パリ五輪出場決定!なでしこジャパンの勝因と独占試合後コメント

日本女子代表 写真:Getty Images

パリ2024夏季オリンピック(パリ五輪)のアジア最終予選の第2戦が、2月28日に東京都新宿区の国立競技場にて行われた。この一戦で、なでしこジャパンことサッカー日本女子代表と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)女子代表が激突。最終スコア2-1でなでしこジャパンが勝利した。これにより0-0の引き分けに終わった第1戦(2月24日開催)との合計スコアが2-1となり、なでしこジャパンのパリ五輪出場が決定している。

第1戦で採用した[4-1-2-3]から、[3-4-2-1]に基本布陣を変えて第2戦に臨んだなでしこジャパン。同代表を率いる池田太監督のこの決断が功を奏し、第1戦で淀んでいたパスワークが改善された。

ここではなでしこジャパンのMF長野風花(リバプール・ウィメン)、及び清水梨紗(ウェストハム・ウィメン)と南萌華(ローマ・フェミニーレ)の両DFの試合後コメントを紹介しながら、同代表の第2戦の勝因を検証・論評していく。


日本女子代表 MF長谷川唯 写真:Getty Images

第1戦の問題点は

DF熊谷紗希(ローマ・フェミニーレ)を中盤の底に置く[4-1-2-3]の布陣で臨んだ第1戦では、なでしこジャパンのビルドアップが停滞。長野とMF長谷川唯(マンチェスター・シティ・ウィメン)の2インサイドハーフが最終ライン付近へ降り、ビルドアップを司ろうとする意図は窺えたものの、このときのサイドバックやウイングFWの立ち位置が整備されておらず。ゆえになでしこジャパンはパスコースを作れなかった。

また、第1戦では右サイドバックの清水のビルドアップ時の立ち位置が低く、且つ左右どちらかのパスコースが消えるタッチライン際にポジションをとるケースがちらほら。ゆえに[5-4-1]の守備隊形を敷いた北朝鮮女子代表のサイドハーフの選手のプレスをもろに浴びていた。


日本女子代表 MF長野風花 写真:Getty Images

MF長野「スムーズに試合に入れた」

昨年のFIFA女子ワールドカップでも採用した[3-4-2-1]の布陣への慣れを口にしたのが、第2戦で長谷川とともにボランチを務めた長野。同選手は第2戦終了後、国立競技場内のミックスゾーンにてこの試合で心がけた点を明かしてくれた。

ー第1戦と第2戦で、なでしこジャパンの布陣が違いました。この2試合を比べてみて、ビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)のやりやすさはいかがでしたか。

「第1戦では後ろ(最終ライン付近)でパスを回して、パスコースが詰まったら(ロングボールを)蹴るという、チームとしての繋がりが見えない状態でした。第2戦では布陣が[3-4-3]([3-4-2-1])になって、私と長谷川選手のどちらかがビルドアップに関わってボールを前進させることができました。昨年のワールドカップでもこの布陣でしたし、やり慣れている部分はあったので、今回もスムーズに試合に入れましたね」

ー3バックと前線の選手を、長野選手と長谷川選手の2人(2ボランチ)で繋ぐ形となり大変だったと思います。今回の第2戦では長野選手と長谷川選手がタイミング良くサイドに流れて、パスコースを作れていたように見えたのですが、いかがでしょうか。

「相手選手がミスマッチ(相手チームと自チームの布陣・選手配置が噛み合わない状態)を苦手としている。この分析があったので、ボランチの私たちが(最終ライン付近へ)降りたら相手選手が食いついてくるのか、相手のボランチの動きはどうかを見ながらプレーしました。今日はうまくスペースを見つけられたと思います」

この長野の言葉通り、同選手と長谷川が味方センターバックとウイングバックの中継地点へ適宜降りることで、なでしこジャパンのパスワークが円滑に。イングランドの名門クラブでプレーする2人が、絶妙な立ち位置で同代表の攻撃のリズムを整えた。

日本女子代表 DF清水梨紗 写真:Getty Images

DF清水「自分が高い位置をとって……」

第2戦で[3-4-2-1]の布陣の右ウイングバックを務めた清水も、この試合終了後の囲み取材で立ち位置に関する工夫を明かしている。

ービルドアップの際、清水選手はどんな立ち位置を心がけていましたか。

「今日は相手の15番(左ウイングバックのDFウィ・ジョンシム)が、ほぼ全ての場面で自分のところへ(マークに)来ていました。自分が下がるべきか高い位置をとるべきか。試合を通して色々考えましたね」

「(センターバックを務めたDF高橋)はながボールを持ったときのパスコースのオプション作りは大切ですけど、相手の15番を引っ張ること(引き付けること)も大事だなと。なので、自分が高い位置をとって、これで生まれるスペースを風花や唯、(MF藤野)あおばが使うほうがいい。こんな感じで考えていました」


日本女子代表 MF北川ひかる 写真:Getty Images

効果的だった両ウイングバックの立ち位置

今回の第2戦では、清水とMF北川ひかるの両ウイングバックが的確な立ち位置をとり、なでしこジャパンの攻撃を活性化。この2人が守備隊形[5-4-1]の北朝鮮女子代表のウイングバックとサイドハーフの中間地点に立ったため、同代表としてはウイングバックとサイドハーフのどちらが清水や北川を捕まえるのか、判断が難しい状況だった。

日本女子代表 DF南萌華 写真:Getty Images

DF南も称えた北川の立ち位置

DF南の第2戦終了後の囲み取材でのコメントからも、左ウイングバックを務めた北川のポジショニングの良さが窺える。負傷により今回のアジア最終予選から離脱したMF遠藤純に替わって追加招集された北川が、大一番で池田監督の抜擢やチームメイトの期待に応えた。

ー3バックの左を務めた南選手の一列前でプレーした、北川選手の攻撃時のポジショニングはどう映りましたか。

「(北川選手は)左利きですし、ボールを持ったときの縦や内側への差し込み(配球)については良いものがあります。私自身、北川選手がフリーなときはそこを簡単に使おうと思っていましたし、(北川選手も)相手にとって掴みづらい立ち位置をとってくれました。私が真ん中にパスを差し込めないとき、外へ逃げる形で北川選手を使えた場面もありましたね」


日本女子代表vs北朝鮮女子代表、先発メンバー

日本女子代表vs北朝鮮女子代表:試合展開

慣れ親しんだ[3-4-2-1]の布陣をベースに各選手が躍動したなでしこジャパンは、前半25分に敵陣でフリーキックを獲得。FW田中美南(INAC神戸レオネッサ)のヘディングシュートがクロスバーに当たって跳ね返り、このこぼれ球をDF高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)が押し込んだ。

後半31分には、右サイドを駆け上がった清水のクロスにMF藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がヘディングで合わせて加点。同36分にDF南が自陣ペナルティエリア付近から繰り出した縦パスを北朝鮮女子代表の選手にカットされ、ここから始まった速攻をFWキム・ヒヨンに物にされたが、その後は[5-4-1]の守備ブロックを盾にアウェイチームの猛攻を凌いだ。

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