「回転」から「海鮮」へ 「トリトン」東京出店を強化

今回のけいナビの特集は、日本経済新聞社との連動企画「食の王国・売れる極意」。人気回転ずし店「トリトン」を取り上げる。北見発祥の企業が大消費地の札幌、そして東京でも支持を広げ、店舗網を27店にまで拡大した背景を取材した。

2月14日に東京・港区の商業施設内にオープンした「アトレ品川店」。都内3カ所目となる店舗で、事前の告知をしていなかったにもかかわらず、初日は開店の1時間ほど前から50人を超える列ができた。駆け付けた人たちからは「ネタが回転ずし店の中で一番新鮮でおいしい」、「ホタテが最高」といった声が聞かれた。

トリトンが東京進出を果たしたのは2012年。東京スカイツリーに開業した「スカイツリータウン・ソラマチ店」が1店目だ。その後、東武百貨店池袋店にも出店、両店ともに連日にぎわいを見せているという。

東京進出には理由があった。創業の地の北見を皮切りに、旭川、札幌へと店舗網を広げてきたのだが、商圏的に今後、道内で出店の余地があるのは札幌ぐらい。そのため、東京での出店をこれから強化していく必要があるとする。

客単価の高さも、東京出店を強化する理由のひとつ。回転ずし店の1人当たりの平均客単価は約1800円、やや高級路線のトリトンの場合、道内店舗で2500円ほどなのだが、東京になると3000円へと上がる。北海道産の鮮度の高い大きなネタを武器に、東京での売り上げ拡大を図る狙いだ。

そんなトリトンには、コロナを経て変わった点がある。道内で最も新しい「手稲店」の看板をよく見ると、そこには「回転寿し」ではなく「海鮮寿し」の文字が。皿に乗ったすしが回るというエンターテインメント性よりも、おいしさや衛生面を重視する消費者が増えていることが背景にある。今後出店する店舗については全て「海鮮寿し」を掲げ展開するとしている。

回転ずし業界は同業との競争が激しいが、トリトンは今後も、低価格路線の大手とは一線を画しながら鮮度、おしいさにこだわっていくとする。運営する北一食品(北見)の新名克章副社長は「うちらしさを失わないことが大事」と強調する。

店舗で出すネタは、札幌の中央卸売市場と東京の豊洲市場で主に仕入れる。ブリやニシンなど取れる時期が限られる食材については、各地の養殖場から調達する。

その仕入れの現場を支えるのは、「目利き」のバイヤーたちだ。この道20年の中岡智さんもその一人。早朝の市場内をくまなく回り、店舗がオーダーするネタ以外にも良いものはないかを常に考える。

取材に同行した日は、羽幌町産のエビを見つけて買い付けし、札幌市内の各店に送った。トリトンの店内にはおすすめ品が大きなポップで表示されているが、こうしたものの多くはバイヤーが市場でその日選んだ、特別に良い状態のものだという。

トリトンは東京出店の強化が目標だが、実現するには人手を確保し続けねばならず、そのためには「良い待遇」が欠かせない。番組MCの杉村太蔵さんは「回転ずしは日本のデフレ経済の象徴で単価が低すぎる」と指摘。「経営的には難しいことだとは思うが、値段を適正な水準にまで上げる努力も企業には大事なこと」と話した。

(2024年3月2日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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