わらび座劇場開場 50周年記念公演 ミュージカル『ジャングル大帝 レオ』製作発表会レポ

わらび座が名作『ジャングル大帝レオ』の初のミュージカル化に挑む。わらび座は今までにも『火の鳥』『アトム』『ブッダ』と手塚治虫の名作を次々とミュージカル化してきたキャリアがある。公演は今年の4月21日より秋田のわらび座劇場にて上演する。なお、開場50周年記念公演にもなる本作、上演が待ち遠しい。
わらび座と手塚治虫の縁は、創設者の原太郎の妻と手塚治虫が学生演劇のグループで一緒だったことがきっかけだったそう。製作発表会には、わらび座の代表理事の今村晋介、手塚プロダクションの代表取締役の松谷孝征、脚本の高橋知伽江、演出の栗城宏、レオ役の三重野葵、久保田美宥。なお、三重野は成長したレオを、久保田は子供時代のレオを演じる。
今村晋介より挨拶、「わらび座劇場は1974年に開場、そこからちょうど50年の節目の年。記念公演として『ジャングル大帝レオ』をミュージカル化します。これまでは秋田やゆかりのある作品を多く取り上げてきましたが、地球が壊れそうな出来事が地球上で起こっております。地球規模的なスケールの作品が必要と思い、また、全国各地からわらび座を見にきてほしいと思い『ジャングル大帝レオ』に挑戦することにいたしました。
手塚先生がわらび座にいらしたのは1987年、創始者の原太郎と対談いたしました。それから約20年後、2008年にミュージカル『火の鳥』、2010年にミュージカル『アトム』、2013年にミュージカル『ブッダ』を上演してまいりました。地球の未来のために動物も人間も命懸けになる姿を通して、未来にに生きるための勇気と希望をお届けしたい。桜、新緑、紅葉、雪、四季がある秋田、ぜひ秋田に観に来てほしいと思います、感動と手塚治虫先生の未来へのメッセージをお届けしたいと思います。コロナ禍で民事再生となったのが2022年3月に新しくスタートしましたが、公演の成功で果たしてまいりたいと思います」と呼びかけた。

それから手塚プロダクションの松谷孝征、「わらび座さんでは手塚作品をすでに3作、やっております。今年、『ジャングル大帝レオ』のミュージカル化、大変ありがたいことです。わらび座には何度か行きましたが、素晴らしいところ、素敵な場所。ぜひ、『ジャングル大帝レオ』素晴らしいミュージカルに、期待しております。皆さん、頑張ってください!」とスタッフ・キャストにエールを送った。

脚本の高橋知伽江は「『アトム』で育った世代、毎週『鉄腕アトム』のアニメを観るのが楽しみにしていました」」と開口一番。『鉄腕アトム』は1963年から1966年にかけてフジテレビ系で日本初の30分テレビアニメシリーズとして放映、このアニメ第1作は平均視聴率27.4%を記録、当時の子供たちはこぞって『鉄腕アトム』を視聴。「手塚治虫先生は神様でしたので、ミュージカル化、大変光栄な機会をいただきました。原作は壮大な長い長編、ライオン、パンジャ、レオ、ルネという3代のライオンの生涯が描かれています」ミュージカル化にあたっては、手塚プロダクションからは唯一「『ライオン・キング』にはしないでください」という条件のみ。「全然似てません。『ライオン・キング』は動物の世界だけを描いていますが、この作品は、人間たちの姿も色濃く描かれています。人間と動物、でも人間も動物ですが、その両方が描かれていると言うこと、人間と動物が力を合わせて生きていく…地球で、未来のために冒険をするという話。命を懸けても惜しくないようなケン一という青年とレオの友情が物語の芯になります。この出会いから別れまでを軸に、一つの物語としています。特徴としては社会性、メッセージが込められています。「ムーンライトストーン」という石を探す、特別な石というイメージ…地球、未来、国際紛争、手塚先生は予見していたのでは? 鋭い洞察を感じます。密猟、動物の乱獲だけではないジャングルを開発すること…そういうことにも触れられています。社会的メッセージがありつつも、ミュージカなのでエンターテインメント性も。今回はわらび座さんから『ファミリーで楽しめるものにしてほしい』と。サーカスのシーン、子供レオが九官鳥から人間の言葉を教えられる、ここで早口言葉を使ったりして、観てる人たちが笑ってしまうような、楽しいシーンもあります。ぜひ、ご家族で、お友達同士で劇場に。感動していただけると思います」

