レジェンド同士の掛け合いは「世界観を構成する重要な要素」 『Apex Legends』開発者インタビュー

バトルロイヤルFPS『Apex Legends』の大型イベント『APEX LEGENDS ASIA FESTIVAL 2024 WINTER』が、2月24日、25日の2日間で開催された。アジア各国からプロ選手やインフルエンサーが来日して盛り上がりを見せた。

今回のイベントには、ゲーム開発に携わるJohn Larson(バランスデザイナー)とAshley Reed(ゲームライター)も来場。リアルサウンドテックは、複数メディアを迎えたラウンドテーブル形式でのインタビューセッションに参加し、最新アップデートからキャラクター、ストーリーなど、さまざまな話題について聞いた。(片村光博)

■シーズン20のアップデートでは戦闘面の多様性や深みを重視

――先日、『FINAL FANTASY VII』(FF7)とのコラボレーションイベントが開催されましたが、今後も同じような企画は想定されているのでしょうか。

Reed:『FF7』とのコラボレーションは、素晴らしいものになりました。私も子ども時代にプレイして、個人的に『FF7』が大好きで、まるで夢が実現したような体験でした。ユーザーのみなさんからのフィードバックも良かったので、今後も同じような機会を検討していきたいと思っています。

――直近のアップデートは非常に大規模なものになりましたが、ゲーム体験にどのような影響を与えようという意図があったのでしょうか。

Larson:背景として、新たなレジェンドをリリースしないということもあり、戦闘面でゲームの多様性やおもしろさ、深みを出していきたいということで、開発チーム内での合意がありました。5周年を迎え、コアユーザーの視点に立つと、新しい要素を求めているのではないかという考えもあり、今回のようなアップデートに至りました。

――アップデート内容では、『Apex Legends』の特徴的な要素でもある、アーマーの変化が大きかったと思います。ゲーム開発におけるアーマーの位置付けと、今回のアップデートに至った理由を教えてください。

Larson:バトルロイヤルゲームである以上、ランダム性はひとつの要素になっていますし、アーマーを含めてアイテムを集めることがゲーム性になっていました。ただ、競技性を強くしたいという思いがあり、そのためにはランダム性を抑えていくという流れがありました。プレイヤーのレジェンドに対する理解、スキルを活用して戦うという視点から考えて、今回の変更に至っています。

Reed:実際に始めてアイデアを見たときは驚きました。「こんなことをやるのか」と。でも、結果的にとても良いアップデートになったと思います。

――今回は来日してのイベント参加となりますが、日本のユーザーの印象や、特徴などがあれば教えてください。

Reed:タイトルのローンチ時から関わっていますが、正直に言うと、こんなに日本で人気が出るとは想像していませんでした。ALGS(※)もすごい盛り上がりですし、日本のプレイヤーのみなさんは非常に情熱的ですよね。今回のイベントでも朝早くから並んでいらっしゃいました。本物の情熱を感じましたし、コスプレイヤーの方々も含めて、盛り上がりを見ることができて本当にうれしいです。

※Apex Legends Global Series。『Apex Legends』の競技シーン。

Larson:Apexにおいてレジェンドの動きのコントロールは大きな要素ですが、日本のプレイヤーはいろいろな動きを考案しています。FnaticのYukaF選手のキャラクターコントロールは非常に特徴的で、感銘を受けています。

――これまでの開発において、おもしろかったエピソードはありますか?

Reed:Apexはローンチ時にほとんどキャンペーンなどを展開せず、ただ『ゲームを出したよ』というリリースになったんですが、すぐに人気になって、プレイヤー数もすごいことになっていたんですよね。『そんなにいるの!?』ってめちゃくちゃビックリして、少し不安も感じたのですが、もっとこのゲームをおもしろくしないといけないなと思い、5年間ずっと続けてくることができました。本当に素晴らしい経験になっていると思います。

Larson:アシュリーほどおもしろいことではないんですが、シーズン7か8のころ、クリプトのドローンにランパートのアルティメットであるシーラを乗せることができるというバグがあって……(苦笑)。まるで別のゲームになってしまっていたので、印象に残っています。

■レジェンドは「共感できること」を大事にして作り上げる

――ストーリー面について、レジェンドたちのストーリーを作り上げていくなかで、重視していることを教えてください。

Reed:レジェンドたちのストーリーを書くときに最も考えているのは、やはり人間性の部分です。彼らは輝かしい英雄たちなんですが、プレイヤーから共感できる部分を示したいと考えています。たとえばホライゾンであれば、宇宙に行くという特別な存在ではありますが、彼女の息子についてのエピソードは共感できる部分ですよね。どうしても息子に会いたいという思いは人間らしいところですし、「共感できる」ということは大事にしています。

