親に「塾代240万円がもったいないから高卒で就職しろ」と言われました。大学に行くより高卒で働くほうが稼げますか? 将来的な収入に差は出るのでしょうか?

中高生の学習塾費の平均額は総額100万円超

文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、学年別に見た学習塾費は図表1のとおりとなっています。中学校、高等学校の6年間、平均額で塾に通った場合の総額は、公立で約110万円、私立で約104万円となっており、私立校に行っている子の方が少ない傾向にあるようです。

これは、私立校のほうが学校での学びが広く深いことによって、塾に行く必要がない場合も多いのではないでしょうか。また、公立と私立の差は中学校第3学年が顕著であることから、中高一貫校への進学により、高校受験の必要がないからとも考えられます。

その代わりに、高校受験のない中高一貫校を始めとする私立中学校、高等学校に入るため、小学校時代にかかる塾代は私立が圧倒しています。

図表1

文部科学省 令和3年度子供の学習費調査 学年別補助学習費

塾代は40万円以上が最多

前記の塾代は、塾に行っていない家庭も含む平均額である点に注意しなければなりません。図表2は前記の調査の学習塾費の金額分布を表しているものですが、なんと塾代を支払っている家庭の中で中学校、高等学校については公立・私立ともに40万円以上が最多となっています。

反対に「0円」と回答している割合は、公立中学校で約30%、私立中学校で約46%40、公立高等学校では約67%、私立高等学校で約61%となっていることから、この結果が図表1の平均額を大きく下げているものと考えられます。

図表2

文部科学省 令和3年度子供の学習費調査 学習塾費の金額分布

つまり、中学校入学後から6年間塾に通う場合は年間40万円、6年間で240万円かかる可能性が高いということになります。

高卒と大卒の生涯賃金差

「240万円もの塾代がかかるなら、高卒で就職すれば塾代も不要だし、早くから収入が得られて一石二鳥」と思う人もいるかもしれません。しかし、高卒と大卒では生涯賃金に大きな差が出ることは知っていますか?

塾代に240万円使ったとしても、将来回収できる可能性が高いのです。図表3は2022年に行われた、学校を卒業してから60歳までフルタイムの正社員を続けた人の生涯賃金(退職金を除く)の調査結果です。

男性の場合、大学・大学院卒の生涯年収が2億6190万円であるのに対して、高校卒では2億500万円となっており、その差額は5690万円にもなります。女性の場合は、大学・大学院卒が2億1240万円に対して高校卒が1億4960万円で差額は6280万円となり、男性よりも顕著な差が出ています。

社会を生き抜いていくために学歴がすべてではないことは大前提ですが、それでも日本はまだまだ学歴社会の考え方が根強いです。偏差値の高い有名大学卒であれば、この傾向はさらに強くなるでしょう。

図表3

独立行政法人労働政策研究・研修機構ユースフル労働統計2022 21生涯賃金など生涯に関する指標

まとめ

高卒と大卒の生涯賃金差は約6000万円です。6年間の学習塾費240万円と比べてどうでしょうか?

もちろん高等教育機関へ通うためには学費も必要になりますが、私立大学の医学部でも行かない限りは、6000万円もかかることはないでしょう。家庭の事情や子どもの希望などもあるので一概にはいえませんが、塾代240万円を節約してまで就職を勧めるのは検討の余地がありそうです。

出典

文部科学省 令和3年度子供の学習費調査
独立行政法人労働政策研究・研修機構ユースフル労働統計2022 21生涯賃金など生涯に関する指標

執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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