4年に一度の特別な夜『HY 366DAYS Premium Live』オフィシャルレポート 結成25周年を記念した全国ツアーの開催決定

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「365日じゃ足りないくらいあなたに会いたい……」

HYが2008年に発表した「366日」は、少しずつ心がすれ違う中で、別れを迎えてしまった今も、あなたがまた私を好きになる、という儚い想いを抱いて、今日も会いたい…と願う愛の歌。仲宗根泉(Vo / Key)が叶わぬ恋を歌ったこの切ないラブソングは、発売から16年を経った今も、ライブ会場の女性たちが涙する失恋ソングのスタンダードとして日本の音楽シーンに刻まれる曲だ。

今年は4年に一度、1年が“366日”になる「うるう年」。この2月29日にHYの「366日(Official Duet ver.)」がデジタルリリースされた。メンバーの新里英之(Vo / G)のボーカルを新たに加えたデュエットバージョンとなり、「366日」をモチーフに、“一生、忘れられない恋”を描いたオリジナルラブストーリーとして4月から放送されるフジテレビ系月9ドラマ『366日』(広瀬アリス主演・眞栄田郷敦共演)の主題歌にも決定した。

この「うるう年」の特別な夜に、『HY 366DAYS Premium Live』と銘打ったライブが、ビルボードライブ東京で開催された。

「366日」のピアノのインストに導かれるようにメンバーがステージに登場し、「1日多くみなさんと過ごせる日に、HYから愛を込めて歌を届けます」という新里の言葉から、ライブは始まった。始まりの曲は、「初雪」。初雪で白一色に覆われた街を見ながら、ここで生きた証を残せるかな……と、故郷を離れ、この街で新しい道を見つけようとする主人公を描いた曲だ。それは、この曲を収めたアルバム『TRUNK』を発表した2004年、レコーディングのために長期間、故郷沖縄を離れて東京でホテル暮らしをしながら未来を思い描いていたメンバーの当時の心境が見え隠れする歌のようにも思えた。25周年を迎える今だからこそ、当時の想いを優しく抱きしめるように歌う新里のボーカルに、時の流れとアーティストとしての成長を感じた。

「さよならまたね」と「あの日のまま」という緩急のある曲に続いて、リリース当時のメンバーの年齢29歳と国道を重ねて、HYが進む未来をタイトルに込めた2012年のアルバム『Route29』から「至近距離恋愛」が歌われる。些細なことで離れていく心の距離。あなたがいること、2人でいれることがいつの間にか当たり前になっていた、という誰にも経験のある想いを歌った曲だ。今度会ったら、言えなかった思いや言葉をちゃんと伝えよう、という歌詞に頷ける方も多いのではないだろうか。

「ここが2024年の初のワンマンライブです。おしゃれな場所で、僕らも大人になったね」と新里が言った後、許田(B)のエコーが効いた乾杯の音頭で、会場が一気に和んでいく。そして、「I LOVE YOU」へ。「I LOVE YOU」の言葉を君に伝えたい、いつもその想いを大切にしよう、と歌われる、まっすぐな言葉をストレートなサウンドにのせたHYらしいラブソングだ。曲の終わりは、新里と仲宗根がステージの中央で見つめ合い、互いの手を重ねてエンディング。「リハーサルにはなかった……」と、新里は照れていた。

続く「花束」では、ステージを下りて、新里が客席をまわるサプライズも。歌い終えた後で、仲宗根は、「うるう年の今日、誕生日の人はいますか?」と会場に呼びかけると、なんとひとりの女性が手をあげる。そして、会場の全員で「ハッピー・バースデー」の歌をプレゼント。彼女にとって、一生の思い出に残る誕生日になったことだろう。

そして、新里が作詞、作曲した「僕がキミを」が歌われる。この曲が収録されたアルバム『TRUNK』については、「初雪」でも触れたが、新里もMCでこう話していた。「あのアルバムの時はとっても辛かった。遊び心で作った前作が(チャートの)1位になったことで、次の『TRUNK』は、潰れそうになりながら、それを乗り越えてできた。あの経験があったからこそ、今のHYがあると思う」。

当時の苦しかった想いが歌詞にも込められている、という「僕がキミを」。キミの心に手を差し伸べて、夢見たものを2人で取り戻しに行こうよ、と歌うこのポジティブな曲は、そういった背景がある。新里の歌声が、そっと寄り添うようにあたたかく会場を包み込んでいた。

結成25周年イヤーに入ったHY。その間に生み出された曲たちは、どれも大切な宝物のような曲ばかりだが、ライブで披露できる曲は限られてしまう。でも、この夜は、これまであまりライブではやってこなかった曲を、大切に届けていたのが印象に残った。

