『ブギウギ』趣里の芝居の中に取り込まれた意識の変化 先代たちからの教えを未来へ繋げる

スズ子(趣里)のもとに新人マネージャーとしてやってきた柴本タケシ(三浦獠太)。山下(近藤芳正)の甥で、やる気だけはあるからと押し切られる形で、スズ子はタケシを新たなマネージャーとして迎える。しかし、タケシは居眠りをしてしまうなど、スズ子の足を引っ張ってばかり。『ブギウギ』(NHK総合)第106話では、新曲「買物ブギ」が初披露されるスズ子にとって大事なワンマンショー当日に、タケシが寝坊をしてしまう。

慌ててスズ子宅の玄関を開けるタケシだったが、そこに立っていたのは家政婦の大野(木野花)。すでにスズ子は一人で劇場に向かっていた。その場にへたり込むタケシは、実は大学は留年し、仕事も続かず、夢中になれるものがないことを明かす。それを聞いた大野は、「正直にぶつかれ。うそもごまかしもなく。正直にぶつかって一生懸命働け」と叱咤激励の末に、タケシをスズ子の元へと向かわせる。

開演前、楽屋で息をととのえるスズ子。目を閉じ浮かんでくるのは、羽鳥善一(草彅剛)、タナケン(生瀬勝久)、山下たち、先代の「一人前」という言葉。そこにクビを覚悟で謝罪しにやってきたタケシに、スズ子は「あんた。よう見ときや」とだけ告げ、ステージへと出ていく。

楽曲制作に追われている善一は不在。スズ子による「トゥリートゥ、トゥリートゥワンゼロ!」のカウントからステージは幕を開け、スズ子はエプロン姿へと早変わり。腕にかけた買物カゴを揺らしながら、ややこしくも、おもしろい、難曲の「買物ブギ」をパフォーマンスしていく。「OSSAN!」の文字が印象的なステージセットをはじめ、演奏隊、バックダンサーなど、これまで以上に力が入っているのを感じさせる中、圧倒的なのはやはりスズ子のステージング。物語としては善一ら先代から受け継いできたものを、スズ子が次の代にあたるタケシへと伝えるという回になる。もちろんここまで舞台を積み重ねてきた趣里自身の経験から生み出されたパフォーマンスであることは大前提にして、スズ子としての意識の変化というのも芝居の中に取り込まれていたのかもしれない。

舞台袖で観ていたタケシも観客と一緒になって最高の笑顔を浮かべ、感動の拍手を送る。楽屋に戻ったスズ子はタケシに「これが歌や。これがお客さんを楽しませるいうことや。それがどんなにすばらしい仕事か、あんたにはもっとちゃ~んと分かってほしい。羽鳥先生、タナケンさん、山下さんもそうや。ワテはいろんな人から、人を楽しませることの面白さ、厳しさ、いろいろ教わってきてる。今後は、ワテがそれをあんたに教える番や。これからも一緒に頑張ろな」と手を差し出した。

一件落着したように見えるが、タケシの寝坊癖がまだ改善されたわけではないため、マネージャーとしての素質が備わっていくかは次週に期待だが、大野を持ってしても完全には克服できなかった愛子(小野美音)のにんじん嫌いが、「鼻をつまむ」というアイデアですんなり食べられるようになったのは、タケシの意外な才能なのかもしれない。

最終回まで残り1カ月を切り、放送回数も残り約20回となった『ブギウギ』。今年1月16日に、スズ子が生まれ故郷の香川を再び訪問するシーンを撮影されたことが明らかになっていたが、第23週「マミーのマミーや」はその香川ロケの模様がオンエアとなる。

(文=渡辺彰浩)

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