特集はペットと防災です。能登半島地震もあって関心が高まるペットの避難。これには2つの方法があります。一つが「同行避難」、ペットと一緒に安全な場所に避難すること。もう一つは「同伴避難」、一緒に避難した上で飼い主がペットを飼育・管理できるものです。この違いを踏まえながら、いざという時にどう備えるべきかを長野市での避難を通じて考えます。
■ペットは家族 どうすれば…
講座:
「『ウエットシート』ですね。人も動物も共用だから、ノンアルコールとアルコール2種類、用意しておきます」
長野市保健所が開いたペットと防災を考える講座。
参加者の多くが、「災害時の避難をどうするか」「避難所に行くべきか」悩んでいました。
猫6匹と暮らす女性:
「とても6匹の猫を1人で避難させることはできない。どうしようもなければ猫たちと一緒に死ぬ覚悟です」
犬・猫と暮らす女性:
「(ペットは)やっぱり家族ですから、置いて逃げても心配ですし」
■愛犬を避難所に連れて行けず…
能登半島の被災地ではー。
(鳴き声を上げる飼い犬に)
飼い主の男性:
「ストレス、ストレス。我慢して、もうちょっと我慢してね」
1月の七尾市。発災から10日たっても、愛犬を避難所に連れて行けず、車で世話を続ける家族がいました。
珠洲市ではペットがいるからと避難せず、納屋で生活していた男性が火事で亡くなるなどしています。
■自治体に任され…対応に差
災害の度に課題となるペットとの避難。
環境省は2013年のガイドラインで「同行避難」を推奨しています。
ただ、対応は自治体に任され、取り組みは一律ではありません。
長野市はー。
長野市動物愛護センター・笠原美絵獣医師:
「『どこの避難所なら一緒に行っていいか』と質問されることが多いが、長野市の態勢としては『同行避難』はどこの避難所にしてもいい」
長野市は避難所の運営マニュアルに「全ての避難所で同行避難を受け入れる」と明記しています。
■台風19号災害時は現場混乱
これは2019年の台風19号災害の反省を踏まえたものです。
当時、54カ所の避難所に6100人余りが避難しましたが、「同行避難」の受け入れは記録が残る発災3日目以降で10カ所・23世帯でした。
職員が対応を熟知しておらず現場は混乱しました。
当時、避難所に身を寄せた女性。知り合いが猫と車中泊していたことを覚えています。あれから自身もハムスターを飼うようになり、不安を抱えていました。
ハムスターを多頭飼いする女性:
「ハムちゃんは(避難所で)同じ部屋にいられるのか、(ハムスターは)温度湿度の調整がナイーブな動物、寒くても死んで、暑すぎても死んでしまう。そこの対策を考えないと」
■「ペット同伴避難」に課題
「同行避難」はできても自身が飼育・管理できる「同伴避難」はできるのか。
県内では2023年、松本市が初めてペットと同じ空間で過ごせる「専用避難所」を1カ所指定しました。
一方、長野市は、原則、屋外の雨風が防げる場所に専用のスペースを確保、状況に応じて、屋内に専用スペースも設けるとしています。
飼い主がペットとともに過ごす「同伴避難」では動物が苦手な人、アレルギーのある人など住み分けが必要で、スペースの確保やルール作りの難しさが壁となっています。
長野市動物愛護センター・笠原美絵獣医師:
「(飼い主とペットが)同じ部屋で避難生活を送れるかというと、そこはできないケースがほとんどではないかと思う。災害の状況、気候、ペットの状況など加味して柔軟に受け入れていくマニュアルにはなっている。まずは一緒に避難してきてほしい」
■いざという時…飼い主の備え
一方、飼い主の備えや準備も必要です。
長野市動物愛護推進員・関祐子さん:
「(洗濯ネットに)頭から入れてもらって。(災害時など)猫はパニックに陥りやすいので、地震で割れた窓から逃げてしまったことも。洗濯ネットに入れてキャリーやクレートに入れるのが一番安全」
持ち運び用のソフトケージは即席の据え置きケージにも―。
市の動物愛護推進員の関祐子さんは、台風災害では避難所にペット用の物資を届けたり、一時預かりをしたりするなどの支援をしました。
そうした経験も踏まえ、紹介したのがペット用の持ち出し袋。
長野市動物愛護推進員・関祐子さん:
「1匹分がこれに入っていて6個包みが作ってある」
「ウンチ袋とかポリエチレンの手袋とか小分けにするチャック付きの収納袋」
長野市動物愛護推進員・関祐子さん:
「(簡易トイレは)100均に売っている箱、ビニール袋を敷いて猫砂の代わりに新聞紙さばいて。もしくはペットシートを敷く」
持っていると便利なグッズも提案しました。
また、普段から人に慣れさせておくこと・ケージなど狭い所でも落ち着いていられるようしつけをすること・迷子札やマイクロチップの装着も必要となります。
犬・猫と暮らす女性:
「犬・猫を連れて避難は無理だと思ってました。でも、工夫すれば一緒に避難できるかも。あとは準備が大事」
飼い主に求められるのは、防災の原則である「自助」。
自分とペットの命を守るため、いざというときどこに、どう避難するか。情報収集や備えが必要です。