そして、ライブでは定番の「AM11:00」へと続いていく。ライブを通して、“シンカー”(沖縄方言で“仲間”の意味)と絆を深めてきたHYにとって、毎回、この曲を一緒に歌う時に会場がひとつになる、あの景色がここでも感じられた。いつでも、どんな会場でも瞬時に会場全体を一体化させるエネルギーを持った曲だ。客席の人たちが掲げる手が、前後左右に気持ちよさそうに大きく揺れていた。

本編のラストは、昨年11月に配信リリースされた「LOVE」。この曲は、沖縄の子供達の未来を支援するためのプロジェクト「ハイ祭〜子どもの居場所フェス〜」のテーマソングとして、子供達と一緒に曲作りをした曲。新里は、「僕たちは愛から生まれてきました。そんな皆さんに、特別な愛を届けたいと思います」と言って歌い始めた。途中には、ウチナーグチ(沖縄方言)で、いつの時も手を取り合って“ゆいまーる”(沖縄方言で“助け合い”の意味)の心で……と告げる口語(くどぅち)も入る沖縄らしい曲。この曲を歌い終えて、メンバーはステージを去った。

客席からのアンコールの歌声を受け取って再びステージに上がったHY。アンコールでは、この日から配信された「366日(Official Duet ver.)」が初披露された。冒頭にも書いたが、フジテレビ系月9ドラマ『366日』の主題歌となる曲だ。新里と仲宗根という互いに個性と存在感のあるボーカルと、そのふたりの歌声が重なった瞬間に生まれる音世界がHYの魅力のひとつだが、このデュエットバージョンでは、「366日」の主人公の男女の揺れる心の状態を、ふたりのツインボーカルとハーモニーによって、さらに世界観を広げていた。

終演後、ステージ横のスクリーンに、HY25周年のメンバーのメッセージと共に、今後の予定が発表された。今年9月から来年にかけて、全国ツアー『HY 25th Anniversary TOUR』のスケジュールが映し出された瞬間、大きな歓声が湧き上がった。

4年に一度、366日になる特別な日に行われた『HY 366DAYS Premium Live』。いつものHYとは少し雰囲気の違う大人の空気感の中でのライブだった。それは、HYにとっても、“シンカー”にとっても、あたたかい歓声とたくさんの笑顔に溢れた、いつまでも記憶に残るプレミアムな一夜になったに違いない。

文:伊藤博伸

<公演情報>
『HY 366DAYS Premium Live』

2月29日(木) 東京・ビルボードライブ東京(1日2回公演)
1stステージ:開場 16:30 / 開演 17:30
2ndステージ:開場 19:30 / 開演 20:30

【セットリスト】
01. 初雪
02. さよならまたね
03. あの日のまま
04. 至近距離恋愛
05. I LOVE YOU
06. 花束
07. 僕がキミを
08. AM11:00
09. 風になって花になって
10. LOVE
EN. 366日(Official Duet ver.)

<配信情報>
「366日(Official Duet ver.)」

※フジテレビ系月9ドラマ『366日』主題歌

配信リンク:
https://HY.lnk.to/366days_odv

<ライブ情報>
『HY 25th Anniversary TOUR』

9月22日(日) 沖縄・那覇文化芸術劇場 なはーと 大劇場
9月28日(土) 東京・ひの煉瓦ホール(日野市民会館)
9月29日(日) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
10月12日(土) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール
10月13日(日) 静岡・焼津市大井川文化会館 ミュージコ
10月26日(土) 千葉・印西市文化ホール
10月27日(日) 埼玉・狭山市市民会館
11月9日(土) 兵庫・神戸文化ホール 大ホール
11月10日(日) 奈良・なら100年会館 大ホール
11月23日(土) 新潟・上越文化会館 大ホール
11月24日(日) 福井・敦賀市民文化センター 大ホール
12月7日(土) 宮城・仙台電力ホール
12月8日(日) 岩手・花巻市文化会館 大ホール
12月14日(土) 熊本・熊本城ホール メインホール
12月15日(日) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
1月18日(土) 香川・サンポートホール高松 大ホール
1月19日(日) 高知・高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
1月25日(土) 山口・渡辺翁記念会館
1月26日(日) 島根・島根県芸術文化センター グラントワ
and more

<フェス情報>
『HY SKY Fes 2024』

3月22日(金) 前夜祭
3月23日(土) DAY1
3月24日(日) DAY2
場所:沖縄県総合運動公園 多目的広場

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