城桧吏「深く考えるきっかけになった」引きこもりの高校生役で感じた多様性

城桧吏

俳優の城桧吏が、土ドラ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系毎週土曜よる11時40分放送中)に出演。原田泰造演じる沖田誠の息子で引きこもりの高校生・沖田翔を演じる。本作は世間の古い常識・偏見で凝り固まったひとりの中年男・沖田誠が、二回り以上年下のゲイの友達ができたことで、自身の「常識」がアップデートされていく姿を描く。インタビューでは、可愛いもの好きでメイクなどにも興味がある沖田翔を演じる城に、撮影の裏側から、本作を通して感じたこと、自身が好きなことについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

「翔だったらどう思うか」というのを考えながら演じていた

――『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(以下、おっパン)の脚本を読まれてみていかがでした?

今までにやったことがない役柄で、翔はとても可愛くて素敵なキャラクターなので、僕でいいのかなという不安もありましたが、新しい発見がありそうで楽しみな気持ちもありました。 また、原作を読んで、多様性について深く考えるきっかけにもなりましたし、キャラクターの個性があり、とても面白かったです。セリフであったり、原作を再現されている台本で撮影がすごく楽しみでした。

――翔はどのような人物ですか。

翔は自分の「好き」というものがしっかりあって、芯が強い子だと思います。自分の好きを貫けるキャラクターで、とても応援したくなるような人物だと思っています。

――ご自身が翔と似ているなと感じている部分はありますか。

翔は同い年ぐらいの子とコミュニケーションを取るのが苦手なのですが、僕も同年代の子に自分から話しかけるのがあまり得意ではないので似ているなと思いました。また、僕はぬいぐるみとか可愛いものが好きなので、そういったところも似ているのかなと思います。

――翔を演じる上で大事にしていたことは?

誠や友達から何か言われた時に、「翔だったらどう思うか」というのを考えながらやっていました。翔はとても繊細で感情の振り幅があるキャラクターなので、感情の揺れ具合や顔の表情であったり、動きを状況により細かく変えるよう意識しました。

――本作は多様性がテーマですが、ドラマに参加されて多様性に対しての考え方に変化はありましたか。

人それぞれいろいろな考え方があるとは思っていたのですが、もっと深くて繊細に様々な考え方があるんだと、改めて学びになりました。

――役作りをするにあたり、見た目などご提案されたことはありますか。

僕から具体的な提案はしていないですが、監督やメイクさんと一緒に相談しながら進めていきました。

――共演者の方の印象というのはいかがですか。

翔の父、誠役の原田泰造さんは現場の雰囲気をすごく明るくしてくださいます。原田さんと共演させていただいて、なんとも言えない表情など細かいお芝居がすごい方だなと思いました。僕も原田さんのような表現ができたらと思いました。

翔の母、美香役の富田靖子さんはロケでたまたまその場にスタッフさんがいらっしゃらなかった時、一般の方が道を通るのに迷っていたことがありました。それに気づいた富田さん自ら、「全然通って大丈夫ですよ」と声をかけられていて、周りがしっかり見えていてすごいなと尊敬しました。

翔の姉、萌役の大原梓さんは、本当にお姉ちゃんのような存在でした。何かするときに手伝ってくださったり、気を遣っていただきました。

五十嵐大地役の中島颯太さんは優しくて、面白くて、色々話しかけてくださいました。しかも僕がボケた時にもツッコんでくれるんです。僕にとってお兄ちゃんみたいな存在でした。

――ちなみに中島さんと音楽のお話をされたりしましたか。

音楽の話はしていないのですが、颯太さんは休憩時間とかに歌っているのをよく見ました。当たり前ですけど颯太さんは歌がすごく上手いので、メイクしている時に歌っているところを聴いて「やっぱり歌手ってすごいな」と思いました。

――この役を通して新しい発見がありそうとおっしゃっていましたが、どんな発見がありましたか。

髪の毛を編み込むシーンで、最初は難しかったのですが、練習していくうちに割とできるようになったので、意外と自分は手先が器用なのかもという発見がありました。

――メイクをされたのは初めてですか?

