塩野瑛久が語る、TVアニメ『ぶっちぎり?!』と『HiGH&LOW』に共通する“愛らしさ”

内海紘子が監督を務めるオリジナルTVアニメ『ぶっちぎり?!』が1月より放送中だ。作中の高校では猛者たちが集い、「魅那斗會」「シグマスクワッド」そして他校の勢力「NG BOYS」が加わり抗争が行われている。そこに転校してきた主人公が巻き込まれていく……この展開や個性溢れるキャラクターが、男たちの友情と熱き闘いを描いた『HiGH&LOW』シリーズに通じるものがあると、話題になっている。

そこで、『HiGH&LOW THE WORST X』シリーズに小田島有剣役で出演しており、かつアニメ好きとしても知られる塩野瑛久にインタビューを実施。『HiGH&LOW』シリーズのファンならハマること間違いなしのキャラクターたちの魅力から、TVアニメ『チェンソーマン』『呪術廻戦』でも知られるMAPPAによるアニメーションの凄さまでを語ってもらった。(編集部)

■「それならもう実質『HiGH&LOW』じゃん!(笑)」

ーー塩野さんは『ぶっちぎり?!』を観て、どこが印象に残りましたか?

塩野瑛久(以下、塩野):実はこの取材が決まる前から『ぶっちぎり?!』は観ていたんです。予告編をたまたま見かけて作品の存在を知ったのですが、映像に力が入っているし、明るい色合いで、いい意味で気軽に観られそうだなと思っていたんです。いざ観てみると、コメディタッチな部分もあり、アニメスタジオのMAPPAさんならではの「動き」が画面にあって、それぞれのキャラクターも際立っているので楽しく観られました。

ーー取材前から『ぶっちぎり?!』のことは気になっていらっしゃったんですね。「このアニメ作品を観よう」と思う基準はありますか?

塩野:様々ありますが、今回のことで言うと、一番は動きや、絵力に惹かれたことです。むしろ、「バトルものでアツそう!」という入口ではなくて、ライトに観られそうということや、マジンが出てくることで、いつもの「不良もの」とは違うスパイスがあるのではないかと期待しました。

ーー本作は、塩野さんも出演されている映画『HiGH&LOW』シリーズの要素も感じられますよね。塩野さん自身も『HiGH&LOW』っぽさを感じられましたか?

塩野:『HiGH&LOW』シリーズがお好きな方は絶対好きだなというのは感じますね。やっぱり、各グループごとにそのチームの色があって棲み分けされているところとか、それぞれのキャラクターに華があるところ、対立する高校があって、そこに横やりする高校が出てきて、それぞれが勘違いして抗争が始まるというところは、「あれ? これはどっかで観たぞ?」と思ったりしたんですけど(笑)、でもそれは『HiGH&LOW』だけのことではなく、こういう「不良もの」に代々受け継がれてきた継承で。それと、曲の入り方を聴いても「LDH」っぽさを感じていたんですが、後でそれがBALLISTIK BOYZの曲だと知って、「だからか!」と思いました。「それならもう実質『HiGH&LOW』じゃん!」と納得でした(笑)。

■「シグマスクワッド」の神摩利人は『HiGH&LOW THE WORST』の小田島有剣?

ーー注目しているキャラクターは誰ですか?

塩野:物語は主人公の灯荒仁が威血頭高校でグループの抗争に巻き込まれていきます。やはり彼がどうして子どもの頃とは違って消極的になってしまったのか、今のところ謎に包まれている部分が多くて気になっています。そして、そんな荒仁を信じて慕う幼なじみの浅観音真宝のことも、背景はそこまで詳しく描かれていないので、後半からどんな展開になるのか楽しみにしています。

ーーキャラクターで、1番魅力的だと感じるのは?

塩野:女性キャラクターで、荒仁が好意を寄せている神まほろちゃんですね。彼女は、グループ「シグマスクワッド」のリーダーであり、お兄ちゃんの神摩利人一筋で、6話では気合いを見せていてカッコよくて、そこも盛り上がってきましたね。まほろのために荒仁が阿久太郎に立ちはだかって、まほろの荒仁への見方はこれで少し変わったのかな? とこれからのお話も楽しみになりました。

ーーそういったキャラクター同士の関係性の変化もあって面白いですよね。

塩野:最初は結構ライトな感じで始まったのに、だんだんと人間関係も見えてきて面白くなってきました。グループ「魅那斗會」の座布翔とか魁駒男とかも、今のところはツッコミ担当や裏まわしみたいなキャラクターなんですけど、この2人がなんで拳一郎や真宝についてったのか、そういう経緯とかも知りたいな~とか。それと、荒仁のお母さんもキュートですね。アニメを観ていて、愛らしいキャラが一人いると作品への愛着が生まれるんですけど、今回はそれが荒仁のお母さんですね。

ーーちなみに『HiGH&LOW』でそんなふうに愛着を持っているキャラクターは誰ですか?

