OLD JOE - 5年ぶりとなるワンマンライブ、渾身のリベンジマッチを"聖地"新宿LOFTで行なう意図と意義

新宿LOFTは“音楽のにおいが詰まって、積もっている場所”

──まずはOLD JOEというバンドが新宿LOFTに初めて出演された当時のことから聞かせてください。

河西洋介(Vo):最初は、2010年の19歳ぐらいの時に下北沢SHELTER(シェルター)に出させてもらいました。OLD JOEは結成当初からわりと“バンドで普通に食っていきたいね”っていうところがど真ん中にあったバンドだったんですけど、当時は地元・藤沢(神奈川)とか横浜のライブハウスであるとか、東京だと学生バンドが多く出ていた大岡山のPEAK-1と下北沢GARAGE(ガレージ/現在は閉店)には1、2回出させてもらっている中で。東京に出て登竜門的なところで演ってみたい、どこまで通用するのかは分からないけれど、腕試しをしようっていうところがあって。そういう中で新宿LOFT(ロフト)や下北沢GARAGEといったところを目指していたら、誰からか“シェルターで『TEEN'S MUSIC CAMP』(補足:現在も続くイベントで、当時は下北沢SHELTER&新宿LOFTの2カ所で開催していた)っていうのがあるよ”っていう話があって。

真田徹(Gt):当時ちょっとお世話になっていた方が教えてくれて。“ロフトって素人とかが出られるの?”って思いつつ、まぁ無理でしょ(笑)、って思いながら。

河西:それがまず、ロフトに出る一つの大きなきっかけで。あの当時、俺らの5〜6歳上の人たちまでがいわゆる典型的な、ライブハウスのブッキング担当の人たちと一丸となってツアーを組んだり、面白がってくれるレーベルやマネージメントの人と出会ったらデビューっていう段取りだったのが、僕らが10代後半〜20代前半の頃って大手のレーベルや楽器店、メディアとかが主催するコンテストが乱立した時代で。そういうところにももちろん、挑戦はしていたんですね。なんだけど、そういうところに僕らは気に入られなかった(笑)というのがあって。そんなバンドだけど新宿LOFTは面白がってくれてたのか気に入ってくれてたのか、初めてシェルターに出て以降も呼んでくれるようになって。僕らもロフトやシェルターで演るのは、ライブ自体の手応えもあったんですけど…音楽のにおいが詰まっている、積もっている場所で。他のライブハウスに出てもなかなか感じられるものではなかったので、ここで演ることに意味を感じるなというのがあって。俺も徹も他のメンバーも、OLD JOE以外のバンド活動も含めてもう人生の半分ぐらいはバンド・音楽活動をやってる。みたいになってきてる中でこの前、久々にロフトにお邪魔させてもらって思いましたけど、やっぱり他にはない場所だなって。相撲界の人たちは土俵を神聖な場所って言いますけど、ロフトには…たとえば京都の磔磔とかもそうですけど、目に見えない何かがあるというのを感じる、というのがあって。今までの良いご縁と、今回、また改めてロフトでライブができるっていうのがすごく嬉しいですね。

真田:でも、19歳とかで初めてステージに立った時はただビビってましたけどね(笑)。ロフトの(市松模様の)床も見たことがあるって思ったし。

河西:そうそう、それな!

真田:そして強そうなんですよ、ステージの袖にいるスタッフの人たちも(一同笑)。中学ぐらいから名前は知ってるライブハウスだったし、最初のライブがどうだったかなんていうのは正直、全く覚えてないですもんね。

河西:うん。

──今も続く『TEEN'S MUSIC CAMP』がスタートだったのですね。バンドは2015年に解散した後、2019年に一度ライブを行なっていますが、今回、新宿LOFTでライブを行なうと決められたのは?

河西:まずは、2019年にやってみた手応えというのが一つあって。それで去年かな、バンドメンバー共通の友達の結婚式で“演奏してくんねーか?”って言われて。1回かな、リハをしたのって?

真田:うん、そう。

河西:やってみて…何て言うんだろう、パーマネントにやっているバンドはこういうことが起きないだろうなっていう話なんですけど、“むしろ良くなってる”っていう感覚があって。しょっちゅうツラを合わせてるわけじゃないし、定期的にライブをやってるわけでもない、友達の結婚式っていうたまたま転がり込んできた話ではあったけどOLD JOEという場所が、皆にとっての古巣なんだなっていうのがすごくよく分かる手応えで。でもそれこそガレージのライブの時に話してたんですけど、僕と徹はサッカーが好きでコパ・アメリカっていう南米各国が参加するサッカーの大会があるんですね。“次はその大会がある年に、またライブをやるか”っていう話はしていたりして。4年に1回の大会だから本当は去年に開催されるはずだったんですけど、コロナの影響で2024年に開催されることになったらしいぞっていう話が一昨年ぐらいの時点であったので。じゃあ2024年にやるか! って。(OLD JOEをやる)周期に関してはわりとそんな理由なんですよね。そしてロフトで演ろうっていうことも、ガレージのライブ後に話をしていて。

