9年ぶり復活のSOPHIA「改めて音楽の力を感じています」

結成からわずか1年足らずの1995年にメジャーデビュー。数々のヒット曲を生み出し、デビュー2年弱で「日本武道館」公演を成功させたロックバンド・SOPHIA。その活動は順風満帆に見えたが、2013年の全国ツアーのファイナル(日本武道館公演)をもって活動休止となった。

9年ぶりに復活したSOPHIAのボーカル・松岡充

9年間という長きにわたる休止期間を経て、2022年10月に復活を発表。翌2023年10月には新設されたばかりの神奈川「Kアリーナ横浜」にて、実に18年ぶりとなる伝説のライブシリーズ『獅子に翼』の5回目を敢行し、完全復活。それと同時に、このシリーズを終焉させるに至った。

メンバー、そしてファンもが大事にしてきた、バンドの集大成と位置づける『獅子に翼』シリーズ。それを終わらせて、新生SOPHIAが向かおうとしているのはどこなのか。ボーカル・松岡充に話を訊いた。

写真/バンリ

◆「これで5人が揃わなかったらこの先もない」

──まずは活動再開、おめでとうございます。

ありがとうございます。

──2022年10月の日本武道館公演にてついに復活となったわけですが、やはりこの9年という休止期間は想定以上に長くかかったという感じなのですか?

そうですね。活動休止からあっという間に、5〜6年が経過してしまいました。僕はこの間、SOPHIAのいない留守を守るという意味で、ギターの豊田和貴と一緒にMICHAEL(ミカエル)というバンドで活動を続けていました。ただ、SOPHIAの音楽とともに生きてきてくれたファンに対して、休止と言ったままなにも伝えていない、この状況に危機感を感じていた数年間ではありました。

──当初は数年くらいの休止の予定だったのんですね。

そうですねちゃんとした答えが出せないうちにコロナが蔓延しはじめて。コロナの影響でエンタメの世界もストップしてしまって。でも、こんなときこそアーティストが立ちあがらなあかんやろと。この危機のなか、止まっていたバンドが復活することでなにか状況が変わるかもしれない、疲弊したファンの大きな力になれるかもしれないと思えて。SOPHIAをやるなら今しかないと思い出したんです。

「SOPHIAをやるなら今しかない」と振りかえった松岡充

──それをメンバーに投げかけたんですか?

はい、もう決めようぜって。これでメンバー5人が揃わなかったら、この先もないだろうから、ケジメをつけるべきだと僕は考えていたので。SOPHIAとしてちゃんとライブ会場でファンに報告しようと。そう思って「日本武道館」をまずは松岡個人で押さえたんです。俺はそのつもりやから、一緒にやるなら返事してと。そしたらみんな、やりたいって。で、めでたくオリジナルメンバーで再始動できたという。

──当初は数年の休止のつもりだったのが、なにもしないまま9年が経過していた。それが最初から分かっていたら、休止でなく解散してたかもしれないですね。

そうだったかもしれませんね。とにかく中途半端な宙ぶらりんな状態というのが、僕個人としてもファンにとってもすごく辛い状況だったと思います。なにをもって活動休止になっているのか。ファンに対しては仁義は通そうぜっていうのは、ずっと心にあったので。

◆「不安? めちゃくちゃありました(苦笑)」

──SOPHIAって、大きなプロジェクト発表やライブ会場の決め方なんかを見てると、ちゃんとファンと約束を第一に考えている印象があります。

はい、その信頼関係がないと、深く繋がっていけないと思ってます。生まれた場所も性別も、価値観も生活環境も違う。そんななか、一瞬だったとしてもライブ空間でホントに愛しあえるかどうかなんです、ファンとアーティストって。

僕らはそれを分かってるし、ファンも分かってくれてていると思うから、こんなに長い活動休止となっても復活できて、多くのファンが集まってくれた。こんな幸せなことは稀なことだと思いつつ、とてもファンに恵まれたバンドだなと思ってます。今年で結成30周年ですけど、ファンとの関係性を大切にしてきたというのはありますね。

「ファンとの関係性を大切にしてきた」という松岡充

──とはいえ、9年間という長い休止期間に不安は無かったんですか?

めちゃくちゃありました(苦笑)。それはMICHAELでファンにも伝えていたし、自分の心に正直にそういう楽曲を作ってきました。このMICHAELの活動はいつかSOPHIAが復活するためなんやと、9年間を支えてくれたファンのみんなは分かってくれている。

──結成1年後にメジャーデビューし、ライブもめちゃくちゃたくさんやって、テレビやラジオにも出ながら、新曲も定期的にリリースして、なおかつ新しいことをするためにはどうしたらいいかと、それこそ精力的という言葉では足りないほどだったじゃないですか。この9年という活動休止期間は、客観視する余裕もなかったSOPHIAという存在を見つめ直す時間になったんじゃないですか?

