コロナ療養施設で強制性交捜査 鹿児島県警内部資料が流出か 被害者側「謝罪申し出あった」

県警から情報漏えいで謝罪の申し出があったと会見で明らかにする藤村元気弁護士(右)=29日、鹿児島県庁

 新型コロナウイルス宿泊療養施設で女性看護師に同意なく性的行為をしたとして鹿児島県医師会元職員の男性が強制性交の疑いで書類送検され、不起訴になった事件で、女性の代理人弁護士が29日、鹿児島市で会見を開き「個人情報が漏えいし鹿児島県警から謝罪の申し出があった」と明らかにした。県警は「個別事案については回答を差し控える」としている。

 事件を巡ってはウェブメディアが昨秋、捜査担当者や取り扱った日時、氏名などが記された県警の内部資料の写真を一部黒塗りにしてネット記事に掲載した。

 女性側代理人の藤村元気弁護士によると、今年1月19日、県警から「個人情報漏えいについて女性に謝罪したい」と事務所に連絡があった。謝罪内容などを尋ねる書面を送ると、「個人情報保護法に基づき、本人に通知するため」といった旨の回答があった。

 藤村弁護士は、女性が初めて告訴状を提出した際、県警に受け取りを拒否されたとも主張。「女性は事件を広く知られることに強い抵抗があり、(個人情報が漏れたことに)心を痛めている。不適切な対応がいくつもあり、誠実に捜査し直してほしい」と求めた。

 取材に対し、県警刑事企画課は情報漏えいの有無を「発表していない事案」として回答しなかった。漏えいした場合の一般的な対応については「法に基づき個人情報保護委員会への報告と本人への通知をすることになっている」と説明した。

 告訴状などによると、女性は2021年8月、県が医師会に業務委託した新型コロナ宿泊療養施設に派遣され、翌9月に施設内で男性から複数回、性的暴行を受けたとしている。

 女性が22年に県警へ告訴状を提出し、男性は昨年6月、書類送検された。鹿児島地検は同12月、男性を嫌疑不十分で不起訴処分とした。女性側は今年1月31日付で、再捜査や起訴を求め検察審査会に申し立てた。

■検審申し立て「内容に誤認」不起訴の男性側

 鹿児島県医師会元職員の男性が女性看護師への強制性交容疑で書類送検され不起訴となった事件で、男性側が「女性側の検察審査会への申し立て内容に事実誤認がある」と主張していることが29日、分かった。

 女性側は1月31日、不起訴を不服として「事件を取り扱った署に当時、男性の父親が現職の警察官として勤務しており、適切な捜査が行われたと信頼できない」などと検察審査会に申立書を提出した。

 男性によると、男性の父親は2021年3月に65歳で警察官の再任用期間を満了。告訴状が提出された22年には在籍していない。男性は「客観的証拠を出してきたにもかかわらず、事実でないことで責められてきた。反論する機会もなく、生き続けるのが苦しい時期もあった。公平に見てほしい」と話した。

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