身近な人が食べ物を喉に詰まらせたら…応急処置の方法は?誰にでも起こり得る窒息事故、正しい対処法を新潟の救急隊員が解説!

最初に試みたい「背部叩打法」。手の付け根で背中を力強く何度もたたく

 福岡県みやま市で2月26日、小学1年生の男の子(7)が給食で出たウズラの卵を喉に詰まらせて亡くなった。救急のプロによると、食べ物を喉に詰まらせて窒息する事故は、誰にでも起こり得るという。食材を小さく切るなどの対策に加え、もしもの時の正しい応急手当もおさらいしておきたい。家族や身近な人が喉を詰まらせたら、どうしたらいいのか。救急隊員に解説してもらった。(報道部・五十嵐南美)

 新潟市消防局救急課の田中勤係長によると、異物が喉に詰まった人は声を出せず、苦しそうな表情をしたり、喉を手でつかんだりする。そんなそぶりが見られたら、まずは声をかけ、せきをするよう促す。せきができない場合は、速やかに119番通報する。

 内閣府によると、喉に物がつまった場合、多くは窒息が起こってから3~4分で顔が青紫色になる。5~6分で呼吸が止まり、意識を失う。心臓が止まって大脳に障害が起き、ここからさらに15分を過ぎると脳死状態になる。一刻も早い応急処置が必要だ。

◆喉が詰まった!まずは「背中をたたく」

 救急隊員が到着するまでは、喉に詰まった食べ物を取り除くよう試みる。本人の意識がある場合、最初に試したいのは背中をたたくことだ。喉を詰まらせた人の頭を低くし、左右の肩甲骨の間を力強く、何度もたたく。この方法を「背部叩打法」という。

最初に試みたい「背部叩打法」。手の付け根で背中を力強く何度もたたく

 それでも異物が取れない場合は、おなかを押す「腹部突き上げ法」を行う。喉を詰まらせた人の後ろに回り込み、ウエストの辺りに手を回す。へそより少し上にこぶしを当て、素早く手前上方に圧迫するように突き上げる。「腹部突き上げ法」は内臓を傷める恐れがあるため、もし試みた場合は救急隊員や医師に伝えるようにする。

「腹部突き上げ法」の様子

◆赤ちゃんのおなかは押さないで!

 赤ちゃんには大人とは異なる応急処置が必要だ。

 背中をたたく際は、片腕の上にうつぶせに乗せ、手のひらであごを支える。頭の位置を胸よりも低く保ち、手のひらの付け根で背中の真ん中を強くたたくようにする。

 おなかを押す「腹部突き上げ法」は乳児にはできない。妊婦や肥満の人にも行えないため、背中をたたく方法だけを試みる。

 幼い子の場合は、おもちゃなど食べ物以外を誤って飲み込み、喉が詰まる恐れもあるため注意が必要だ。内閣府によると、子どもの口の大きさは3歳児で直径約4cm。これより小さい固形物は、窒息の原因になる危険がある。

◆意識がない!そんな時はすぐ「心肺蘇生」

 本人の意識がなくなってしまった場合は、すぐに「心肺蘇生法」を行う。胸骨を圧迫することで、詰まったものが喉から出てくる可能性があるからだ。これらを試しながら、口の中を何度も確認し、詰まっているものが少しでも見えたら引っ張り出す。

胸の真ん中に手のひらの付け根を当て、もう片方の手を重ねて、胸が約5センチ沈む程度に30回圧迫・人工呼吸2回を繰り返す

 正月にお年寄りが餅を詰まらせ、掃除機で吸ったら取れた、といううわさを聞いたことがあるが、有効なのか。消防局救急課の田中係長は「ノズルを口に入れると舌や唇など別の部分を吸う可能性があり、危険なのでやめてほしい」と話す。

 新潟市消防局は動画投稿サイト「ユーチューブ」の「新潟シティチャンネル」で、餅を食べて喉を詰まらせた人への応急処置の解説動画を公開している。

病院にある救急車出入り口の看板
「腹部突き上げ法」の様子
胸の真ん中に手のひらの付け根を当て、もう片方の手を重ねて、胸が約5センチ沈む程度に30回圧迫・人工呼吸2回を繰り返す

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