自分たちが見えてなかったことに初めて気がついたのが、実は1回目の活動休止なんですよ。9年間が大きすぎて隠れちゃってるんですけど、都啓一(キーボード)の療養のために2010年に一旦休止したんです。その後、都の頑張りがあり異例のスピードで奇跡の寛解を遂げて、その後は僕はよっしゃ行くぞ!って気持ちだったんですけど、この活動休止のときに、初めて自分の人生を振りかえったと思うんですよ、メンバー全員が。

デビュー後、自分らがなにをやってるかわからなくなるくらい活動がぶっ続けでした。ライブ、プロモーション、レギュラー番組、楽曲制作というのをずーっと続けていて。とても幸運なことなんですが5人揃っての活動を続けることができていたところに、初めて「俺の人生」というのを考えさせられる時間だったと思うんですよ。1回目の休止から復活したあと、メンバーぞれぞれの温度感が変わったのは確かにありましたね。

そういう意味でいうと、9年間の休止というのは自然発生的なストップだったかもしれない。だから活動休止前の体制とは僕もまったく違って、やらなあかんとか、こうせなとかまったくなくて。それはメンバーに直接言ってます、自分のことをいちばんに考えて欲しいって。

SOPHIA『あなたが毎日直面している 世界の憂鬱』

──そんな過程を経て活動を再開させたSOPHIAですが、集大成と位置づけている『獅子に翼』シリーズを終わらせたじゃないですか。やはりそれは、新生SOPHIAとして次にステップに、ということなんですか?

そうですね。『獅子に翼』を終わらせたのは、結成してから走り続けたSOPHIAの活動のなかで、なにか自分たちが得たもの、見えた景色は十二分にあったかなと。それに、復活したからといって、大切にやってきた活動がただ単にリバイバルになるのはイヤだったんですよ。昔の活動を焼き直しして、懐かしがるような。だから『獅子に翼』を終わらせて、メンバーとファンの新しい関係性を構築しようと。

◆「改めて、音楽の力を感じています」

──その新しい一歩となるのが、バンドとオーケストラで作り上げる一夜限りのスペシャルコンサート『SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール』(3月10日)ということですか。

そうです。このライブはバンド結成30周年の第1弾の記念すべき活動になるので、気合の入れようが違います。SOPHIAのバックでオーケストラが華やかに色付けしますというではないんです。SOPHIAのメンバーが5人から35人に変わるくらいと言ってもいいぐらい。今、僕と都、マエストロ西山さんの3人が中心となって、SOPHIAの楽曲を丁寧に分解して、まったく新しい作品にしようと。

「このライブは気合の入れようが違います」と松岡充

──このコンサートでは、今までとは違うSOPHIAが見られると。

まったく違う。とは言え、オリジナルが最高でベストだと思うんです。それは僕にとってじゃなく、ファンにとって。僕らが若い頃に作った楽曲だから、音楽的にはもしかしたら稚拙に聞こえたり、荒っぽく感じられるかもしれない。でも、それはそれで当時の正解だったわけで。

それに心を震わせて時間を共有してくれたファンがいて、今もなお支えてくれている。そんな思い入れの深い楽曲たちをオーケストラを交えてただ再編するんじゃないんです。百戦錬磨の音楽家たちの力を借りて、まったく違う料理になりますという勢いです。今、デモ作りをしてますが、実際の演奏ではないデモの段階で、それを聴いて自然と涙が流れるくらい。改めて、音楽の力を感じています。

──そのなかで新しい発見や気付き、そういうのが新鮮な音楽を制作していく上でありますか?

めちゃくちゃありますね。僕らだけじゃできなかったし。マエストロのアレンジを筆頭に、このシンフォニック・オーケストラの方々の力をすごく感じています。

「SOPHIA Premium Symphonic Night in ⼤阪城ホール」

──ちなみにシンフォニック・オーケストラとの共演は、飲酒運転の撲滅を誓うライブ『LIVE SDD 2023』(大阪城ホール)で、1曲だけやってるんですよね?

そのときは、リハーサルも軽く1回あったくらいで、そこまで密接に交わったという感じでなく。でも今回は、もう境界線が分からないくらい、オーケストラとSOPHIAという関係性を超えて、もはや僕ら5人とオーケストラが合わさってSOPHIAというひとつの集合体になってる、そんな感覚です。

──それは楽しみですね。実は『獅子に翼』の開催発表の会見で、松岡さんから「リボーン」という言葉があったんです。でも、今回のオーケストラとのコラボを含めて、「リボーン」というより「リバース」くらい新しいところにSOPHIAをもっていこうとしているのかなと感じたんです。

デモの段階で泣けるってこれまでにない感覚です。音楽って、やっぱり琴線に触れるんです。その可能性をオーディエンスにも共有してもらえるライブになると思います。SOPHIAの新たなスタートに相応しい1日です。たった1日しかないというのがまた儚くて、そういうとこも好きなんですけどね。

そうですね。このプロジェクトをリスタートの第一歩としてできるのは感謝しかないですよね。なんか、計算してるってよく言われるんですよ、SOPHIAって。活動の進め方とか、ほんまに計算してないですからね(笑)。

──いや、松岡さんの言動を見てると、相当緻密な計算をもって進めてる印象はあります(笑)。

なんか策士みたいって言われますけど、まったくですよ。ファンとの信頼関係、人との繋がりを大切にしてきて、それだけでここまで続けられたと思ってます。それはホンマに自慢できます。

『SOPHIA Premium Symphonic Night in ⼤阪城ホール』

出演:SOPHIA、The Symphonic Orchestra
日時:2024年3月10日(日)・17:00〜
会場:大阪城ホール(大阪市中央区大阪城3-1)
料金:9900円(指定席)

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