高齢化が進む中国山地の中にある町で、図書館から高齢者の自宅に本を届ける配送サービスが試験的に始まりました。図書館までの距離が離れていたり、移動手段がなかったりする高齢者から「本が読みたい」という声もあるようです。
島根県飯石郡飯南町の町立中央図書館。
様々な本が並ぶ館内で、職員が本棚の間を回っています。
図書館スタッフ
「ちょうど今、季節的にも良いですし、あとあの、歴史ものがお好きだったということなので」
飯南町が2月、モニター実施している「本とまごころ」配送サービスです。
図書館の職員が、利用者の好みなどを元に、町立図書館2館の蔵書1万8000冊と、県立図書館の巡回貸し出し分から本を選び、ゆうパックの袋に入れ発送します。
町が日本郵便との間で、地域活性化包括連携に関する協定を締結したことで実現。
本を読み終えた利用者は、郵便局に連絡して取りに来てもらい、図書館に返送します。
同封のアンケートには、次の希望の本が書かれていました。
飯南町立図書館 渡邊陽子 館長
「3冊とも面白かったです。次回希望って書いてありますね。次回読みたい作者の方とか作品が書いてあって、是非お送りしたいと思います」
このようにして、貸し出しと返却を繰り返せる仕組みになっています。
飯南町教育委員会 宮川笙子 主事
「本が好きだけれども、本がなかなか読むことができないという方のために、人と本との出会いを広げるという目的でサービスを開始いたしました」
飯南町では、町中心部を周回運転する中国地方初の自動運転カート「い~にゃん号」を2021年に導入し、高齢化が進む地域での公共サービスの在り方を探っています。
こうした中で、本を読みたいという要望が、図書館までの距離が遠い人や移動手段が乏しい高齢者から出て来たといいます。
飯南町教育委員会 宮川笙子 主事
「実際に声を聞くと、本が好きで本当は来たいけれども来館できないという方もおられるということを把握しておりますので、そういったニーズはあるかと思います」
今回、1か月間試験的に実施してみて評価を探ろうということで、高齢者3人がモニターに参加しました。
町中心部から車で20分程走った所の1人を訪ねると。
吾郷弘子さん
「(知人が)私に電話してくれました。あんた、あれ(サービス)があるそうなが、どうかね。まあそりゃあ良いことだね言いまして」
吾郷弘子さん(88)。
これまでもバスなどで町中心部に出た時、図書館に寄っては本を借りていたそうですが、自宅にいながら利用できるサービスは嬉しいといいます。
吾郷弘子さん
「図書(館)へお願いして。郵便さんが運んで下さる。だけん、もう(家を)出ないでも良いことで。届けて下さるいうことで、とても嬉しく思っております」
ページをめくり字を読むことは認知症予防にもなると、吾郷さんはうれしそうに話してくれました。
町では反響を分析しつつ、来年度以降に本格実施できるか検討することにしています。