって定義できると回答した消費者はわずか4%にすぎなかった。

この半面、「リサイクル」や「環境にやさしい」など、比較的広く使われている用語では、多少良い結果が出た。特に「ネットゼロ」の59%は驚きだ。しかし「使い捨てプラスチック」については、メディアで広く取りあげられ、使用規制も始まっているにもかかわらず、用語の定義に自信がある消費者は47%にとどまった。こうしたことから、企業と消費者の間に言葉の壁があることは明白だ。

「多くの企業やブランドが環境危機に立ち向かうために不可欠なアクションを起こしている一方、この調査から、コミュニケーションが必要であることは明らかです。消費者を巻き込むためには、まだまだ取り組むべき課題があり、その筆頭がサステナビリティ関連の用語です。多くの用語が、消費者にとってはよく意味の分からない言葉なのですから」。フリートストリートの共同創業者、マーク・ストレットン氏はこう語る。

「多くの企業が基本的な用語と見なしている言葉が、一般にはあまり理解されていないことが顕著に表れています。多くの企業がサステナビリティに多額の投資をし、意欲的な目標を立てていますが、重要な要素が欠けているのです。用語に多大な努力を払う必要があります。用語を理解している消費者が増えれば、この現代の大きな問題に反応を示し、積極的に関わる人も増えるでしょう」

消費者の9割「企業はサステナビリティの取り組みを語ることが重要」

データによって、認知度と好感度の間の明確な相関関係も示されている。消費者が特に好意的に捉える「リサイクル」「使い捨てプラスチックの削減」「地元産」などの用語は、特に広く理解されている用語でもある。

分析によれば、こうした主要な用語の意味の理解について、最も自信を持っているのがZ世代(18~24歳)だという。例えば「サステナビリティ」という言葉の意味を理解している人の割合は、65歳以上と比べて18~24歳のほうが24%高い。

教育に目を向けると、教育水準の高い人のほうが、主要な用語の理解度に自信を持っていることも分かった。例えば、大学卒以上の学歴がある消費者は、そうでない消費者より「サーキュラーエコノミー」という用語を理解している割合が11%高かった。興味深いことに、中等教育を修了して今は学校に通っていない年長の消費者と比べて、まだ学校教育を受けている途中の若い消費者のほうが「サーキュラーエコノミー」を理解している割合が30%高かった。上の世代より現役の学生の理解度が高いことがうかがえる。

一方で、データからは効果的なコミュニケーションの重要性も見えてくる。90%の消費者が「企業がサステナビリティの取り組みについて語ることは重要だと思う」と回答している。さらに、68%が「明確な環境戦略を持っている企業から商品を購入したいと思う」と答えた。さらに47%の人が「気候変動対策を実行するうえで、企業の責任が最も重い」と回答した。また「企業は結果を出すために誠実に取り組んでいると思う」と答えた人は約半数(48%)だった。

「近年、多くの企業が効果的なサステナビリティ戦略の立案と実行に関して急激な前進を見せています。とはいえ、重要なのは急場しのぎの取り組みではなく、経営層の課題として捉えることです」。ストレットン氏は続けて次のように強調する。「半数以上の消費者は、企業が誠実に取り組んでいるとは考えていません。だからこそ、消費者と関わり、適切なメッセージを伝えるために、コミュニケーションが果たす役割は大きいと言えます」

「特定の用語に対する消費者の理解と、その用語に対する前向きな感情の間には、明確な相関があることが、データによって示されました。このことから企業には、主要な気候関連用語に対する世間一般の認知と理解が深まるよう、消費者を正しく教育する責任があると言えます」。トラジェクトリーの創業者でCEOのポール・フラッターズ氏はこう話す。「半数近くの消費者が『企業の責任が最も重い』と考えているという事実が、企業の持つ力を示しています。だからこそ、この問題を真剣に受け止め、消費者を巻き込んで教育していくための取り組みが非常に重要なのです」

企業にとって「常識」になっている用語は、消費者にとって「よく分からない言葉」かもしれない。企業は消費者が理解しにくい概念的な言葉を使うのではなく、理解・共感しやすい具体的な説明をすることで、消費者との間にある壁を取り払う必要がある。そうした消費者教育が、社会全体のサステナビリティ課題への関心を高めることにつながるだろう。

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