プロも病みつき蜘蛛型パター「スパイダー今昔物語」初代はいまいくら?

ジェイソン・デイの愛用するサイトライン無しの蜘蛛型パター

2008年にテーラーメイドから発売された初代「スパイダー」パター。ツアープロがこぞって使用したこともあり大ヒットモデルになった。2024年も新作が登場。16年にわたって進化を続けるスパイダーの歴史を振り返りつつ、中古市場をのぞいてみよう。

初代スパイダーの正式名称はご存じ?

テーラーメイドは革新的なクラブを多数生み出してきたが、パターも例外ではない。2008年発売の初代スパイダーは独特な形状で話題になった。「ロッサ モンザ スパイダー AGSI+」が正式名称。当時、テーラーメイドの「ロッサ」シリーズは、世界中の有名サーキットをモデル名にしており、「モンザ」はイタリアのモンツァ・サーキットを指している(ロッサ・フジ、ロッサ・スズカという名称のパターもある)。

初代は現在のスパイダーよりもヘッドサイズがひと回り大きい。重心深度が深く、慣性モーメントが大きくてミスヒットに強い。「r7ドライバー」と共用できるヘッド後方の可変ウエート交換により、重心位置とヘッド重量が調整できる革新的なパターだった。見つかれば5000円以下で手に入るが、程度の良いものだと1万円ぐらいすることもある。

初代スパイダーは中古市場でも見つけることができる

ネック違いや形状にも様々なバリエーションが登場する。ヘッドサイズを20%近く小さくした「ITSY BITSY」(イッチービッチー)というモデルも登場。現在展開されるスパイダーシリーズと同じぐらいの大きさになった。サイズ的なメリットのあった初代が一番“尖っていた”と言えるだろう。少し、残念だ。

周期的スマッシュヒットの陰にジェイソン・デイの活躍

2008年に認知度を上げたスパイダーはその後、ロッサシリーズの枠から外れ、スパイダーシリーズとして展開された。2011年の「マスターズ」で2位に入ったジェイソン・デイ(オーストラリア)が使用していた「スパイダー・ゴースト」(2011年)が話題となる。当時人気を博した白ヘッドのドライバー「R11」とともに、スパイダーも白くなった。こちらは5000円前後が相場だが、白い塗装が当たり傷に弱いため、程度の良いものはかなりレアだ。

デイが現在使用中のスパイダーは小ぶりなイッチービッチー。ヘッドの傷が歴史を感じさせる

デイはその後もスパイダーを使い続け、2015年「全米プロゴルフ選手権」で優勝した時は「ゴースト・スパイダー イッチービッチー ブラック プロトタイプ」を使用した。世界ランキング1位になった翌年は赤いスパイダー「ゴースト スパイダー リミテッドレッド」を握って話題になり、2017年に満を持して発売された「スパイダー ツアー レッド スモール スラント」が大ヒットした。イッチービッチーサイズのヘッドとショートスラントネックで、寛容性と操作性のバランスが良い。ネック違いも数多く販売されている。1万円を切る価格で見つかるだろう。

ちなみに色違いの黒モデル「スパイダー ツアー ブラック」は2017年からダスティン・ジョンソンが使用して大活躍した。色だけでなくフェースインサートも違い、ブラックのほうがしっかりした打感に感じる。中古ではREDよりもこちらの方がレアだ。2020年に「スパイダー ツアー ブラック 2020」として復刻されており、こちらは1万円後半が相場。

マキロイも流行を後押し

マキロイが23年の中盤まで使っていたスパイダーツアー(撮影/服部謙二郎)

岩井明愛が2022年9月に変更したパターが「スパイダーX カッパーホワイト スモールスラント」(2019年)。憧れのロリー・マキロイ(北アイルランド)が使っているという理由だ。こちらは1万円台中盤が相場で、カッパーホワイト、ブルー、ホワイトの3色あり、価格はさほど変わらない。

ショートスラントネックは、ネオマレット型に多いフェースバランスにはならず、適度な重心角がついており、ブレード型に近い感覚でストロークできる。スパイダーXにはフェースバランスになるシングルベントやセンターネックなどのバリエーションもあるので、ストロークタイプによって選ぶことができるのもうれしい。

マキロイは様々なパターをテストするが、気がつけばスパイダーXに戻ってしまう。昨年は「スパイダーX ハイドロブラスト」という米国限定モデルも使用。こちらは中古ではまず見かけない。現在は昨秋発売の最新モデル「スパイダーツアーX」(2023年)のショートスラントネックがエースのようだ。古江彩佳は同モデルのシングルベントを使用している。直営店限定モデルなので中古では見かけない。

変化のある色使いが楽しいスパイダーシリーズ。塗装なので傷が目立ちやすいのが唯一の弱点

初代スパイダーは、ミスヒットに強く直進性が良いパターだった。その後、寛容性があるプロ使用パターとして改良され、人気が続いている。ただし、ヘッドはメッキではなく塗装されているモデルがほとんど。塗装が欠けやすく、時間が経つにつれて程度の良い中古がどんどん減るので購入はお早めに。ヘッドカバーで守り、丁寧に扱うことをオススメする。一度、毒牙にかかると、なかなか離れられない“クモの魅力”を中古で味わって欲しい。(文・田島基晴)

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