真田:確かそういうこと、言ってたな…話をした気がするな。ガレージで演ったのは、名物ブッカーの大橋さんにガレージの周年で呼んでいただいて。昔、活動をしていた時に出させていただいていた所にしか出たくないなってその時は思ってたし。

河西:そうだよね。それと僕の個人的な気持ちとしては、新宿LOFTでなんやかんや結構な回数のライブを演ってきて、バンドが解散する前ぐらいには良いライブができるようになってきたなという感じはあったんですけど、新宿LOFTという神聖な場所を、OLD JOEのフレーバーとかカラーで完全に満たすということができずで活動を終えてしまったので。そのリベンジみたいなものが一つのモチベーションというのは今回、あるんですよね。前にガレージで演ったのも似たような理由だったのかもしれないなって思うんですけど、OLD JOEという集まりは、いわゆる商業的な成功を収めたバンドではない。このバンドで改めてパーマネントに、世に真価と評価を問うてみよう、みたいなことは今現在のバンド内の気持ちとしてはないんですけども、やり残したことと言うか…取り逃がしてきたトロフィーを獲っていきたい、みたいなところがバンドとしてはあって。

真田:うん!

河西:リベンジマッチですね、一言で言えば(笑)。メンバーそれぞれいろんなフィールドで活躍はしてますけど、OLD JOEはデビューもしてなければ一度たりともバーコードの付いた音源も出したことのないバンドで。それでも全然バンドは続けて良いものだし、バンド音楽の聖地のような新宿LOFTでワンマンでライブをやるっていうのは…今、バンドを志す人も減ってるみたいなんですけど、バンドをやってみたいっていう人たちに対してもだし、カッコ悪かろうがみっともなかろうが、それでもバンドが好きでバンドを続けてるような同世代と僕らも気持ちは一緒なので、そういう人たちに向けて…って言えるほど僕らが偉いわけでも何でもないですけど、ワンマンでライブができるということに対して面白いなとか思ってもらえれば、と思ったりしてますね。

真田:そうだね、そもそもロフトでワンマンっていうのをやったことがないしね。河西くんを見たいっていうお客さんも多いとは思うんだけど、OLD JOEとして良いライブをする。今はそういう気持ちです。

新宿LOFTでのワンマンライブは、OLD JOEにとってのリベンジマッチ

──今こうしてお話を伺いながら感じるのは、そもそもOLD JOEは仲違いとかいわゆる音楽性の違い等でバンドを解散したわけではないのですよね?

真田:そう、仲が悪かったとかではないよね。

河西:険悪な空気が垂れ込めて止まった、とかでは全然なかったです。むしろ(解散後も)頻度的にはわりと(メンバー同士)会っていたほうだと思いますし。解散してプライベートの関わりが全くなくなったということもなく、地元も近いしね。と言うか誰も地元を出てない(笑)。

真田:そうだね、基本的に(笑)。

──今に至るまで地元を離れない、という良さみたいなものはどこに感じるのでしょう。もしくは単に、地元を離れる必要性がなかった感じでしょうか?

河西:当時ロフトで対バンしていたバンドのほとんどは上京してきたり、関西から遠征してきたり、もしくは生まれも育ちも東京だったり。ある種、独特な感覚なのかもしれないんですけど、俺らの場合は行って帰ってこられる。東京までの行き来が距離的に負担ではなかったし、だったら慣れ親しんだ街で家に帰って寝ることができるほうが良いよね、っていう。カッコいい理由がないんですけどね(笑)。徹も今、サポートワークの現場が東京だけどさ。

真田:そうだね、1時間ぐらいの移動(の間)で予習・復習ができるのが良いかな。

河西:うん、分かる。スイッチみたいなものが切り替わる時間だよね。

真田:でも本当に俺たち、かつてロフトでは終電を逃しまくってたよね(一同笑)。確か終電が23時半ぐらいなんですよ。

河西:そう、そう。

真田:歌舞伎町をダッシュするか、早々に諦めて朝までいるか。

河西:二十歳を過ぎてからは、追い出されるまでは大体ロフトで飲んでる感じだったからね。

真田:それで朝方に、歌舞伎町のお寿司屋さんによく行ったよね。

河西:おじいちゃんがやってるお店ね、まだあるのかな。この10年とかで歌舞伎町も様変わりしただろうからなぁ。

──久しぶりの新宿LOFT公演の時はどうしましょうか、もう朝までしっかり腰を据えるのか?(笑)

河西:そりゃあもう、この日はハレの日ですから。そこはある程度、覚悟の上で臨みますよ。

真田:そうですね!

