米最高裁、トランプ氏の免責特権について審理入りを決定

マデリン・ハルパート、アンソニー・ザーカー、BBCニュース

アメリカのドナルド・トランプ前大統領(77)が2020年大統領選挙の敗北を覆そうとした罪で起訴された裁判で、連邦最高裁判所は28日、前大統領に免責特権が認められるか判断を示すと発表した。

トランプ氏はこの前例のない裁判で、大統領としての公務の範囲内の行為については刑事責任を問われないと主張している。

保守派判事が6対3で多数派の連邦最高裁はこの日、トランプ氏の主張について審理することを決めた。

連邦最高裁がこうしたケースで判断を示すとしたのは初めて。

トランプ氏の主張については、連邦控訴裁が今月6日、判事全員一致でこれを退けていた。判決では、「選挙結果の承認と実施という、行政権に対する最も基本的なチェック機能を無力化するような犯罪も犯せる、無制限の権限が大統領にはあるとするトランプ前大統領の主張は、受け入れることができない」とした。

これを受け、トランプ氏は連邦最高裁に上訴していた。

判事らの意見分かれたか

トランプ氏は自身のソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで、連邦最高裁の決定を歓迎。免責が認められないなら、「大統領は退任後の不当な訴追や報復の可能性を常に懸念し、機能不全にすら陥るだろう」とし、「これは実際、大統領の恐喝や脅迫につながりかねない」と書いた。

トランプ氏は昨年、2020年大統領選でジョー・バイデン氏(現大統領)への敗北を覆そうとして証人に不正行為を働いた罪や、国家を欺こうと共謀した罪などで起訴された。

起訴したジャック・スミス特別検察官は、裁判を今年開くよう求めてきた。

連邦最高裁は連邦控訴裁の判決を維持することもできた。その場合、公判に向けた手続きが再開されるはずだった。

しかし、連邦最高裁の判事9人のうち最低4人が、トランプ氏の主張を審理することに賛成した。このことからは、トランプ氏の訴追免責について、判事らの間で意見が分かれていることがうかがえる。

裁判が大幅に遅れる可能性

今回の決定は、当初3月に予定されていたトランプ氏の裁判を大幅に遅らせる可能性がある。

連邦最高裁の審理は4月22日の週に予定されている。トランプ氏に関わる裁判はすべて、連邦最高裁が判決を出すまで停止される。

判決はすぐに出る可能性もある。トランプ氏には訴追免責があるとの判断が示されることもありうるし、裁判をいっそう遅らせるような決定を出す可能性もある。

司法省のガイドラインでは、政治的配慮が求められる捜査での訴追行為は、選挙の60日前までと制限している。そのため、トランプ氏に関する訴追の動きは9月上旬までとなる。

もしトランプ氏が11月の大統領選で勝利すれば、この事件が裁判に至らない可能性は高まる。同氏が任命する司法省の幹部らが、特別検察官による捜査を打ち切ったり、無期限に停止させたりする可能性がある。トランプ氏が自身を恩赦するという前例のない措置を取ることもありうる。

大統領選の共和党候補に指名されることが有力視されているトランプ氏は、他にもいくつかの事件で連邦および州の当局によって刑事責任を問われている。

ポルノ俳優への口止め料の支払いをめぐってビジネス取引の記録を改ざんした罪に問われた裁判は、3月下旬に公判が開始される。

連邦最高裁は今回の事件以外にも、トランプ氏関連の裁判で審理を進めている。国に対する暴動や反乱に関わるなどした者は官職に就けないとする合衆国憲法修正第14条の規定により、トランプ氏は大統領2期目を目指す資格はないとする司法判断が一部の州で出されており、当事者の弁論を聞いているところだ。

トランプ氏はすべての裁判で無罪を主張しており、政治的な「魔女狩り」が行われているとたびたび述べている。

(英語記事 Top US court will rule on Trump immunity claims

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