前回は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が様々な記録を作った授賞式でしたが、今回のノミネート発表で生まれた記録、また今度の授賞式で生まれそうな記録は何でしょう? 注目のポイントをピックアップしました。
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01 『オッペンハイマー』はどこまでオスカー獲得数を伸ばすか?
今回の最多ノミネートを獲得した『オッペンハイマー』。候補になった全13部門ですべて、または12部門で受賞すれば史上最多。11部門で受賞すれば『ベン・ハー』(1959)『タイタニック』(1997)『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003)に続く4番目の最多受賞作となる。
さらに、もし本命と言われている作品、監督(クリストファー・ノーラン)、主演男優(キリアン・マーフィー)、助演男優(ロバート・ダウニーJr.)の4部門で受賞すれば、『ベン・ハー』以来、64年ぶり4作目の記録になるという(他にこれまで『我が道を往く』(1944)『我等の生涯の最良の年』(1946)が受賞している)。
ここにもし助演女優賞(エミリー・ブラント)が加われば史上初。演技部門賞3つを獲得すれば、『欲望という名の電車』(1951)、『ネットワーク』(1976)、昨年の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に続き史上4番目の作品となる。
02 リリー・グラッドストーン、初のネイティブ系女優のウィナーになるか?
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のマーティン・スコセッシは監督賞にノミネートされた最年長者(81歳)となった。
これまでの受賞者では『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)のクリント・イーストウッド(当時74歳)が最高齢記録なので、もしスコセッシが受賞すればこの記録を塗り替える。またスコセッシはこれで10回目の候補となり、ウィリアム・ワイラーの12回に続く史上2番目の回数に。
同作ではリリー・グラッドストーンが先住民系女優として初めて演技部門の候補者となった。受賞も本命視されているので、もちろんこれも実現すれば史上初。
また助演男優賞候補となったロバート・デ・ニーロが受賞すれば三つ目のオスカー(以前に助演賞1回、主演賞1回)になるので、ダニエル・デイ=ルイス、フランシス・マクドーマンド、メリル・ストリープ、ジャック・ニコルソンらに並ぶ記録となる。史上最多受賞俳優はキャサリン・ヘプバーンの4回(いずれも主演賞)
03 自分で自分を演出した映画で連続主演男優賞候補のクーパー
『マエストロ:その音楽と愛と』のブラッドリー・クーパーは今回の作品賞と主演男優賞、脚本賞で計12回のノミネーションとなるが、初監督作『アリー/スター誕生』(2018)に続いて、第2作となる『マエストロ:その音楽と愛と』でも自ら演出した作品で演技賞に連続ノミネートされるという稀なケースに。
また本作でクーパーらと共同で製作を担当したスティーヴン・スピルバーグは、作品賞候補になるのが13回目で、個人として最多記録になるという。
04 作品賞候補10作のうち3作が女性監督作は史上最多
今回の作品賞候補10作のうち、3作品が女性監督作品というのは史上初。
そのタイトルは『落下の解剖学』(ジュスティーヌ・トリエ監督)、『パスト ライブス/再会』(セリーヌ・ソン監督)、そして『バービー』(グレタ・ガーウィグ監督)で、女性パワーの台頭を感じさせるが、監督賞にもノミネートされたのはトリエ監督のみで、特に有力とされていたガーウィグ監督(と主演のマーゴット・ロビー)が候補から漏れたことに批判の声も。
05 エマ・ストーンにW受賞の可能性が?
『哀れなるものたち』のエマ・ストーンが主演女優賞とプロデュサーとして作品賞もW受賞すれば、同一作品で製作者と出演者として両方を受賞した『ノマドランド』(2021)のフランシス・マクドーマンドに続く史上2番目の人になる。
また本作で助演男優賞候補になったマーク・ラファロはこれが4度目の同部門ノミニーとなり、歴代最多に並んだ(他にアル・パチーノ、ジャック・ニコルソンら7人が同数)。
06 『アメリカン・フィクション』が作った記録とは?
『アメリカン・フィクション』で世間に受けるような小説をわざと書いてベストセラーを生み出す黒人作家に扮したジェフリー・ライトが主演男優賞に、その兄弟でゲイの医者を演じたスターリング・K・ブラウンが助演男優賞にノミネートされたが、同一作品で黒人俳優が主演男優と助演男優の2部門に選出されるのはこれが初めて。
07 助演女優賞候補のジョディ・フォスターがある記録を更新
『ナイアド〜その決意は海を越える〜』でフロリダ海峡を泳いで横断する偉業を成し遂げたスイマーのコーチ兼親友を好演し、助演女優賞候補となったジョディ・フォスターは、同じ部門で最後の候補になった年から最新候補になった年までの期間が最も長い記録を更新。
ジョディが最後に助演女優賞候補になったのは『タクシードライバー』(1976)の14歳の時で、今回2度目の助演候補になるまで47年が経過。昨年の『フェイブルマンズ』でジャド・ハーシュが、『普通の人々』(1980)から42年ぶりに助演賞候補になった記録を5年上回ったもの。ただしジョディはこの間に3度主演賞候補(うち2度受賞)になっている。
08 マイノリティ系俳優たちが次々と躍進
リリー・グラッドストーンが『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でネイティブ系女優として初の主演賞候補になっただけでなく、他にもマイノリティ系俳優が演技部門で初候補に。
Netflix作品『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』で主演男優賞候補となったコールマン・ドミンゴは、本作で黒人で同性愛者を公言する公民権運動家バイヤード・ラスティンを演じたが、LGBTQで黒人でラテン系の俳優が主演男優賞候補になるのは史上初。
また初候補ではないが、『バービー』のアメリカ・フェレーラが助演女優賞を受賞すれば、ラテン系女優としてリタ・モレノ、ルピタ・ニョンゴに続き3人目となる。
09 存命人物として史上最多のオスカー候補数記録を伸ばしたジョン・ウィリアムズ
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』でオリジナル作曲賞候補となった御年92歳のジョン・ウィリアムズは、これでなんと驚異の54回目のノミネートとなり、昨年に続き史上最高齢のノミニー記録を更新。
回数としてはすべての部門を通じて故ウォルト・ディズニーの59個に次ぐ史上第2位。初候補となった『哀愁の花びら』(1968)以来、1960年代から2020年代まで7つのディケードすべてで候補になる大記録を持っている。
10 5つの違う部門で候補に挙がったウェス・アンダーソン
『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』で今回の短編実写映画賞にノミネートされているウェス・アンダーソン監督は、個人として5つの違う部門で候補になった。これは3人目の記録。
これまで作品賞と監督賞(『グランド・ブダペスト・ホテル』)、長編アニメーション映画賞(『犬が島』ほか)、脚本賞(『ロイヤル・テネンバウムズ』ほか)で候補になっていたが、ここにもう一つ別部門が加わったもの。
彼は無冠なので、今回受賞すれば初の栄冠になる。またこれを上回る記録ではケネス・ブラナーが7部門(作品・監督・主演男優・助演男優・脚本・脚色・短編実写映画)候補で最多となっていて、6部門にジョージ・クルーニー、アルフォンソ・キュアロンらがいる。