来年1月末で65歳。今後も雇用延長で働く予定。65歳からの老齢厚生年金は繰り下げます。老齢基礎年金も同様に繰り下げするか悩みます

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、年金の繰り下げ受給について悩んでいる方からの質問に、専門家が回答します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。 今回は、年金の繰り下げ受給について悩んでいる方からの質問です。

Q:来年1月末で65歳の女性です。現在も正社員で、働いています。65歳からの老齢厚生年金は繰り下げすることにしました。老齢基礎年金も同様に繰り下げするか悩みます

「来年1月末で65歳の女性です。現在も正社員で、働いています。雇用延長で今後も従事する予定です。特別支給の老齢厚生年金は昨年分から一部支給されています。さしあたり、65歳からの老齢厚生年金は繰り下げすることにしました。老齢基礎年金も同様に繰り下げするか悩みます。収入的には給料で生活できるので、問題はないのですが」(茶々のばあば)

A:繰り下げ請求すると、増額された年金を生涯受け取れますので、今の生活に問題なけれは繰り下げ受給のメリットは大きいです。ただしデメリットもありますので、注意点をよく把握しましょう

老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は、原則65歳から受け取れますが、希望すれば65歳で受け取らずに、75歳まで繰り下げ請求することができます(昭和27年4月1日以前生まれの方は繰り下げの上限年齢は70歳まで)。 老齢基礎年金と老齢厚生年金別々に繰り下げ請求することもできますし、老齢基礎年金と老齢厚生年金を一緒に繰り下げ受給することもできます。 繰り下げ受給をするメリットとは、ひと月あたり0.7%増額された年金を生涯受け取れることです。ただし繰り下げ受給にはデメリットもあります。 まず老齢厚生年金を繰り下げした場合には、加給年金額が支給停止されます。厚生年金加入期間が20年以上ある人に、生計を一にしている要件を満たした子どもや65歳未満の配偶者がいる場合、老齢厚生年金に加給年金額が上乗せされます。老齢厚生年金を繰り下げすると、老齢厚生年金は受け取っていないので、加給年金額を上乗せされず受け取れません。加給年金は繰り下げ受給により増額もされません。 老齢基礎年金を繰り下げした場合のデメリットは、振替加算が支給停止となることです。 加給年金額の対象者になっている厚生年金の加入期間が20年以上ない配偶者が65歳になると、それまで上乗せされていた加給年金額が打ち切られ、加給年金額の対象になっていた配偶者に、一定の基準で老齢基礎年金の額に振替加算がされます。老齢基礎年金を繰り下げすると、振替加算が支給停止されます。振替加算は繰り下げにより増額されません。 相談者の方は「収入的には給料で生活できる」とのこと。年金を受け取らずに、健康で仕事を続けて、給与収入のみで生活で賄えるのであれば、注意点を把握したうえで繰り下げすると、老後の年金生活が安定することにつながることでしょう。 監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー) 都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。 (文:All About 編集部)

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