カール・ルイスは猛反対!陸上走り幅跳びのルール変更で記録は伸びるか

Ⓒゲッティイメージズ

「テイクオフゾーン」から計測

陸上走り幅跳びでルール変更が検討され、歴史的な改革に踏み切るのかどうか早くも関係者の間で賛否が巻き起こっている。

英BBC報道などによると、新たな改革は走り幅跳びの「踏み切り板」の手前に「テイクオフゾーン」と呼ばれる位置が設けられ、そのゾーン内で踏み切りした足のつま先から記録を計測するものだ。

現行ルールでは踏み切り板20cmと10cm程度の粘土板が敷かれ、踏み切り板を超えて粘土板に足跡がつくとファウルとみなされる。

1984年ロサンゼルス五輪から男子走り幅跳び4連覇の偉業を達成した元スター選手、カール・ルイス(米国)は「エイプリルフールのジョークは4月1日まで待つことになっている」と変更案をSNSで批判。世界陸連では2023年の世界陸上(ブダペスト)で全体の約3分の1の試技がファウルだった結果を踏まえ、今回のルール改正に向けた議題が始まったという。

この大会で日本勢は全員予選で敗退し、東京五輪6位の橋岡優輝(富士通)も7メートル94の予選A組9位どまりで、最終3回目に大ジャンプを見せたもののファウルだった。

競技のドラマ性、為末大氏も技術改革を歓迎

世界陸連のジョン・リッジオンCEOは、英メディアでルール変更案について「一つひとつのジャンプが重要となり、刺激的で競技のドラマ性を加味する」と指摘。

2023年の世界陸上で多くの選手が完璧なテイクオフを追求するあまりファウルを連発した背景を踏まえ「それではうまくいかないし、時間の無駄。だからこそ今、踏み切り板ではなくテイクオフゾーンをテストしている」と語った。

さらに「同時に、(審判による測定で)結果が表示されるまでに20秒も30秒も待つ必要がないように、即座に結果を得る方法を研究している」とも述べている。

今夏の報道を受け、陸上男子400m障害の日本記録保持者、為末大氏は自身のSNSで「陸上は必要な審判が多すぎるために、このような省人化は人口減少日本にとっても望ましいと思います。技術を使えばほぼ無人でもやれるはず」と歓迎。さらにフォロワーのコメントに呼応する形で「勝負強さという要素が変化しますね」とも見解を示している。

1991年から更新されていない世界記録

陸上男子走り幅跳びの世界記録はマイク・パウエル(米国)が1991年世界陸上東京大会でマークした8m95。世界歴代10傑に2000年以降の記録が男子は3つしかなく、確かに種目として停滞している側面は否めない。

それでも世界歴代3位の8m87を持つカール・ルイスは自身のSNSで「実際のところ、距離はそれほど変わらない。より多くの悪いジャンプが測定されるだけだ」と指摘。

「問題はファウルとは関係ない」とした上で「マイク・パウエルは世界記録を更新するために何年もかかった。では30年後、それを飛び越えることはできないと言うのか。適切な取り組みがあれば、それが可能だ。彼のように集中して記録を塗り替え、トレーニングでやるべきことは何でもやるべきだ」と訴える。

世界陸連が「陸上の歴史の中で最も根本的な変更の一つ」とする画期的な今回のルール改正案。早ければ今年中にも大会で実際にテストされると伝えられており、2028年ロサンゼルス五輪に向けて大幅な記録アップにつながるのか、今後の陸上界の動きが注目されそうだ。



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