【編集長日記】ジャカルタ、イースト菌日和

突然、熱中し始めたのがパン作りだ。子供のころに母が時々、パンを作ってくれたが、冬はこたつの中にパン種を入れたり、発酵させるのが大変そうだった。イースト菌の発酵に最も適した温度は27〜36℃。ジャカルタの気温は大体これぐらいなので、室温で放り出しておけば良い。勝手に膨らみ、あとは焼くだけ。

パン作りは「大変、面倒」というイメージがあるが、実際は、時間はかかるが、手間はそんなにかからない。「今日は一日、家にいる」と決まっている日は、朝、ささっとパン種を作ってしまう。特に、よく晴れた、暑くなりそうな日は、「今日はイースト菌日和ではないか!」と、作らないと、そわそわして落ち着かない。

最初に作ったパンは失敗だった。日本の雑誌を見て、レシピの分量通りの水を一気に入れたら、生地がベチャベチャになり、「最初はベタベタして手にくっつきますが、こねているうちに、だんだん手につかなくなります」と書いてあるのに、いくらこねてもベタベタのまま。「あー失敗だ……」と思ったが、そのまま放っておいたら膨らんだので、ベタベタのままで焼いた。火が強すぎて、焦げてしまった。発酵時間も足りなかったようで、あまり膨らまず、「ぎゅっ」「もちっ」と詰まったパンになった。

この失敗パンを食べたところ、あまりのおいしさに驚愕した。小麦粉はインドネシアではほぼ一択となる「Cakra Kembar」と「Kunci Biru」という、普通の物。なのに、かみしめるほどに粉の味がして、うまい。添加物が入っていないから? 手作りだから? ちなみに、塩はバリ塩、バターはぜいたくをしてフランスのElle & Vireを使う。私はパンにはこだわりがあって、ほぼ、フランス系の決まった3店でしか買わないのだが、「これなら買わなくてもいいのでは?!」と思った(プロのパンと自分の失敗パンを比べるのはあまりにもおこがましいのだが)。

2回目の時は、水の量に注意した。ジャカルタは湿度が高いから粉が湿気ているのか、日本のレシピより水を控えめにした方が良いようだ。発酵時間はレシピでは2時間だが、日によって違うので、膨らみが悪かったら思い切って長時間、放置しておく。焼く時は、鉄板を火から最も遠ざけて弱火で約30分、というオーブンの加減も、何度も焼くうちにわかってきた。

イースト菌のにおいが好きだ。ぷーっと膨らむのが楽しい。料理が苦手な人でも、誰でも作れると思う。

以前は、小さな丸パンが1個1万ルピア以上する物も買っていた。小麦粉は1袋1万5000ルピア程度なので、節約にもなる。しかし、節約という以上に、「生活必需品」を自分でまかなえる満足感と言うか、安心感と言おうか。「パン自給率」はほぼ100%を達成した。次は、漬け物に行こうか、小麦粉続きで、うどんを打ってみようか、干物も作ってみたいな、と楽しみになっている。

下記、「誰でも作れる」、私のめちゃくちゃパン・レシピです。

材料
強力粉(Cakra Kembar) 180グラム
薄力粉(Kunci Biru) 20グラム
ドライ・イースト(「Fermipan」など) 小さじ1/2
塩 小さじ2/3
砂糖 小さじ2
水 250cc(入れながら調整する)
バター 大さじ1

作り方
1 強力粉、薄力粉、ドライ・イースト、塩、砂糖を計り、ボウルに入れる。

2 水を少しずつ入れる。混ぜながら、粉全体に水を含ませるようにし、ポロポロした生地がまとまってきたら、こねる。水は入れすぎるとベタつくので、最後の方は慎重に。水は全部使わなくても良い。

3 生地にバターを練り込む。生地の中にバターを入れて包み、何度も折りたたむようにしてこねると、自然に、全体に練り込まれる。

4 生地を15回ぐらい、上からたたきつけるようにして落とす(騒音注意)。

5 生地を丸くまとめ、ボウルの上に濡れ布巾を掛ける。

6 2〜3時間ほど、発酵させる。日によって発酵の状態は違うので、様子を見て、適当に。2〜3倍ぐらいに膨らめば良い。

7 ガスを抜いて、もう一度丸くまとめ、ボウルの上に濡れ布巾をかけて、二次発酵させる。これも様子を見て、適当に。2〜3倍ぐらいに膨らめば良い。一次発酵より発酵速度は早い。発酵させすぎると生地がだれるが、焼くと特に問題はないので、それほど気にしなくて良い。

8 鉄板を入れたオーブンを点火してから、生地のガスを抜き、包丁で4つに切り分ける。

9 切り口を中に折り込むようにして丸め、上を押さえて平らにする。オーブンペーパーの上に並べる。

10 熱したオーブンの中に入れ、弱火で30分ほど焼く。焼き色がついたら出来上がり。すぐにオーブンから取り出して、あら熱を取る。

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