羽鳥慎一と岸井ゆきのが語る日本アカデミー賞授賞式の注目ポイント

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3月8日(金)に開催される第47回日本アカデミー賞授賞式で司会を務めるフリーアナウンサーの羽鳥慎一と女優の岸井ゆきの。羽鳥にとっては5度目、岸井にとっては初となる晴れの舞台への思いを語り合った。

■岸井ゆきの、日本アカデミー賞司会に向け「なるべく日本映画は映画館で鑑賞」

コロナ禍に突入した2020年からの3年間は大きな制約のなか行われた日本アカデミー賞。昨年2023年は、4年ぶりに観客をフルに動員し華やかさが戻ってきたなか、映画『ケイコ 目を澄ませて』で、自身初となる最優秀主演女優賞を受賞した岸井。「まず受賞した瞬間、1回心臓が飛び跳ねてしまったのに、その当日に関係者の方から『来年(司会を)お願いします』と言われて、もう一度心臓がグンってなってしまったんです」と振り返る。

それでも岸井は「ちゃんと落ち着いてから考えるために、一旦司会のことは忘れよう」と思ったというが、岸井が所属する事務所のユマニテに赴くたびに「(過去に日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞し司会を行なった)安藤サクラさんの『怪物』のポスターや、シム・ウンギョンさんの作品が飾ってあるので、その都度『来年は私が司会をやるんだ』と思い出すんですよ」と常に頭の片隅にはあったという。

取材やイベントなど、ことあるごとに「映画愛」を爆発させている岸井。ライフワークとして普段から洋邦問わず、さまざまな映画を観ているというが「今年は特に日本映画は映画館で観ようという意識がありました。受賞者が決まってから、DVDで作品を観るもなんだかな、と思ったので」と、ここでも映画への思いを吐露する。

今年の優秀賞受賞作に出演している俳優、スタッフとも「多くの方は存じ上げている」という岸井だが、司会業は初めて。これまで安藤サクラや長澤まさみ、有村架純らとタッグを組んできた羽鳥は「毎年同じなのですが、俳優さんには俳優さんならではの質問をしていただければと思っています。一応時間の制約はあるのですが、タイムキープは僕の方でしっかり行いますので、自由にやっていただければ」と背中を押す。

羽鳥の言葉に岸井は「私は話し始めると長くなってしまうので心配だったのですが、そう言っていただけると安心です。しっかりと聞きたいことをぶつけてみたい」と意気込む。

■注目は役所広司、加瀬亮(岸井)、高橋文哉(羽鳥)

優秀賞のラインナップを見た岸井は「(『PERFECT DAYS』で優秀主演男優賞を受賞した)役所広司さんはずっと昔から作品を観てきた俳優さん。これまでお会いしたことがなく、聞いてみたいことがたくさんあるので、すごく楽しみです」と笑うと「(『首』で優秀助演男優賞を受賞した)加瀬亮さんも素晴らしかったので、撮影時のお話を聞いてみたいです」と目を輝かせていた。

一方の羽鳥は「皆さん本当に素敵な方ばかりですよね」とリストを見入ると「僕は新人俳優賞を受賞された高橋文哉さんに注目したいです。この間からバラエティ(『グルメチキンレース ゴチになります!25』)でご一緒させていただいているのですがちょっと天然なにおいがするんですよね。だから俳優としての格好いい文哉さんをこの場で目に焼き付けたいです」と語っていた。

「やっぱり映画は最高です」

日本時間3月11日(月)にアメリカで行われる第96回アカデミー賞には、視覚効果賞に『ゴジラ-1.0』、国際長編映画賞に『PERFECT DAYS』、長編アニメーション賞に『君たちはどう生きるか』の3作品がノミネート。本作は、日本アカデミー賞でも優秀賞を受賞している。

岸井は「私もオスカーのノミネート中継を見ていたのですが、『PERFECT DAYS』はドイツの監督と日本人の俳優がコラボした作品で、いろいろな国の映画人が一緒に作品を作るという現場を私も経験してみたいなと思いました」と感想を述べると、羽鳥も「『ドライブ・マイ・カー』のときも盛り上がりましたし、こういう相乗効果はいいですよね」と期待を口にしていた。

これまでは作品チームの一員として日本アカデミー賞に参加していた岸井。今年は司会者として授賞式に臨む。「これまでで一番賞を楽しめるかもしれません。久々の再会をステージ上で果たせるというのも司会者の特権なので、存分に味わえたらいいなと思っています」。そんな岸井に羽鳥も「しっかりサポートしていけたら」と頼もしい言葉をかけていた。

昨年、各映画賞で高い評価を受けた『ケイコ 目を澄ませて』。岸井は「日本アカデミー賞というのは、他の映画賞とはちょっと毛色が違う印象があったので、まさかインディペンデントだったあの映画が(最優秀主演女優賞を)受賞するとは思わなかったんです」と大きなサプライズだったという。

だからこそ「受賞によって大きなプレッシャーを感じ、自分のなかでこれ以上のことはないと思ってしまったんです。本当に『ケイコ 目を澄ませて』は映画作りという面で、相当なエネルギーを使った作品だったので、もう自分の役者人生は右肩下がりになっていくんだろうなって」と胸の内を明かした岸井。

しかし、そんな岸井の心配は杞憂に終わったという。「映画の世界には、『ケイコ 目を澄ませて』で経験した熱量を持っている人はまだまだいるんだと思える1年でした。たくさんの素敵な出会いがあり、やっぱり映画は最高だなと思えたんです」。

そんな希望の満ち溢れた映画界、映画人たちが集う日本アカデミー賞。羽鳥は「授賞式を観て『映画って面白そうだな』と劇場に足を運んでいただけるきっかけになってくれたらいいですね」と述べると、岸井も「面白い映画はたくさんあります。そんな映画のお祭りなので、ぜひ楽しんでいただけたら」と語っていた。

取材・文・撮影:磯部正和

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