少子化で逆風、減少止まらぬ自動車教習所 敷地内でフリマや駅伝…生き残りかけ、あの手この手

兵庫県自動車学校西宮本校の敷地内で開かれたフリーマーケット。多くの市民らでにぎわった(同校提供)

 運転免許を取得するために通う自動車教習所の減少が止まらない。背景には少子化などがあり、全日本指定自動車教習所協会連合会(全指連)に登録している全国の教習所数は、昨年末時点で1240カ所と、1991年のピーク時から237カ所減った。そんな逆風下にあって、敷地内でフリーマーケットや駅伝大会を開いたり、地域と一緒にイベントを企画したりし、生き残りをかける教習所が兵庫県にある。(綱嶋葉名)

ピーク時から237カ所減、1240カ所に

 阪急西宮北口駅から南に徒歩5分。「兵庫県自動車学校西宮本校」は、開校86年を迎えた老舗校だ。学生と社会人がおよそ半分ずつなのが特徴で、川北昭校長は「利便性が良く、託児所との連携などがあるのでサラリーマンや主婦の方にも通いやすいからでは」とする。

 ただ、都市部にある同校でも少子化の影響は色濃く、平成初期のピーク時と比べると、入校者数は約6割減の年間約2500人。そんな中、「まずは教習所があることを知ってもらおう」と、毎年9月に兵庫県警の音楽隊による演奏やパトカーの展示を楽しめる「交通安全市民フェスタ」を開催。年3回は、120~130ほどが出店するフリーマーケットも開いている。

 今年1月には、地元の少年少女野球部が、教習所の敷地内でミニ駅伝大会を実施した。川北校長は「イベントで教習所を訪れた子どもたちが、大きくなった時にうちのことを思い出してくれたらうれしい」と笑顔で語る。

合宿に特化、卒業生対象に地元と交流も

 自然豊かな丹波地域には、宿舎に泊まりながら短期間で免許取得を目指す「合宿免許コース」に注力する教習所がある。

 「Mランド丹波ささ山校」(丹波篠山市池上)。島根県で教習所を運営していた会社が2005年から運営するが、当時すでに同市では少子化が進行していたため、合宿コースに目を付けた。

 地域の治安の良さから「安心・安全」をアピールすると、遠方からも女性がたくさん入校するようになった。昨年は約1400人の卒業生のうち約千人が合宿コースだったという。

 さらには卒業生を対象にしたイベントを企画。友だちやきょうだいを連れて参加してもらうことで、教習所や丹波地域のファンを増やし、入校希望につながればと考えた。

 当初は「収穫祭」と銘打ち、枝豆の収穫体験などを行っていた。4回目ごろからは「地元と一緒にできることはないか」と考え、卒業生による演奏や屋台を出して地元の人にも参加してもらった。

 2010年ごろには「Mランドフェスタ」と名前を変え、イベントの規模を拡大。市民有志らと観光地の市営トイレの清掃やごみ拾いを行うようになった。また、卒業生の「もう一度宿舎に泊まりたい」という声を受け、同窓会として前夜祭を開き、スタッフやかつての仲間と語り合う場を設けた。

 新型コロナウイルス禍やガソリン代の値上がりなどで運営は大変というが、昨秋からは、入校生が陶芸体験や枝豆の持ち帰りを無料でできるようにした。また、民謡と踊りの祭典「丹波篠山デカンショ祭」ではゆかたを貸し出し、西日本最大級の祭りを体験できるようにしている。

 同校を運営する井階(いかい)正義社長は「免許を取った町として、ずっと覚えていてほしい」と話し、「篠山の町と一体になり、地元からも卒業生からも愛される教習所であり続けたい」と話している。

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