想像力がない夫の不適切発言…出産後、夜泣きの理由が「母親なのにわからないの?」と言われて

夫は、子どもを大切にしてくれるし冷たいわけではない。ただ、発言ピントがいちいちズレているようで気になる。想像力に欠けており、その人の傷つくことをズバリと言ってしまって泣かせてしまうよう。何を考えているのかが分からずストレスがたまる。

人間関係を潤滑に進めるには想像力が必要。そんなことはわかっていると言う人が多いだろうが、実際には妻が「うちの夫は想像力がなさすぎる」と指摘する声もよく聞かれる。なぜ夫は想像力がないのか、働かせようとしないのか。

パパママ教室で「愕然とした」

「5年前、妊娠6カ月くらいのときに地域自治体の『パパママ教室』みたいなところに行ったんですよ。夫が妊婦体験をしたんですが、帰り道、『重くて動きづらかったけど、すぐ慣れるんじゃない? いつもつらい、疲れるって言うきみは大げさだなあ』と笑ったんですよね。 あれは腹が立ちましたね。重いだけじゃない、お腹の中で子どもが想定外で動くんだよ、そもそも妊婦体験は同じ重さを外からつけただけ、私は命を抱えてるのとつい苛立ってしまいました。すると夫は『妊婦は気が短いから怖いわ』と茶化したんです」 その瞬間、この人と本当にうまくやっていけるのか、子どもを一緒に育てていけるのか不安になったとミカさん(40歳)は言った。5年経った今でも、あのときの怒りは昨日のことのように覚えているという。 「そのときは、とても傷ついたと言ったら夫も『ごめん』と一応謝ったけど、夫の想像力のない不適切発言は子どもが生まれてからも続きました。 夜泣きするのも私はしょうがないと思っていた。でも夫は子どもが泣くと『何したの?』って、まるで私が泣かせているように言うんです。あげく、母親なのにわからないのと。『父親なのにわからないでしょ』と言わせたいのかなとまで思いましたよ(笑)」

「きみは育休なんだから」という言い方

母親は万能というわけではない。だが夫は「きみは育休で休んでいるんだから、もうちょっとオレの栄養も考えてほしい」と言い出す始末。まるで育休は「楽している」と言わんばかりだった。そのたびにミカさんは自分の置かれた状況や慣れない育児について話をした。きちんとわかってもらいたかったからだ。夫も「親」なのだから。 「一応、夫は謝るんです。パパママ教室のときと同じように。だけどまた繰り返す。よほど想像力がないのか、とりあえず思ったことは口に出してしまうタイプなのか、いまだによくわからないんです」 子どもが1歳になったころミカさんは職場復帰した。夫も保育園への送り迎えをしているが、どうやら他のママやパパにも想像力に欠けた発言をしていたようだ。 「同じ年だけどうちの子より小さい子を見かけたとき、『ずいぶん、小さいですよね』と言ってしまったそうです。その子のおかあさんは小さいことを気にしていた。そこにズバリと言われたので、その場で泣き出した。さすがに保育士さんに夫は注意されたんですって。 でも夫、そのことを私には言わなかったんです。悪いことを言ったという自覚があったのか、取るに足りないことなのに怒ってるのが不思議だと思ったのか……」 あとからその話を聞いたミカさんが夫をたしなめると、「そういえばそんなこともあったよね」という雰囲気だったそうだ。

不用意で不注意な夫

6年一緒にいても、夫の性格や心理がよくわからないと嘆くミカさん。 「何が違うんだろうとときどき考えるんです。夫も私も、今は子ども最優先、それから仕事という点では一致している。大枠では一致しているのに、細かいところではいろいろ違い過ぎて疲れることが多い。 娘が保育園で友だちから教わったダンスなんかをしていると、夫はやたらと怒るんです。『そんなセクシーなダンスをさせるな』って。まあ、父親だから娘が心配なんでしょうけど、誰から教わったんだと聞いて、その子の親に連絡までするというから止めました。なんだか加減のわからない人なんでしょうかね」 ミカさんから見ると、自分の関心のあることには細かいところまで気にするが、一方で関心をもてないことはスルーしがちだという。夫はあまり「ありがとう」を言わない。だから娘は夫といるとき、誰かに何かもらってもお礼を促されることがない。 「子どもは何度も同じことを言わないといけない。何かもらったりしてもらったりしたとき、親は『ありがとうは?』と促しますよね。夫はそれをしないんです。でもありがとうが言えない子にはしたくない。夫にもそれはきちんと伝えました。 すると夫は『でもさ、心からありがとうって思えることは少ないよね、世の中』ですって。それは大人の判断だから、子どものうちはきちんとお礼くらい言える子のほうがいいんじゃないのと……。どこかピントがずれてるというか」

夫と自分がズレているだけの話なのか

自分もいちいち気にするのがいけないのかもしれないけど、とミカさんは小声で言った。ただ、夫のせいで「最低限の躾もできていない」と思われたくないともつぶやいた。 「夫は私を『世間体ばかり気にしている』と言うんです。でも世間体だけじゃない、私は素直にお礼やお詫びを言える人間でありたいから、子どもにもそれを伝えたいんだよと言ったんですけど、夫の気持ちには届いていない」 考えてみると、年に1度程度しか会わない夫の母親も、ほとんどお礼を言わない人なのだという。会う頻度は低いが、母の日や誕生日にはミカさんがプレゼントを贈っている。それでも「受け取った。ありがとう」と連絡が来たことはない。届いているかどうか確認してと夫に頼み、届いていたよと報告を聞くだけだ。 訪ねるときはお土産をもっていくが、それも「あら、どうも」ですまされてしまう。 「だから夫にとっても、ありがとうという言葉は重要ではないんでしょうね。私にはなんだか腑に落ちない話ですが」 夫が冷たい人間というわけではない。何かが違うのだ。それでも、そんな夫とこれからもつきあっていかなければならない。だから「ストレスたまります」と彼女は苦笑する。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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