長崎被爆2世訴訟 再び請求棄却 援護対象外は「違憲ではない」 福岡高裁判決

請求が棄却され、「不当判決」の垂れ幕を掲げる原告団ら=福岡市中央区、福岡高裁前

 長崎原爆の被爆者を親に持つ被爆2世の援護を国が怠っているのは違憲だとして、2世ら28人が国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(高瀬順久裁判長)は29日、請求を退けた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。「2世の原爆放射線の遺伝的影響は証明されていない」とした上で、援護対象外としていることを「憲法に違反していない」と判断した。
 判決後、原告団と弁護団は「不当判決」とする声明を発表し、最高裁に上告する方針を明らかにした。
 広島、長崎の被爆2世らによる集団訴訟の一つ。長崎では2017年、1人当たり10万円の賠償を国に求めて提訴。長崎地裁は22年12月、「遺伝的影響の知見が確立されていない」などとして、原告側の請求を棄却した。
 高瀬裁判長は控訴審判決で、「被爆者の子どもに死亡率、がん発症率の増加は認められてない」と指摘。健康被害の可能性の前提となる原爆放射線の影響について、被爆者と2世との間に医学的、科学的に「現時点で顕著な差異がある」とした。
 原告側は、放射線の影響を受けた可能性を否定できない以上、被爆者援護法で「原爆の放射能の影響を受ける事情下にあった」と定める「3号被爆者」に該当すると主張。判決では、2世への援護について「国会の政策的判断を要する合理的な裁量に委ねられている」と結論づけた。
 同種訴訟は広島地裁にも起こされ、昨年2月、原告側が敗訴し控訴。広島高裁で争われている。2世は法的な定義はないが、全国に30万~50万人いるとされる。国による無料健康診断が実施されているが、医療費助成などの支援策は一部自治体が独自に講じている。

© 株式会社長崎新聞社