【インタビュー】木村多江、映画『コットンテール』は、「悲しみを乗り越えてというよりは、悲しみとともに生きていくということがひとつの小さな希望として描かれている」

リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨という実力派キャストが集い、母の死をきっかけに新たな一歩を踏み出そうとする家族の姿を映し出す映画『コットンテール』。その妻・明子役を演じた木村多江にインタビュー。本作に流れるテーマなどを聞いた。

―リリー・フランキーさんとの共演と言えば『ぐるりのこと。』の夫婦役が思い出されますが、今回再びの夫婦役はいかがだったでしょうか?

実は『一度死んでみた』という映画でワンシーンだけ共演する機会があったのですが、一緒にお芝居をするというよりは、ちょっと離れている感じではあったので、本格的な共演という意味では、本当に『ぐるりのこと。』以来でした。

ただ、やっぱり『ぐるりのこと。』でとても濃密な夫婦の時間を過ごしたせいか、その間のこともあり、よく知っている方でもありますし、久しぶりという感じや緊張も何もなく、すぐに夫婦の空気になりました。そのすごく不思議な感覚は、やっぱり『ぐるりのこと。』があったからだと思うんですね。あの時間があったから何の違和感もなく、もうすでに撮影初日、リハーサルの時から長く夫婦やっているみたいな空気感で本当に不思議でした。

―今回の『コットンテール』の夫婦の姿は、他人事みたいに観られなかったのですが、ご自身でご覧になった印象はいかがでしたか?

この題材自体がわたしたちに起こり得る話でもあって、どういう形にしても人を失うことの苦しみを乗り越えていくことは、誰でも経験することですよね。それは国が違っても普遍的なテーマだと思うのですが、それが今作では描かれていて、日本でたまたま撮影して、たまたま日本の役者がやっているけれども、どこの国でも起こり得る題材だから心を打ちますし、人事とは思えない感覚にみなさんなるのではないかと思って観ていました。

―そのテーマ、作品に込められた意味みたいなことについて、監督とディスカッションなどされましたか?

細かい意味の確認みたいなことはなかったのですが、撮影に入る前にリハーサルをしっかりして、そのリハーサルでその役柄が持っている感情や自分の中のこと、それから監督のプライベートな話など、そういうものがあった上で役柄を作り上げていったので、監督の悲しみや生きてきたことについては、わたしたちがリスペクトして役柄に踏襲している部分はありますし、自分自身を踏襲している部分もありました。監督も台本はあくまでガイドであり、自分がどう感じるか、そこを大事にしてほしいとおっしゃっていたので、わたし自身の経験や、もしもわたしが同じことになったらどうしようという不安など、そういうものを全部役柄に入れていった感じです。

―その未来に起こり得るだろうという想像や、ご自身の経験とは、具体的にはどういうことでしょうか?

わたしの場合は彼女のような症状(認知症)の方はいないのですが、でもやっぱり誰かを失うということ、自分がどうなるかこの先わからないという恐怖、そういうどうなるか分からない不安や恐怖って、人生の中で所々起こっていくことだと思うんですよね。誰かを失った時、たとえば自分の同世代の人が亡くなる、自分より年下の人が亡くなった時、自分より先にそういうことが起こってしまったという悲しみと同時に、自分もそうなる可能性があるという感覚、恐怖。それから自分の親がどうなるだろうということ、そういう実際に自分に付随してきた、生きてきた中で起こったこと、やっぱりそういう気持ちを引き出して役に入れていくことは、すごくあった気がしますね。

―そして、そこから乗り越えていくことは簡単ではないけれど、人生で大切なことが描かれていますよね。

そうですね。人の死と向き合った時、そこを乗り越えるための時間、本当に簡単なことではないけれども、でもそこで亡くなった方から命のバトンを受け取って生きていくということも大事なことですよね。それはわたしたちも今までもしてきたことですし、これからもしていくことだと思うのですが、それが映像として希望に向かっている、生きていくということとして描かれている。悲しみを乗り越えてというよりは、悲しみとともに生きていくということがひとつの小さな希望として描かれていると思うんです。ご覧になる方に同じような状況の方もいらっしゃると思うのですが、その方たちにとってとてもメッセージになるんじゃないかなって思っています。

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