いよいよ3月10日(現地時間)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで授賞式が行われる、映画界最大の祭典「第96回アカデミー賞」。最高の栄冠がどの作品、あるいは誰にもたらされるのか、世界中の熱い視線が集まっています。今回は日本発の注目作が3作品もノミネートされていて、例年以上に日本のファンたちの関心も高く、その受賞が期待されていますが、他にもハリウッド大手スタジオの大ヒット作や、配信系の質の高い話題作、インディペンデント系の秀作などライバルもひしめき合い、予断を許しません。そこでオスカーの行方を大予想するとともに、授賞式をより興味深くするトリビアなどをお届けします。これだけ知っておけば豪華セレモニーがさらに楽しめること間違いなし!
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本命は? 対抗は? 映画のプロたちが予想するオスカーのゆくえ
2023年度の映画賞レースもいよいよ最終ゴールが見えてきましたが、その結末やいかに? アカデミー賞授賞式を間近に控え、映画のプロたちに気になる主要部門の最終受賞予想をしてもらいました! ここから今回の本命、対抗が見えてくる?
清藤秀人 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
『オッペンハイマー』の作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞は確実かと。オスカーでは無冠だったクリストファー・ノーランが、自身の最高傑作と言われる渾身の作品で黄金像を手にする姿を考えただけでウルウルする。
ノーランとは盟友関係にあるキリアン・マーフィーの感情を抑制した天才科学者像、俳優としての自我を消し去ったロバート・ダウニーJr.の洗練された役作りは、どちらも最多得票を集めそう。
主演女優賞は『哀れなるものたち』のエマ・ストーンもありだが、多様性の観点から先住民系俳優初の受賞を目指す『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のグラッドストーンか。助演女優賞は大方の予想通り『ホールドオーバーズ(仮題)』のランドルフで。
斉藤博昭 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:ポール・ジアマッティ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
過去数年間に比べても、今年の作品賞は最も予想しやすく、なかなかその“1強”を突き崩す作品が現れそうにない。『バービー』や『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』といった当初のライバルが、賞レース終盤にやや失速気味になり、とくに監督賞は近年稀にみる独走状態。とは言ってもサプライズ大逆転は密かに歓迎。
『ホールドオーバーズ(仮題)』は新鋭、ドミニック・セッサの演技も絶品で、彼とのアンサンブルでポール、ダヴァインが際立った。ただ主演男優は『オッペンハイマー』の快進撃に乗って、キリアン・マーフィの可能性も捨てきれず。
主演女優も冷静に判断すればエマだが、1度受賞しているし、多様性に傾けばリリー・グラッドストーン、大穴でザンドラ・ヒュラーもアリかも。
成田陽子 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ジョディ・フォスター
作品賞は圧倒的に『オッペンハイマー』に決まり! 歴史的ストーリー、サスペンス感、知名俳優を配置しての登場人物たちの性格と行動。
ノーラン監督の安定の操縦が画面を引き締め、観客を強引に引きずり込む。
マーフィーはりんごだけのダイエットで痩けた頬を効果的に見せ、彼の内面の葛藤演技は最高級。
グラッドストーンの北米ネイティヴの女性の包み込むような暖かさが胸を打つ。
ダウニーJr.の底に秘めた策略と智謀の演技には仰天させられる。
フォスターの自信に満ちた存在が映画の錨になって支えている。
まつかわゆま 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
作品の力として今年は断トツ『オッペンハイマー』だし、その功労者は監督ノーランに尽きる。と言って監督賞と主演女優賞に『バービー』無視は問題。せめて脚色賞でグレタ・ガーウィグを讃えてあげてほしい。
主演男優賞はブラッドリー・クーパー以外は一世一代のチャンスの激戦だが作品の力でキリアンに。主演女優は演技者としてならエマしかいない。
助演賞は作品を見た途端に決定。ダウニーJr.の変身なりきりぶりは凄いし、『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』(2023)にも出ているダヴァインが同じ人とは思えない『ホールドオーバーズ(仮題)』の演技は白眉。全体的には多様性に欠ける結果になるのではないかと思う。
よしひろまさみち 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:キリアン・マーフィー
主演女優賞:リリー・グラッドストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダニエル・ブルックス
今後の関係者の発言次第ではあるものの、今回のオスカー主要賞は『オッペンハイマー』祭りがほぼ確定。
受賞作の傾向である、“史実ベース”、“その事象・人物への偏見の反省”、“興行的成功”、“独創性とアート性”、“映像・脚本の革新性”という5拍子が揃った作品だけに、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞は手堅い(クリストファー・ノーランがユニバーサルとの新タッグで花開く、というドラマに最大の期待)。
新人にチャンスがある助演女優賞もダヴァイン・ジョイ・ランドルフとダニエル・ブルックスを抑える可能性がある。残る主演女優賞もほぼ出来レースで、リリー・グラッドストーンとエマ・ストーンの一騎打ち。この流れだと、また「白すぎるオスカー」問題が浮上することも付け加えたい。
米崎明宏 予想
作品賞:『オッペンハイマー』
監督賞:クリストファー・ノーラン
主演男優賞:ポール・ジアマッティ
主演女優賞:エマ・ストーン
助演男優賞:ロバート・ダウニーJr.
