京都市バスへの評価「好転」お礼が苦情より多くなった背景 経営難受けた増客策に効果

バスやタクシー運転手の心温まるエピソードを募集している京都市の特設サイトの画面

 かつて「運転が荒い」などという悪いイメージが強かった京都市バスに対する市民の評価が改善している。ここ10年は丁寧な運転やベビーカー対応に感謝を伝える「お礼」が苦情より多い状態が続き、経営難を受けた増客策で打ち出した接客サービス向上に効果が現れつつある。市は運転手の担い手確保に向け、こうした運転手との「いい話」のエピソードを募集している。

 市バス事業は、2009年度に国から経営再建を求められる経営健全化団体に転落した。再建策として打ち出したのが「増客による収入増」。しかし、当時は運転手の接客態度に関する苦情が多く、09年度の意見総数1062件のうち、苦情は163件に上った一方、お礼は57件にとどまっていた。京都新聞の読者投稿欄にも「経路を尋ねると大声で一喝され、車内の空気が凍り付いた」「運転手の指示を従わずにいたらにらまれた」といった声が寄せられていた。

 市交通局は、増客には接客サービスが欠かせないとして運転手の研修を強化。「全国一のお客様サービス」を掲げ、外部講師による接客研修に取り組んだ。その結果、13年度(意見総数1220件)には苦情(97件)を超えるお礼(105件)が寄せられ、その後もお礼は苦情を上回るようになった。22年度(同3929件)には、苦情(182件)の2.7倍ものお礼(491件)があった。

 発車時や走行中の揺れなどに注意を促す丁寧な車内アナウンスや、降車時のあいさつ、道案内やベビーカー・車いす対応に感謝を伝えるケースが多いという。同局はスマホの普及で気軽に意見を寄せやすくなったことも影響したとみている。担当者は「悪いイメージの払拭には時間がかかる。引き続きお客様サービス向上に努めたい」としている。

 市は、公共交通の担い手確保に向けて、路線バスやタクシーの運転手に感謝を伝える体験談や通勤・通学時など公共交通に助けられた経験、乗客同士の優しさに触れたエピソードを募っている。

 特設サイト「#もしもあの時、バス・タクシーがなかったら」から文章(300字以内)を投稿する。寄せられたエピソードは、バス・タクシー運転手の担い手確保に向けた広報などに活用される。募集は20日まで。市歩くまち京都推進室075(222)3483。

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