「黄砂」って何?ふつうの砂ぼこりと何が違う??意外な危険性を気象予報士が解説

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春になるとよく、ニュースで黄砂が飛んでいることを聞いたり、なんとなく空が黄色っぽくにごっているのを感じたりします。なにげなく春の風物詩のように感じていますが、そういえば黄砂って具体的には何なのでしょうか。ふつうの砂ぼこりと比べて違いはあるのでしょうか…?

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、黄砂の正体と今知っておきたい意外な危険性について教えてもらいます。

4,000kmを旅する砂

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黄砂とは、大陸にあるゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの砂漠で巻き上げられた砂が飛んできたものです…と言われても、ちょっと想像がつかないですよね。

というのも、比較的近いゴビ砂漠でも日本までは1,000km以上、タクラマカン砂漠にいたっては約4,000kmも離れていますので、そんなはるか遠くから砂が飛んでくるなんて、にわかには信じられない話。

ところが、春という季節の特徴が、それを「あり得る話」にするのです。

キーワードは「ダストデビル」と「偏西風」です。

冷却・乾燥からの上昇気流…「ダストデビル」の破壊力

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冬の間、砂漠は極端に冷え込みます。

日本の冬なんて比べものにならないくらい極度に冷却され、もともと乾いている砂漠の砂はさらに乾燥します。

そこへ春になると気温が上昇。暖まった空気は軽いため、急激に強い上昇気流が発生し多くの低気圧が発達します。
この上昇気流によって、カラカラに乾いて飛びやすくなった砂が一斉に巻き上げられるのです。

巻き上げられた砂のことを気象学では「ダスト」と言います。そして「ダスト」は竜巻のようにぐるぐる渦を巻いて移動しながら上昇することもあり、「ダストデビル」と呼ばれることも。

大量の砂を含んだダストデビルはすさまじい破壊力で、集落を丸ごと壊してしまうことすらあるのです。

ちょうど日本にやってきてしまう…「偏西風」の位置

強い上昇気流によって巻き上げられたダストは、上空約10kmに達します。

ちょうどこの高さに吹いている風が、「偏西風」です。

小学校や中学校の理科で聞き覚えがある、という人も多いと思いますが、偏西風は西から東へ、地球をぐるっと一周するように吹いている風です。

季節によって吹く緯度が若干変わるのですが、春と秋はちょうど日本列島の上空を通過するような位置で吹いています。

そのため、大陸の砂漠で巻き上げられた砂が偏西風に乗ることでちょうど日本にやってきてしまうのです。

砂漠出身ゆえの危険性…春は黄砂の情報に注意!

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ここまで、大陸の砂漠の砂が日本にやってくるのが「黄砂」であるということを説明してきましたが、じつは黄砂がただの砂ではなく砂漠出身であることが原因で、気をつけなければいけないことがあります。

それは、砂の成分です。

砂漠の砂の中には、ガラス質の鉱物が含まれています。半透明のキラキラした粒で、顕微鏡で見るときれいですが、人体にとっては危険な物質です。

吸い込んでしまうと喉や気管がダメージを受けることもあるほか、車に積もった黄砂を不用意に拭き取るとキズをつけてしまいますし、洗濯物につくと繊維に入り込んでなかなか取れません。

そのため、黄砂が予想されている日にはマスクをしたり、車をきれいにするときは多めの水で流したり、洗濯物は部屋干しにする必要があります。

現代の天気予報技術では前日までに黄砂の飛来が予測できるため、これからの時期は天気とともに黄砂の予報もしっかりチェックしましょう。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

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