塩野:ジャム男(福山康平)なんかがそうかもしれないですね。僕は『HiGH&LOW THE WORST X』の中でジャム男が「久々に人殴っちゃったよ!」って言うシーンが好きだったりするくらいなので(笑)。

ーーシグマスクワッドの神摩利人の纏うオーラや立ち振る舞いは少し小田島有剣っぽさも……?

塩野:大きくジャンルで分けると確かにそうですね(笑)。

■『HiGH&LOW THE WORST』と『ぶっちぎり?!』の映像演出の凄さ

ーー最初に塩野さんが「MAPPAさんならではの動き」とおっしゃられていました。どういった部分で感じられましたか?

塩野:6話で荒仁が阿久太郎に立ち向かう時、周りが「行けーっ!」っていうようなところは、王道ですけど、アツいシーンでした。その時の喧嘩シーンの描写が、さすがMAPPAさんだなと思いました。絵力があるし、それが見ごたえになっていると思います。漫画ってコマとコマの連続で進んでいくけれど、アニメだとそのコマとコマの間を描けるところが良いところだと思うので。例えば喧嘩のシーンでは、拳を振りかざす瞬間の後に、場面が変わってもう殴り終わっていたりすることもあるんですけど、『ぶっちぎり?!』の喧嘩シーンでは殴る時の動きや顔の表情まで細かく描かれていて、臨場感がありました。キャラクターの目のドアップからカメラがグッと引いていくところは実写ではなかなか表現するのが難しくて、アニメだからこそ見れるカメラワークだなと思います。

ーーすごく緻密なところまでアニメを観られているんですね。ほかにもアニメを観るときに気になる部分はありますか?

塩野:ほかの皆さんも、それぞれの見方があると思うんですけど、僕はけっこうそういう見方を言語化したくなっちゃうほうなんですよね。制作会社やアニメスタジオによって、特徴は違うと思うんですけど、光の加減や、影の落とし方に注目してみたり。アニメって、本来は「絵」であるのに、カメラワークが存在していて、観ていて勉強になります。

ーー映像の凄さという点で、『HiGH&LOW THE WORST』のシリーズに当てはめるとどのシーンになりますか?

塩野:『HiGH&LOW THE WORST』だと河川敷のシーンがそうですね。走っているところや乱闘しているシーンを長回しでワイヤーを使って撮っていて、スローで川の水がしぶいているところとかも絵力がありました。そういうシーンに参加すると、俳優としても緊張感があるし、熱も入ります。そんな俳優たちの緊張感や熱も映像で切り取ってもらいました。特に団地の乱闘シーンは、今でも僕のスマホに映像を保存して持ち歩いているくらいなんです。手持ちのカメラで団地の2階の乱闘を撮るところから始まって、今度はワイヤーに吊られたカメラマンが持ち替えて、地上から煽りで2階の乱闘を撮影したり、地上の乱闘を後ろにスライドしながら撮って、また移動して……というシーンをワンカットで撮影していて、それはもう凄まじいシーンですね。日本の映画でも、そうそうない迫力のシーンだと思うので、自分としてもすごい経験をしたなと思っています。

ーー『ぶっちぎり?!』で印象的だったのはどのシーンですか?

塩野:やっぱり、二次元ならではの良さが加わるところが、アニメの良さだと思っています。三次元では表現不可能だけれど、アニメだけにできることはたくさんあって、今回の『ぶっちぎり?!』での荒仁が覚醒するシーン、拳のシーンはやっぱり気合が入っていたと思います。僕がバトル描写において大事だと思うのは、拳で殴り掛かるときに、振りかぶるまでの過程も、その拳の行き先も描いているところだと思ってるんです。スピード感とか、迫力とか、一撃の重さとかをどれだけドラマチックに描けるかが大事だなと思っていて、『ぶっちぎり?!』の第6話でも、荒仁の一発を説得力を持たせて描かないといけないシーンがあって、MAPPAさんが気合を入れて描いているなと思いました。

ーー息を呑む演出でした。

塩野:あとは、同じく第6話の最後の方で、まほろちゃんが覚悟して凛と立っているところもカッコよかったですね。やっぱり男の子が多い世界観の中でも、女の子の強さも見せてくれる作品が好きだし、「女の子が弱くて守られる対象だ」という概念を打ち払ってくれるような要素があると、そこまで考えて作ってるんだなと思えるので、まほろちゃんの一本筋が通っているところも魅力的です。
(文・取材=西森路代)

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