かたかたインドネシア #57 geje / typo / landak

日本はこれから梅雨の季節ですが、インドネシアではめっきり雨も少なくなり、過ごしやすい気候になってきました。ゴルフ好きの人は、いよいよシーズン到来ですね。断食月でもあり、いろいろ気を使いますが、その後には楽しいレバラン休暇が待っていますので、頑張っていきましょう。

先月のアクア・シリーズはなかなか好評だったようですね。ウェブで「#AdaAQUA」でイメージ検索してもらうと、たくさん見ることができます。今月も、その中から、いくつかご紹介したいと思います。

geje【グジェ】

アクア・シリーズで取り上げられる前から紹介しようと思っていた表現で、すでに広く、一般的に使われています。アクアに先を越されちゃって、ちょっと悔しかったりもします(笑)。gak jelas = tidak jelas で、「はっきりしない」という意味の短縮形です。

”Kamu kenapa sih kalau di grup sering ngeshare artikel geje?”「いつもグループチャットで何言ってるかわからない投稿をするのはなぜ?」。”Kalo ngetik pelan-pelan ya, typo melulu, jadi geje lu ngomong apaan.”「タイプする時はゆっくりとね。タイプミスばっかり。だからあんた、何言ってるのかわからないのよ」。typoは次項で説明しますね。

最後に、アクアのボトルに書いてある例文です。”Minuman dingin kok ditiup?”「冷たいドリンクなのに、なぜフーフーしてるの?」。なんとなく、アクアの冷えたボトルをフーフーしている様子が目に浮かびます。しかし、ボトルの飲み口に虫でもいたわけじゃあるまいし、この例文を選んだ理由こそ、まさにはっきりしませんよね。

● ngeshare シェアする、投稿する
● ngetik タイプする
● melulu もっぱら、だけ
● lu あなた
● tiup 息を吹きかける

typo【ティポ】

先ほどの「geje」の例文に出てきたtypoはタイプミス(最近だとフリックミスでしょうか)を表し、英語ですが、2000年ごろにチャットがはやった時に、インドネシアでも使われるようになりました。当時はあくまでもチャット愛好者だけが使っていたのですが、最近ではチャット以外にも広がってきたようです。

”Ini orang niat gak sih ngelamar kerja? Masa lamarannya banyak banget typonya?”「この人、本気で仕事探してるのかな? 応募書類がミスタイプだらけってマジ?」というのが、よく使われるパターンですね。

”Gimana sih katanya janjian jam 3 kok udah jam 3 lewat dia belum sampai ya?”「3時の約束と言って、もう3時過ぎてるのに、なぜ彼女はまだ着かないの?」”Jangan-jangan dia typo, maunya jam 4 tapi typo jadi jam 3. Dia ‘kan ratu typo, coba telepon.”「4時のつもりが、打ち間違って3時になっちゃったのかも。彼女はミスタイプの女王なんだから、電話してみなよ」なんて例文を考えてくれた人がいますが、残念! 単なる遅刻ですから(笑)。

ところで僕はずっと、「typ”e”をtyp”o”と打ち間違えた」が、typoの語源だとばかり思っていました。そこのあなたも同じなんじゃないですか?(笑)。ところがなんと、違っていたんですね。「typographical error」の略で、「印字ミス・誤植」といった印刷用語から、一般用語に転化したものだそうです。なんだかつまらない結論で残念でした。皆さんも、「びーと説」の方が面白いと思いませんか?

● niat 決意、覚悟
● lamar 仕事に応募する、志願する
● masa まさか
● lamaran 応募、出願
● ratu 女王

landak【ランダック】

こちらは、まだそれほどはやっているわけではなく、今だとlandakと聞いても、動物(ヤマアラシ系)をイメージしちゃうインドネシア人の方が多いかもしれません。アクアに選ばれたのをきっかけに、これからどんどん一般的に使われていくんじゃないでしょうか。以前にご紹介した、「虹」という意味の”pelangi”をPlaza Semanggiの短縮形として使う例など、実在の単語に短縮語としての別の意味を付けるという、インドネシアの言葉遊びによくあるパターンですね。ちょっとした先物買いですが、紹介してみたいと思います。

アクアの説明によると「lambat bertindak」で、「行動が遅れる」時に使えるみたいです。ボトルの例文は”Dia sudah jadian, kamu baru nembak, kamu landak.”「彼女、もうつきあい始めちゃったのに、今さら『ハント』なんて、あんた手遅れだね」。nembakはいろいろ面白い使い方があるんですが、この例では「ガールハント」の用法です。

何人かのインドネシア人にlandakの例文作成をお願いしてみたところ、上と同様、「jadian」を使った例文が多かったですね。”Landak sih lu, keburu jadian sama orang lain ‘kan dia.”「おまえ、手遅れだよ。彼女、別の人とつきあい始めちゃったばかりだよ」みたいな例文ばかり。「手遅れ」って言われて真っ先に思い浮かぶのって、カレシ・カノジョのことなんですね。インドネシア人も苦い青春時代を送ってきたみたいです(笑)。

個人的には、こんな例文かな。”Mau pakai ‘geje’ untuk “Kata-Kata Indonesia”, tapi keduluan Aqua.”「『GEJE』を『かたかたインドネシア』に使おうと思ってたのに、アクアに先を越されちゃったよお」。”Yah, Beat-san landak sih.”「うん、びーとさんったら遅いのよ」。これが、先を越されて悔しい今の気持ちでした。

● bertindak 行動する
● jadian 異性と交際する
● nembak 狙う、射撃する
● keburu 以前に、先に

びーと(名取敬)
「N真珠」オーナー。1993年からインドネシア在住。1998〜99年、よろずインドネシアに「かたかたインドネシア」を掲載する。2010年から『南極星』、2016年に『+62』に場を移し、好評連載中。

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