「今月で会社を辞めるよ」月収57万円・55歳サラリーマンの決断…仰天の妻に「大丈夫。俺についてこい」と胸を張れる「驚愕の貯蓄額」

学校を卒業してから、数十年に及ぶ会社員人生。50代を過ぎると、いよいよ定年が見えてきます。「このまま定年まで走り切るぞ!」という人もいる一方で、「このままでいいのだろうか……」と自問自答する人も。そこで「早期退職」という選択をする人も珍しくはありません。ただその選択を叶えるためには、“お金の問題”が……。みていきましょう。

帰宅した55歳の夫が開口一番「会社を辞める」と宣言

――今月で会社、辞めることにしたよ

夫の突然の「会社辞める宣言」に妻は仰天。夫が会社を辞めた後の生活を考えると、家族はみな大パニックになることでしょう。

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』によると、定年制の会社は94.4%。そのうち96.9%が定年年齢を一律に定めていて、「定年60歳」としているのが最も多く72.3%にのぼります。日本全体で考えると、企業の66%が、60歳をひとつの区切りとして定めています。

そんななか、定年を待たずにして会社が退職者を募る制度が「希望退職制度」。人員整理を目的としたものがほとんどですが、名前の通り、従業員の希望が優先され、強制されるものではありません。また希望退職による退職は自己都合ではなく、会社都合になります。希望退職と混同しがちなのが「早期退職制度」。これは組織編成を整えることなどが目的で、退職金を増額する優遇措置を設けていることが多いようです。また希望退職とは異なり、常時受け付けている点も大きな特徴です。

人事院の調査によると、退職者全体を100とした際、定年による退職者は64.4%、会社都合となる早期退職者は4.6%、希望退職者は5.9%でした。早期退職者の割合を企業規模別にみていくと、「従業員1,000人以上企業」では6.2%、「500~1,000人企業」では2.3%、「100~500人企業」では2.2%、「50~100人企業」で0.4%。企業規模が大きいほど、早期退職者は増える傾向にあります。

大卒で社会人となり、55歳まで働いたとしたら勤続32年。早期退職した場合、どれほどの退職金(退職一時金)がもらえるのというと、「従業員1,000人以上企業」では1,953万円、「500~1,000人企業では」1,335.5万円、「100~500人企業」では656.4万円、「50~100人企業」では359.3万円。いくら優遇されているとはいえ、大企業で働いていない限り、早期退職はなかなか難しい、と言わざるを得ない退職金額です。

「老後の生活費」に「住宅ローンの残債」…すべて合計するといくらになる?

55歳。大企業で働く大卒サラリーマンなら、平均月収57.1万円。サラリーマン人生において頂点に立つときです。そんなタイミングで早期退職すれば2,000万円近くの退職金を手にできる……それだけで早期退職を決められるわけではありません。そのあとの生活を考えるなら、それなりの貯蓄が必要です。

総務省『家計調査 家計収支編(2023年)』によると、家族4人の勤労世帯(有業者1人)の1ヵ月の生活費は41万0,735円。年金がもらえるまでの65歳までこの支出が続くと仮定すると、10年で4,928万8,200円になります。65歳以降は、夫婦ふたりだけの生活費で考えると、1ヵ月の生活費は25万2,088円。そんな生活が30年続くとすると、9,075万1,680円。55歳定年後の40年で、億を超える生活費が必要となります。

さらに55歳時点で残っている住宅ローンも完済してしまうことも考えてみましょう。国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』によると、注文住宅購入者の平均年齢(一次取得/世帯主)は39.5歳、購入資金総額は4713万円で、頭金は2割、返済期間は32~35年です。返済方式は元利均等、金利は0.5%の35年ローンだとすると、55歳の時点で2,100万円近くの残債があることになります。

生活費にローンの残債。これらを全部足すと、およそ1億6,100万円。これが「55歳以降に出ていくお金」と考えることができます。

では退職金のほかに「入ってくるお金」を考えてみましょう。厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、65歳以上の厚生年金受給者の場合、併給の国民年金と合わせて16万7,388円。一方、国民年金受給者の平均年金額は5万6,428円です。夫婦で22.4万円ほど。これは額面なので、手取りにすると19万~20.1万円。65歳から20年受け取るとなると4,560万円ほど、30年とすると6,840万円になります。

あくまでも単純計算ではありますが「億超え」と、一般人からすると驚愕の貯蓄があれば、自信をもって「会社を辞めたって大丈夫! 十分な蓄えがあるんだから、俺についてこい!」と宣言できそうです。

また「年金をもらうまでの10年間の生活費とローン完済だけを考え、65歳以降は年金だけで生活していく」と考えれば7,000万円ほどの貯蓄。すでにローンも完済していれば、5,000万円ほどの貯蓄があればいい、という見通しがたちます。さらに安心のためにあまり手をつけたくない退職金も含めてしまおうというのなら、早期退職のハードルはさらに下がり夢物語ではなくなります。

ただ固定収入がなくなるというのは、やはり大きな不安。早期退職を機に、家族との関係が悪くなったという声もよく耳にします。

「十分な貯蓄があるかシミュレーションを重ねること」「家族の同意を得ること」は、早期退職前の絶対条件。また「少ないながらも固定収入があるのとないのとでは大違い」と、多くの早期退職経験者がアドバイス。自分のペースで働くなど、新しい働き方を模索するのもおすすめです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

人事院『民間企業の退職給付調査 参考資料(令和4年4月)』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

総務省『家計調査 家計収支編(2023年)』

国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

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