『オッペンハイマー』に見るクリストファー・ノーランの進化! 主観描写で天才の脳内を覗き見る

クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー』がついに日本で公開になる。本作は実話をベースに、20世紀を生きた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた作品だが、観客は主人公の視点から物語を体験することになる。

ノーラン監督はこれまでも数々の作品で観客を驚かせ、圧倒してきた。最新作『オッペンハイマー』も仮に伝記本やネットでその歴史を丁寧に調べたとしても、映画館で次から次に“驚き”を味わうことになるだろう。本やネットが書いているのは、研究や評伝、つまり“誰かの見た”オッペンハイマーでしかない。しかし、本作では主人公の視点でその半生を共に歩んでいく。

ノーラン監督は本作でオッペンハイマーの主観と、彼を取り巻く人々の視点=客観を巧みに構成し、オッペンハイマーの登場シーンは一人称で脚本が執筆された。

「そのおかげで脚本を読む人は、観客がオッペンハイマーと同じ視点を共有していることが分かる。我々はオッペンハイマーの肩越しにものを見て、彼の頭の中にいて、どこに行くにも彼と一緒なんだ」

ノーラン監督はオッペンハイマーの視点を取り込んで、観客を作品世界に誘う。天才物理学者の頭の中を覗き見る。彼の視点で世界を見る。これを超えるスペクタクルがあるだろうか。

ノーラン監督の私生活上のパートナーで、彼の全監督作で製作を手がけてきたエマ・トーマスは語る。

「本作の脚本は、主観性と客観性の問題に魅入られている点、異なる複数の視点から語られる点で、まぎれもなくノーランのものでした。でも脚本のページにはこれまで見たことのないものがありました。オッペンハイマーの部分は一人称で書かれていたのです。

製作に携わり、脚本に書かれているものをスクリーン上に実現する役割を担う、クリスを含むスタッフにとってみれば、あるキャラクターの内面を思い描くのに、これ以上効果的、効率的なやり方はないでしょう。私がこれまで読んできた中で最高の脚本のひとつだと思います」

本作では、さらに進化を遂げたノーランの語りと驚きを味わえるはずだ。

『オッペンハイマー』
3月29日(金)公開

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