それから演出を担う栗城宏より「『ジャングル大帝レオ』をわらび座でやることが決まり、私が演出をやることになりましたが、ファミリー、(ミュージカル・演劇に)縁がなかった人にも観てもらえるような、吸引力のある題材として、『ジャングル大帝レオ』を選んだ、その上でなぜわらび座が『ジャングル大帝レオ』をやるのか、動物をどう演じるのか、アフリカのジャングルはどういう風に表現するのか、そういうことが、皆さん『?』と言いますか、実は私が一番『?』そう思っていました。いまだに着地点が見通せない、主演2人はライオンに見えるのか、まだ答えが見つかっていない。秋田は去年は夏に水害がありました。市内にはいまだに熊が出没いたします。四季折々、素晴らしい自然に囲まれて、これを地球が病気になっている、地球の悲鳴を肌で実感します。高橋知伽江先生が素晴らしい台本を書いてくださった。これを描き切ること、人間が自然界の一部として、動物とともに地球の未来を救っていく、そういう骨太の壮大なスケールで、物語を届け切ることに邁進して行きたい、高橋先生とのZoom会議で『大人が地球の未来を諦めちゃいけない』というお話をされてて、それにものすごく共感しました。本当に大切なこと、そういう強烈な力を持った舞台にすること、それでわらび座にたくさんのお客様がきてくれるようになれば、と思っています。この作品に取り組む上でわらび座がミュージカルをやる以前に、日本の郷土芸能を73年前からずっと取り上げてきました。そういう意味では、身体性、身体を使って…アフリカと日本、日本の郷土芸能がどう関係するのかと思われるかもしれません。これも私が疑問に思っているところですが、そういうところに果敢にチャレンジして、奇妙なものにはならない、『なるほど』と思わせる日本の芸能を取り入れたミュージカルシーンも作っていきたい、所信表明になりますが。主演のお二人、舞台は1幕、2幕と分かれています。1幕の子供レオ、生まれたてから演じます久保田美宥。去年の暮れまで上演していた『いつだって青空』(https://theatertainment.jp/japanese-play/117889/)で主演をつとめていました。2幕で大人になった3年後のレオは三重野葵、手塚3作品全てに初演メンバーとして参加しています。三重野はわらび座の舞台ではとても頼りになる、ライオン的に身体能力が高い役者です。

それから主人公・レオを演じる2人から、三重野葵は「幸運なことに手塚治虫先生原作の3作品出演させていただきました。勝手に『強いご縁あるな』と思っています。今回『ジャングル大帝』、『お、俺の出番かな?』ふつふつと(笑)、感じておりました。今までにオオカミに育てられた、半分オオカミの血が流れている人間とか、飛脚が命を落とした後に伝説の狐になったとか、動物がらみの役はやったことはあるのですが、動物そのものは初めてです。どうアプローチしていけばいいかな?と思っていたのですが、動物とか人間とか、と分けて考えること自体がアプローチの邪魔になるなと。心を持った生命体としてアプローチしていこうと。レオは人間の言葉を喋りますが、レオ自身が自分のことを人間に理解してもらいたい、人間のことを深く理解したい、そこから言葉を覚えたいというところが。異なる価値観や考え方を持つ人に対して、自己投影して理解する、進んでいく力…現代ではこれはとても大事なんじゃないかな?と。わらび座は民俗芸能もやっていますが、踊る上で、その土地の人の考え方や生活を勉強して理解することによって、一つ一つの踊りやお囃子の大事な部分がわかってくる部分があり、それをやり続けている、わらび座だからこそできる舞台、たくさんの方々に、わらび座の強みを生かしたミュージカル、それがこの『ジャングル大帝』にはあるんじゃないかなと。わらび座の強みを生かしたミュージカルを作っていきたい」と熱弁を。
久保田美宥は「手塚作品に出演するのは初めて。小学生の頃に手塚作品に最初に出会った作品はテレビアニメの『ブラック・ジャック』です。原作(『ジャングル大帝レオ』)を読んで、本当に面白くてキャッチーなキャラクター。ヒゲおやじ、名前がすごいな(笑)。手塚先生の作品テーマ、人間とはなんだろう、深いテーマの物語、自分が参加できるのがすごく嬉しい。大切に演じたいなと。人間、今生きている命、どう関わり合っていくのかっていうところがすごく自分自身でも考え続けたい。いろんな問題を自分の中で咀嚼しつつ、それを踏まえての身体表現、ライオンを演じること、考えることがたくさんあります。想像力、チームで作り上げていくことを大切にしていきたい。民俗芸能、『HANA』も経験しましたが、人間と自然の距離感が近い芸能であることを感じます。わらび座にしかできない『ジャングル大帝レオ』があると思います。楽しみにしていただけたら。楽しいシーンもたくさん盛り込んでいただきました、私自身も楽しみながら!」
演出について栗城宏は「持続可能な世界を作るために舞台美術は二重の盆で効果的にジャングルや現代社会の一場面、自転する地球を見せたい、全て手動で、廃材も利用しながら。お金がないから、ではなくて(笑)、リサイクル舞台を得意としてますので、回る地球、場面が印象的に効果的につながっていく、そこでくり広げられる物語、振付の先生etc.とても意欲的に創作に取り掛かっています。民俗芸能に囚われずに、人間と動物の動き、まだ答えは出てないのですが。衣装、いわゆる着ぐるみショーにはしたくない、一つの生命体、人間が衣装をまとっているわけではない、動物そのものに見える衣装を考えています。アニメ・マンガのビジュアルとはかなり違うものになると思いますが、それでも違和感はなく、手塚先生の世界観を表現していきたい」
またクライマックスは?という質問が出た。「一番美しいシーンはムーン・ライト・ストーン…アフリカの最高峰の山に、延々とたどるシーン。崖っぷちをわたる…登山シーンが非常に長い。『これはどうやればいいんだろう』と…ケン一とレオとの命を懸けても惜しくないような厚い友情が全編を貫いています。すごく感動していただけると思います」と高橋知伽江。

