【医療費控除】扶養家族でなくても合算していいの? 同一生計って何? 控除額の計算は?

同一生計であれば合算できる

医療費控除について、今一度おさらいをしましょう。医療費控除とは、その年分に支払った医療費が一定額を超えるときに、その医療費の額を基にして算出される金額を所得から差し引くことができるものです。

少し詳しく見ていきます。所得税法第73条には、医療費控除について規定されています。

第1項には、「居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合において、その年中に支払った当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する」とあり、第3項には、「第一項の規定による控除は、医療費控除という」とあります(引用元:e-GOV 法令検索「所得税法」)。

ここで、医療費控除の対象となるのは、「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費」であることが規定されていますが、生計を一にする者の所得要件は付けられていません。

よって、「生計を一にしている者」に支払った医療費であれば、支払ってもらった者に所得があっても、支払った者が医療費控除の対象となります。

また、「各年において」とあることから、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が医療費控除の対象となり、未払いの医療費があった場合は実際に支払った年分の医療費となります。

同一生計とは

同一生計であれば、扶養家族でなくても支払った医療費は合算できます。同一生計がどうかについて、国税庁ホームページでは以下によることとされています。

(1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居をともにしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

イ 当該他の親族と日常の起居をともにしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居をともにすることを常例としている場合

ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合

(2)親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

(引用:国税庁「同居していない母親の医療費を子どもが負担した場合」)

控除額の計算で注意すること

医療費控除の金額は、「実際に支払った医療費の合計額」-「保険金などで補てんされる金額」-「総所得金額等の5%(最大10万円)」で計算されます(最大200万円)。言い換えれば、医療費の合計が総所得金額の5%(総所得金額200万以上の方は10万円)を超えた分を控除できるということです。

一般的に、所得金額が多い方の控除にすれば、税率が高い分、効果が大きくなりますが、所得が200万円未満の場合は「総所得金額の5%」のハードルが下がります。そのときの状況で、同一生計内の誰の控除にするか判断しましょう。

また、「保険金などで補てんされる金額」は、生命保険から支給される入院給付金や、健康保険による高額療養費や家族療養費、出産育児一時金などをいいます。ここで注意が必要なのは、この金額は、給付の目的となった医療費の金額が上限とされるところです。

もし、実際に掛かった医療費よりも給付金額が多くても、余った分を他の医療費から差し引くことはしません。仮に、入院に8万円、それに対する入院給付金が15万円あった場合、「保険金などで補てんされる金額」は8万円です。ご注意ください。詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

出典

e-GOV 法令検索 昭和四十年法律第三十三号 所得税法
国税庁 共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 同居していない母親の医療費を子供が負担した場合
国税庁 No.2260 所得税の税率

執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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