「職場で欠かせない存在になるべき」というアドバイスには落とし穴がある

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「自分自身を必要不可欠な存在にする」

長く働いていると、ある時点で、どうキャリアアップしていくかについて同僚からこのようなアドバイスを受けることがあるだろう。今やTikTokで検索上位に入るトピックでもあり、企業のエグゼクティブがインタビューで明かすいわゆる知恵の一つだ。

例えば、ペプシコ社の元CEOであるインドラ・ヌーイ氏は2019年のインタビューで、ペプシコに自身の子育てニーズを受け入れてもらうことに成功したのは、この言葉のおかげだと語っている。

「自分自身のニッチを確立し、能力に基づいて自身を組織にとって不可欠な存在にすれば、あなたなしで何ができるのでしょう?」

ヌーイ氏は、2019年の「Women in the World Summit」で語っている。インタビューの中で、ヌーイ氏が企業にとって欠けてはならない存在だったからこそ、企業は午後5時以降はヌーイ氏と子供たちをオフィスで一緒に過ごすことを許可した、と話す。

メッセージの根底にあるのは、もしあなたが懸命に働き、自身のスキルセットを独自のものにすれば、会社はあなたの努力に報い、あなたの成長を奨励し、要求に応えてくれるということだ。

こう聞くと、自分のキャリアをコントロールできる感覚を得られるため、安心できるかもしれない。そして、あなたがヌーイ氏のような幹部クラスであれば、このアドバイスは有効かもしれない。

しかし、この考え方には明白な問題がある。有能な人材が大量解雇され、それが完全に恣意的だと感じられるような事態が起きた後では、自分自身を必要不可欠な存在にすべきという考えは、空虚なものに思えてしまう。

キャリア・リーダーシップのコーチであるフィービー・ギャビン氏は「会社が製品の排除や部署閉鎖、部門の縮小を決めるかどうか、私たちは絶対に(コントロールすることは)できないのに、このアドバイスは、会社が決めることを私たちがある程度コントロールできるような気にさせるのだと思います。彼らはそうしようとしているだけなのです」と話す。

キャリアコーチのジャスミン・エスカレラ氏は、「新しい職に就いたらすぐに転職すべきでない」というアドバイスと同様に「『自分自身を必要不可欠な存在にする』というアドバイスは「米国企業が主導権を握っているという概念」を強化するものであって、「『自分自身を必要不可欠な存在にする』というのは『自分の欲求ではなく、相手の欲求やニーズに集中しなさい』ということの別の言い方に過ぎないと思います」と語る。

このような心構えは、望んでいない役割に回されたり、自分を背伸びさせてしまったりする要因になり得る。

エスカレラ氏にとって、職場における「なくてはならない存在」というアドバイスを内在化することは「彼らが決断を下すのだから、自分もそれに合わせなければならない」と信じることを意味した。やがて5年後、この信念が彼女をバーンアウトさせた。

「会社が何を望んでいるかに常に集中し、自分自身をなくてはならない存在にしようとしていました。そして必然的に気づいたのは、自分がやろうとしていたこと、その中で働こうとしていたことが、本当は自分のキャリアとしてやりたいことではなかったということです」と振り返る。

そのことに気づいたきっかけについて「離婚を経験し、仕事に没頭したことがその要因の一つでした。本当に燃え尽き症候群でした。自分に見合った給料を払ってくれない会社に疲れ切っていました」と話している。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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