助演女優賞:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
1月下旬時点の本国の様々な受賞予想記事を見ていると『オッペンハイマー』とクリストファー・ノーランが作品と監督部門のトップランナーであることは間違いない。おそらく助演男優のロバート・ダウニーJr.なども加えて“オッピー・ナイト”と呼ばれそうな気配。
難しいのは主演部門で、男優はキリアン・マーフィーとポール・ジアマッティが、女優はエマ・ストーンとリリー・グラッドストーンがデッドヒート。
全米俳優協会賞の結果発表を待っていられないので、一応個人的に取ってほしいジアマッティと誰も見たことがないような演技に果敢に挑んだエマを挙げておきます。助演女優はダヴァイン・ジョイ・ランドルフで決まりでしょう。
作品賞候補
『オッペンハイマー』
監督賞候補:クリストファー・ノーラン
原爆の父と呼ばれた天才的物理学者の苦難を描く人間ドラマ。
『哀れなるものたち』
監督賞候補:ヨルゴス・ランティモス
自殺した女性が天才外科医の手で甦り、新たな人生を生きる。
監督賞:マーティン・スコセッシ
石油採掘で裕福になった米先住民族の富を狙う白人たち。
『バービー』
バービーランドで暮らすバービーとケンが人間界にやって来る。
『関心領域』
監督賞:ジョナサン・グレイザー候補
アウシュヴィッツ強制収容所の隣で平和に暮らす独家族。
『落下の解剖学』
監督賞候補:ジュスティーヌ・トリエ
雪山の山荘で突然死んだ男は自殺か事故死かそれとも…?
20世紀音楽界の巨匠レナード・バーンスタインと愛妻の絆。
『アメリカン・フィクション』
売れない黒人作家が売れ筋の小説を書いたところ事態が一変。
『パスト ライブス/再会』
子供の頃、好意を抱いていた男女が24年後に再会を果たす。
Xマス休暇なのに学校に残ることになった教師と生徒ら。
主演男優賞候補
キリアン・マーフィー(『オッペンハイマー』)
ポール・ジアマッティ(『ホールドオーバーズ(仮題)』)
ブラッドリー・クーパー(『マエストロ:その音楽と愛と』)
ジェフリー・ライト(『アメリカン・フィクション』)
コールマン・ドミンゴ(『ラスティン:ワシントンの 「あの日」を作った男』)
主演女優賞候補
エマ・ストーン(『哀れなるものたち』)
リリー・グラッドストーン(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)
キャリー・マリガン(『マエストロ:その音楽と愛と』)
ザンドラ・ヒュラー(『落下の解剖学』)
アネット・ベニング(『ナイアド~その決意は海を越える~』)
助演男優賞候補
ロバート・ダウニーJr.(『オッペンハイマー』)
ライアン・ゴスリング(『バービー』)
マーク・ラファロ(『哀れなるものたち』)
ロバート・デ・ニーロ(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)
スターリング・K・ブラウン(『アメリカン・フィクション』)
助演女優賞候補
ダヴァイン・ジョイ・ ランドルフ(『ホールドオーバーズ(仮題)』)
ダニエル・ブルックス(『カラーパープル』)
ジョディ・フォスター(『ナイアド~その決意は海を越える~』)
エミリー・ブラント(『オッペンハイマー』)
アメリカ・フェレーラ(『バービー』)
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