また演出家より「見せ場は廻り舞台を使っての山に登るシーン、そこで知伽江さんが仰ったように…人間と動物が手を組んで…のシーンは本当に心打つ場面になるなと思っています。それから、かつて『誓いのコイン』という作品でロシア兵と日本人女性の恋の物語も違和感なく会話、今回も人間と動物、(脚本で)違和感なく会話できる仕組みを作ってくださって『すごいな』『さすがだな』と(笑)。全編通してとてもヒューマン、人間愛、動物愛、人間を信じている、そういう姿勢の台本です」とコメント。
久保田美宥は「すごく好きな言葉『全ての命たちがみんな家族だ』って…これはすごく素敵な言葉だって思いました。人間と動物たちがわかりあう、難しいテーマですが、この作品に私が挑戦できるのはいいな、と思うのと同時に…これを自分がどう表現するのか、役者として体の表現と、顔、表情、大変だなーと思いつつも『楽しそうだな』と…いろんな感情が沸き起こります(笑)」三重野葵は「本当にいろんな場面が出てきて、一つのステージなんですけど、山だったり…サーカスの場面…いろんな思いが出てきて、それが舞台の魅力の一つ。観ている方が自由にその場を想像することができる。テーマや世界観はとても深いし広い作品なので、『どうしようかな』と思うのと同時に僕1人じゃだめだなと。この作品に関わるいろんな人の視点を自分でも吸収するし、みんなにも知ってもらうことがこの作品で大事になってくるんじゃないかなと思っています。今まで以上に稽古場…稽古に入る前から各々のコミュニケーションっていうんでしょうか、いろんなことを考えてこの作品について話したりしてます」
またもしも手塚治虫が舞台を観たらどういう感想を持つか?という「IF」な質問。
手塚プロダクションの松谷孝征、20代の頃に手塚プロに入ったそうで「小学生の頃は『ジャングル大帝』も『アトム』も『リボンの騎士』も全部読んでました。大人になって読み直しましたが『こんなこと、言いたかったんだ、すごいな』、手塚治虫の凄さを感じました…舞台を観た手塚が何か言うのを聞いたことがありません。『それはそれでいいんじゃないか』ということだと…ミュージカル『ジャングル大帝レオ』も天国から温かく見守ってくれると思います」と回答。原作側と舞台製作側の良い関係、それが良質の舞台を創造する。公演は4月21日より。

概要
日程・会場:2024年4月21日(日)~2024年11月24日 あきた芸術村わらび劇場(秋田県仙北市田沢湖卒田字早稲田430)
[スタッフ]
原作:手塚治虫
※手塚治虫の「塚」は旧字が正式表記。
脚本:高橋知伽江
演出:栗城宏
出演:三重野葵、久保田美宥 他
作曲:八幡茂
振付:新海絵理子
美術:土屋茂昭
照明:三重野美由紀
音響:福地達朗
衣裳:武田園子
小道具:平野忍
舞台監督:仁しづか

企画協力:手塚プロダクション

企画・制作:一般社団法人わらび座

チケットオンセール 2024年3月1日(金)10:00~
※温泉ゆぽぽ宿泊者、10名以上の団体は先行して受付可能です。
チケットのご予約・お問い合わせ
あきた芸術村予約センター
☎ 0187‐44‐3939 [月-土 9:30-11:30、12:30-17:00]
わらび座オンラインチケット(Gettii) https://www.e-get.jp/warabi/pt/

わらび座公式サイト:https://www.warabi.jp

わらび座公式X(旧Twitter):https://twitter.com/art_warabiza

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