自分でしたのは初めてです。メイクをして鏡に写った自分を見て「あ、可愛くなってる」と思いました。

――城さんは普段、美容や健康など心がけていることはありますか。

これまであまり気にしていなかったのですが、今回、翔という役を演じさせていただいて、少しやってみようと思い、化粧水を変えてみました。肌の質感がちょっともちっとして、変化があったので続けてみたいと思います。

――撮影をしていて1番印象的だったシーンは?

1話で原田さん演じる誠に初めて反抗したシーンです。あそこは翔にとってとても大事なシーンで、 人のために怒れる翔の優しさなどが見えてくるシーンなので、印象に残っています。

お気に入りのものはペンギン!?

――オープニング曲を聴かれたときの印象は?

FANTASTICSさんの「アプデライフ」は、歌詞や曲調が作品の内容とマッチしていてオープニングで聴いてすごくいいなと思いました。『おっパン』の明るい雰囲気がその曲にも表れていて、安らぐことができる曲でした。すごく『おっパン』にぴったりの曲だと思います。

――主題歌である4-CaraTの「Dancing Dreamer」はいかがですか?

4-CaraTさんの「Dancing Dreamer」は、カッコいい曲調で、ドラマがこの先どうなるんだろう?

というワクワク感があって、楽しみにさせてくれるような楽曲だなと思いました。

――城さんは普段はどんな音楽を聴かれていますか。

リズムやテンポ感が良い曲、好きな映画の主題歌などをよく聴いています。映画やドラマの主題歌などを聴いていると、その作品の内容を思い出したりして、すごくいいんです。歌詞を好きになることも多いのです。

――歌詞が好きとのことですが、どのような系統の歌詞が好きですか。

色々ありますが、人生について歌っているような曲も好きです。

――城さんがいまハマっていることは?

写真を撮ることや絵を描くこと、映画を観るのが好きです。

――写真はどんなものを撮られていますか。

写真は日常で歩いてる中で、良い場所を見つけたらすぐに撮りたくなります。なので、お出かけすると写真を大量に撮ってしまいます。

――どのようなカメラを使っていますか。

今までは主にスマートフォンだったんですけど、今回の現場で写真を撮るのが好き、という方がたくさんいらっしゃったので、最近は元々持っていた一眼カメラを使って撮ることも増えてきています。

――現場で撮った中でお気に入りの1枚はありますか。

学校のシーン、教室を撮った写真です。誰もいない教室だったのですが、横から陽が当たっていてけっこう綺麗に撮れたなと思い、気に入っています。

――最近はどんな絵を描かれているんですか?

絵を描くことは好きなんですけど、決して絵はうまくはないんです。友達からアイコンを考えてほしいと頼まれて、アイコンに合うような絵を描いたりしています。

――どういう風に形にしていくのでしょうか。

その友達が好きな動物を教えてもらってイメージを膨らますことが多いです。そこからボールペンを使って描いたりします。

――先ほど翔と同じように可愛いものがお好きだとおっしゃっていましたが、最近お気に入りのものはありますか。

ペンギンのぬいぐるみです。弟と一緒に集めていて、いま家に10個ぐらいあります。昔からもっていたひとつは、ロケや撮影の時に持っていくこともあるくらい気に入っています。

――「おっパン」ではすごく人の支えや理解というものの重要さを感じました。城さんの支えになっているような方はいらっしゃいますか?

家族です。家族は僕が好きなことややりたいことを、否定せずにやらせてくれます。また弟からも勇気づけられたりする時があります。

――さて、役者としての展望は?

今までやったことがない役、たとえばシリアスな役やアクションが多い役にも挑戦したいと思っています。そういう意味では今回の翔も自分の中で新しいキャラクターで、初めてやる役柄だったので挑戦でした。

――最後に「おっパン」を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

この作品を観ていただいて、自分の好きなものを大切にしてほしいです。作品の中で僕が好きなセリフに、「人に好きになってもらうって、自分の根っこまで変えなきゃいけないことなのかな」というのがあるのですが、それがとても心に刺さりました。ありのままの自分を大切にすることの素晴らしさが伝わったら嬉しいです。 (おわり) ヘアメイク:中島愛貴

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