──お2人の良い表情が何より雄弁に語っていますよ。では河西さんから見て、OLD JOEのメンバーがどんなふうに映っているのかというのも伺ってみたいです。

河西:徹はね、非常に真っ直ぐなギタリスト。小手先のことは嫌がるし、バンドのコンポーズにおいても徹の中に明確なものがある。今はサポートギタリストとして注文されたフレーズがあってそれをやってると思うんだけど、そこに注力している今の徹が俺は面白いなって思ってる。徹がギタリストとしてどうなるのかっていうのを、このインタビューで知った人には興味を持ってもらえたら良いなって思いますね。

真田:そうそう。(サポートギタリスト)だからって、自分の表現というものがないわけでは決してないし。

河西:そうだよね。10代からずっとやってきて、真田徹以外の何者でもないギターを弾いてる人がある程度の年齢とキャリアを経て、いろいろと飲み込めるようになった現在、なんだよね。それは俺もそうだし。それで言うと、ドラムの大内(岳)はメッチャ器用なドラマーというわけでもないのに昔っから全部を飲み込めるヤツで、今は8つ?かな、バンドをやってて、イマイアキノブさんともバンドをやっていたりするし。それはもはや人間としてのアイツの凄さだなと思ってる。OLD JOEって、リズム隊がフロントマンみたいな、前に出て聴こえるところがあって。俺と徹がそこまでパフォーマンスをするようなバンドではないんです、実を言うと。ベースの(カメヤマ)ケンシロウも稀有なタイプでフロントマン気質のあるベーシストで、OLD JOEではケンシロウがメインソングライターでもある。僕が大体歌を考えて、バックトラックやベースになるコードとかは結構ケンシロウが考えてくることが多くて。音楽家としての素養が一番あるのはケンシロウで、俺らはそれを昇華させていくことをわりと楽しんでやってきたバンドですね。ケンシロウは今でも、OLD JOE以外のバンドでも音楽を生み出すというところをピュアに試み続けているヤツですし。

真田:そうだね、ケンシロウはOLD JOEの中では指先も一番器用かな。大内は大内岳のドラムしかできない(笑)、そこが良いところかなって思うよね。

河西:うん。で、OLD JOEって今年で…何年?

真田:2008年の結成だから、16年だね。

河西:16年かぁ、怖いな(笑)。その16年の中でそれぞれの人生の中でいろんなことが起きて、自分の音楽観に影響を与える出来事があって。それを定点観測し合うかのように定期的にライブをやったり曲を作ったりっていうのが、すごく面白いなって思います。“どんな人間になったの、最近?”っていうことが分かるから。

真田:ガレージで演った時もそういう楽しみがあったかもしれないね。あの時が解散して4年ぶりで、皆どういうふうに研ぎ澄まされたかとか削ぎ落とされたかとかを見て。今回はあの時からまた4、5年経ってるからね。

河西:4人それぞれを漫画で例えたらさ、単行本は3冊だけどメチャクチャ同じことを掘り下げてやってきたヤツとか、10何巻も出してジャンルが全然違う漫画になってるヤツもいたりとか。ケンシロウには家族ができたりして、物語の変化は絶えず起きてる。けど集まって音を出してみたら“全然変わってねーじゃねーか!”みたいなのが、やっぱり面白かったりするんで(笑)。こうやってやれることが、いかに恵まれているかという話でもあるんですけどね。

──メンバー1人1人の物語は変化しつつ、集まる時に集まって音を鳴らす。素敵です。ちなみにOLD JOEのTwitter(現・X)アカウントも、ずっと残してますよね。

河西:そうなんですよ。でもこうやってまた使う機会が、ありがたいことにあるし。

真田:消すタイミングもなかった、というだけでもあるんですけどね。でも解散して9年経つのに、最近になってインスタのアカウントもできましたからね(笑)。

河西:そうそう、作りました。このインタビューをご覧の皆さん、ぜひチェックしていただければと。

──では改めて、OLD JOEとしては2019年以来かつ新宿LOFTでは初めてのワンマンライブは、どんなライブになりそうでしょう?

河西:うん、いいライブ…普通に、来てくれる人が楽しんでくれれば良いんですけど、ステージに立つ人間としては“この曲を書いた時はこんなだったな”とかを思い出すきっかけになると思うんですよね。バンドとしては、ここまでの歴史みたいなことを追体験するような感覚が、意識しなくてもおそらく勝手に起きるのでその時にどんな気持ちになるだろうか、というのをとても楽しみにしてます。

真田:僕もそんな感じ。あとはちゃんと動員して、良いライブをするっていうパーフェクトゲームをする。新宿LOFT移転25周年のアニバーサリーとしても僕たちが盛り上げられるように、と思ってます。

河西:うん、花を添える。飯を食う手段として音楽はものすごく斜陽だと思うし1個提案する、じゃないんだけど、大きな何かに寄らない形でもバンドはできるし、もしかしたら食ってもいけるかもよ、っていう。そんな提示ができる日になったら良いなと思っているので、ちゃんとお客さんにも来てもらって自分たちもちゃんと報酬を得る日にしたいですね。バンドというものがなめられたりしないように。

──いまの最後の一言まで、その言葉の温度のまま皆さんに伝わって欲しいし、伝わった方々が集まって新宿LOFTのフロアが埋め尽くされる日になると願います。とても楽しみなこの日のライブは既存曲で進める形でしょうか?

河西:いや、そんなにいっぱいではないですけど曲を書こうとは思ってるんですよ。一応レコーディングをして、ライブ当日に間に合わせるように会場限定とか、やり様はまだ考え中ですけどCDも作りたいなと思ってます、せっかくなので。

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