ナワリヌイ氏の家族、葬儀準備進める 霊柩車見つからず

ラウラ・ゴッツィ、BBCニュース

ロシア北極圏の刑務所で急死したと2月16日に発表された野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)の葬儀が1日午後にモスクワ南部で予定されており、家族や側近が準備を進めている。ただし、告別式を開く予定の教会へ遺体を運ぶための霊柩車(れいきゅうしゃ)が手配できないなど、遺族は引き続き困難に直面している。

、霊柩車が手配できないとソーシャルメディアに書いた。

ヤルミシュ氏によると、霊柩車が一台もないと葬儀会社に言われたという。また、「正体不明の者たちが電話で、アレクセイの遺体を受け付けるなと脅している」とも書いた。

ナワリヌイ氏の葬儀は、モスクワ南東部マリイノ地区の教会で現地時間1日午後2時(日本時間同8時)に告別式が行われる予定。遺体は午後4時から、近くのボリソフスコエ墓地に埋葬されるという。

支持者らは葬儀を、ナワリヌイ氏のユーチューブ・チャンネルでも中継する方針。

支援チームは、葬儀への参加を広く呼びかけている。教会と墓地を結ぶルートの地図を共有するほか、ソウル、ローマ、モントリオール、ストックホルムなどロシア国外で追悼式が開かれる場所のリストも公表している。

モスクワ南部での告別式に何人が参加するのかは、見通しがつかない状態。

ナワリヌイ氏の首席補佐官だったレオニード・ヴォルコフ氏は、BBC番組「ニューズアワー」に対して、モスクワでの告別式で何が起きるか心配していると話した。

「不測の事態を心配している。正直言って、今こうして話していても、大勢がアレクセイに別れを言うのを当局が実際に許すのかわからない」とヴォルコフ氏は話した。

葬儀が開かれる教会との間でも、問題が起きるかもしれないと関係者は心配しているのだと、ヴォルコフ氏は述べた。

2015年3月には赤の広場のすぐ近くで殺害された野党指導者ボリス・ネムツォフ氏を追悼するため、数万人が市内を行進した。しかし、今回は同様の追悼の意思表示が当局に認められる可能性は低い。

ロシア当局は近年、政府批判とみなされるあらゆる行動を厳しく抑え込んできた。ナワリヌイ氏の獄死が発表されると、国内各地で間に合わせの慰霊碑が作られ献花が続いたが、そうしてナワリヌイ氏を追悼した数百人が拘束され、花や写真などは撤去された。

葬儀と埋葬が予定される教会や墓地の周辺で警察が厳重警備を開始し、鉄柵を設置している様子が、29日までにソーシャルメディアに投稿されている。

ソーシャルメディア「テレグラム」の「RusNews」チャンネルによると、墓地周辺の「すべての街灯」に監視カメラが設置されたという。

参列者に警戒呼びかけ

人権派弁護士や活動家の団体「第一部」は、ナワリヌイ氏の葬儀に行こうという人たちのためにアドバイスをソーシャルメディアで共有し、「政府派活動家」がわざと挑発行為をしかけてくる恐れがあるため、警戒するよう呼びかけた。

「式典後に拘束される可能性がある(中略)治安部隊に目を付けられないように注意して、公共交通機関を使ったり、葬儀から数日の間は公文書を提出しないように」などと、この団体は助言している。

ほかにも、ナワリヌイ氏の写真や、同氏が創設した「反腐敗財団」のシンボルがついた物は持たないようにと、人権派団体は助言している。「反腐敗財団」はロシア政府によって、過激派団体と指定されている。

ナワリヌイ氏の遺族が葬儀に出席可能かどうかは、明らかになっていない。刑務所を訪れ息子の死亡を確認し、遺体の返還を当局に求めた母リュドミラさんは、出席するとみられている。

ナワリヌイ氏の子供2人は国外で暮らしている。

妻ユリア・ナワルナヤ氏も国外にいるとみられ、帰国すれば逮捕される危険がある。

ナワルナヤ氏は2月28日に欧州議会で演説し、夫が死亡したのはウラジーミル・プーチン大統領の命令によるものだと強く非難。葬儀に参加する人たちが警察に逮捕されるのかどうか、わからないと話した。

(英語記事 Alexei Navalny: 'No hearse for body' as family prepares funeral

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