――レジェンド同士の掛け合いについても、コミュニティでの盛り上がりが印象的です。どんな思いを持ってレジェンド同士の関係を作り、プレイヤーからの反応をどのように見ていますか。

Reed:私が一番好きな話題ですね(笑)。キャラクターのストーリーを書いたとき、キャラクター同士の関係性がどうなるかは常に意識していたんです。それもApexの世界観を構成する重要な要素だと思っています。そして、コミュニティのみなさんに愛されていることはうれしいですね。人気があれば、キャラクターの掛け合いを書く機会がもっと増えますから!

――シーズン20からはランクシステムも大幅に変更されましたが、現状についてお聞きできればと思います。

Larson:ランクリーグは最も重要なモードのひとつであり、常に最高のゲーム体験を提供したいと思っています。今回、大幅な変更を加えた理由は、よりおもしろいゲームプレイを実現するとともに、長く遊んでもらえるシステムを提供したいという背景もありました。ランクポイントを含めてはっきりしたシステムにして、ユーザーに理解してもらいたいという思いを持って、変更を決定しています。ユーザーの方々が自身の成長を感じられるように、いろいろと考えての実装となりました。

――おふたりの好きなレジェンド、好きな武器を教えてください。

Larson:いろいろなレジェンド、いろいろな武器を使ってきましたが、最初のお気に入りのレジェンドはレイスでした。2万5000キルも取りましたよ! 武器は3つあって、ピースキーパー、R-301、ウィングマンです。この3つの武器は、いずれもApexにおける象徴的な武器ではないかと思います。

Reed:すべてのレジェンドたちを自分の子どものように思っているので、ひとりを選ぶのは難しいです。難しいんですが、最も使ったキャラクターはローバですね。クリプトやライフラインも使ってきましたし、最近ではカタリストも使っています。武器はやっぱりR-301です。火力も高く、絶対に裏切らないですから。あとはモザンビークも思い出深くて、なぜなら初めて敵部隊を3人全員キルしたときの武器だからです!

――バトルロイヤルのシステムが根幹にある以上、ゲーム体験を新鮮に保つ工夫は必須かと思いますが、そのために意識していることを教えてください。

Larson:過去に実装したアリーナモードからもいろいろと勉強することがあり、コントロールなどの新しいゲームモードを出すことも、新鮮なゲーム体験を提供する工夫のひとつです。コアユーザーがプレイするバトルロイヤルについても、スリーストライクやストレートショットなどの新しい要素が含まれるモードでは、アイテム集めの時間を短縮するなどの変化を加えています。

Reed:私からも補足すると、世界観を拡大することも重要だと思います。我々は常にApexの世界をどうやって充実させるかを考えており、新しい機会を探し続けています。さまざまな角度からゲームの世界を広げて、ユーザーに新しい刺激を与えていければと思います。

――世界観を広げるなかで、ストーリーの区切りとなるような山場を作る予定はありますか?

Reed:それをすると、Apexが終わっちゃいますよ(笑)!? でも、ライターとしてはもちろん、常に物語の始まりと終わりというのは意識しています。どちらかというと、結末にたどり着くまでの過程ですね。どうやってストーリーを展開していくのか。どんなプロセスで結末まで向かっていくのか。そこには一番力を入れて考えています。できる限り長く、結末までの旅路を続けていけたらなと思っています。

――シーズン20のユーザーからの反応に対する手ごたえを教えてください。

Larson:ユーザーから肯定的に見てもらえていて、とてもうれしく思っています。開発チームでは(シーズン20のバージョンを)数か月前からテストしていて、そこから当時のApexに戻ると「やっぱり新しいバージョンのほうがいい!」「早くリリースしたい!」と感じていたんです。結果的に、リリース後のみなさんの反応もテスト時の我々と同じだったのは、とてもうれしかったですね。

Reed:私からはトレーラーの話をしたいと思います。シーズン20のトレーラーを公開したとき、ユーザーのリアクションをまとめた動画を見たんですが、みなさんがすごく驚いてくれたり、興奮している様子を見て、とても充実感がありましたし、うれしく思いました。みなさん、本当にありがとうございます。

(取材・文=片村光博)

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