社説:能登地震2カ月 被災者の実情、直視を

 年初の能登半島地震の発災から、きょうで2カ月となる。

 広い範囲で続く断水をはじめ、生活インフラの復旧が遅れがちだ。厳しい寒さの中、1万1千人以上が避難所に身を寄せている。

 仮設住宅の建設やボランティアの受け入れは進みつつあるが、復旧へ一歩踏み出したに過ぎない。「日常」を取り戻すには、被災者の暮らしの支援と再建に向けた着実で息の長い支援が欠かせない。

 被災の実態はようやく明らかになってきた。最も大きな被害を受けた石川県の死者は241人に上り、住宅被害は約7万7千棟に及んでいる。

 断水は輪島や珠洲など7市町の約2万戸で続き、水道管などの修復を急いでいる。停電は輪島市など約700戸で続いている。

 過去の災害を教訓に国や自治体の連携で大がかりな救援派遣が取り組まれた。しかし、半島各地の道路寸断に拒まれ、今も支援や復旧の遅れは否めない。

 ところが、輪島市は「復興へとフェーズ(局面)が変わっている」として、きょう1日から住民が自主的に運営する自主避難所への物資の配送を打ち切る。

 市内には、市の指定避難所27カ所以外に、集会所などを利用した自主避難所が36カ所あり、約380人が過す。車中泊を余儀なくされている住民も少なくない。

 指定避難所への集約の一環とはいえ、住民と協議することなく決まったという。拙速に過ぎないか。効率優先ではなく、被災者に寄り添った対応を求めたい。

 北陸新幹線の延伸開業に合わせ、今月16日に被災地の観光需要喚起を図る「北陸応援割」も始まる。石川県では「2次避難所」となったホテルや旅館が多く、約5千人が避難しているが、今月中に受け入れを打ち切る施設が増えるとの見方がある。地域経済を支える観光促進は重要だが、被災者支援との両立は可能なのか。

 この間、政府の対応の遅れが指摘されてきた。岸田文雄首相は地震対策のため、本年度予算の予備費から計2600億円超の支出を決めた。ただ、世論の反発を受け、住宅再建支援の新たな交付金制度を急きょ、若者・子育て世代にも拡大するといった場当たり的な対応が目立つのが気がかりだ。

 開会中の国会も、自民党の裏金事件などの不祥事を巡り、被災地支援を盛り込んだ予算案審議が深まらないままである。被災地を置き去りにして、政治が停滞することは許されない。

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