「自分にない感覚を補ってくれた」伊勢田雄介さん・うらいまゆみさんが夫婦で手がける真鍮ジュエリーブランド

デザイナーの伊勢田雄介さんとワイヤーアーティストのうらいまゆみさんご夫婦

ジュエリーメーカーのデザイナーで、名刺、ポスターなどのデザインも手がける伊勢田雄介さんと

アクセサリーやオブジェなど、さまざまなワイヤーを使った作品を手がける、うらいまゆみさんご夫婦。

今回は、真鍮ジュエリーブランド「Maillet brass things」を共同で運営するお2人に、対談方式でインタビューさせていただきました。

以前、クリスマスオーナメントやミニバスケットのつくり方を教えてくださったうらいさん。

ご自身の作品が脚本家・木皿泉さんの著書の表紙に使用されるなど、精力的に活動されています。

お2人の出会いから、夫婦での作品へのかかわり方、今後の展望など、さまざまな内容のお話をうかがうことができました。

お互い「緊張するね」と口にしながらも、和やかに始まった対談。

まずは出会いをうかがうと、2人とも通っていたカフェが一緒だったのだそう。

それぞれ展覧会の打ち合わせを別々にしていたところ、知人が紹介してくれたことが知り合うきっかけになりました。

共通の友人が多く、行っているお店もほとんど一緒だったそうですが、それまではお互いに知っていはいたものの、直接話したことはなかったのだそう。

実はこの時、伊勢田さんのことを「若干避けていた」という、うらいさん。

「自分と近いデザインの感覚を持っていると感じており、近づくと喧嘩になったりジェラシーでしんどくなるのでは」と思い、近づかないようにしていた、というエピソードも飛び出しました。

続いて、2人で初めてつくった作品についてもうかがいました。

花の形のものを制作したいと考える中で、伊勢田さんがたんぽぽの詩を書いていたことから、たんぽぽのブローチをつくることになったそうです。

まずはアウトラインをつくり、ブローチピンを付けてみたものの、なかなかそれだけではブローチとして成立しないと感じたうらいさん。

「どうしたらいい?」と伊勢田さんに相談したところ、リボンのような真鍮の板を付ける案を出してくれたそうです。

そこから、「板にたんぽぽの詩を打ったらいいのでは」「ここに折り目をつけたらかわいい」など2人でアイデアを出しながら制作にあたりました。

伊勢田さんの「できあがってみてどう思った?」という質問に、うらいさんは「自分にない感覚を補ってくれた」と答えます。

伊勢田さんも、「複雑なものをつくってはいけない」というという以前からあった考えを、うらいさんがアウトラインをつくってくれたことで取っ払うことができたと感じたそうです。

「2人でつくるという行為がお互いの固定観念を外し、成長している感じがある」とお話してくださいました。

「私たち、めっちゃくちゃ喧嘩するんですよ」といううらいさん。

はじめの頃は「役割分担を夫婦間でどうしたらいいかわからなかった」「口出していいところ・悪いところがお互い分からなかった」と、振り返ります。

ずっとすり合わせをしていくうちに、「ここまでは私がやるけど、ここからはお願い」というキャッチボールができるようになってきたそうです。

目指すゴールは同じという信頼関係があるからこそ、どんなにすり合わせに時間がかかっても大丈夫という安心感もあるのだとか。

夫婦での作品への関わり方を真剣にトークしていく中でも、ふと、「めっちゃ冷静に喧嘩の分析してる…」と笑ってしまうお2人の姿が印象的でした。

2人を満たす瞬間とは、どのような時なのでしょうか。

「お客さんの笑顔」と答えるうらいさんに、伊勢田さんも「そうやね」と同意します。

「お客さんに“いいやん”と言ってもらえた時」「お客さんに届いて、届いたことが分かった瞬間」と、お2人とも、作品の先にいるお客さんのことを真っ先に思い浮かべたようです。

最後に、今後の展望についてお話をうかがいました。

うらいさんによると、「今世の中で、針金という素材が注目されてきている」のだそう。

お客さんに針金で何が伝えられるかを追求することで、「みてくださる方が自分らしく生きられるような投げかけになればいいなと思って作品をつくり続けたい」とお話してくださいました。

そんなうらいさんに対し、「ええなぁ。楽しみやわ」と笑顔の伊勢田さん。

今回のインタビュー全体を通して見えたのは、妥協せずに話し合いを続けながら、真摯に作品づくりに取り組んでいるご夫婦の姿。

良いものをつくりたいというお2人の情熱と、お互いへのリスペクトを強く感じ取ることができた対談となりました。

真鍮ジュエリーに興味のある方は、ぜひのぞいてみてくださいね。

デザイナー『伊勢田雄介』

ワイヤーアーティスト『うらいまゆみ』