岡山 128宗教法人が「不活動」 脱税など悪用の恐れ 県が実態把握

岡山県庁

 岡山県内の宗教法人のうち活動実態が不明な「不活動宗教法人」が128法人に上ることが1日、県への取材で分かった。不活動宗教法人は脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)といった不正に悪用される恐れが指摘され、文化庁が昨年3月、対応を強化するよう都道府県に通知。県は裁判所への解散命令請求も視野に、詳細な実態の把握に乗り出す方針だ。

 宗教法人はお布施やお守り販売の収益が非課税になるといった税制上の優遇措置が受けられる一方、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金問題もあって、その在り方に厳しい視線が注がれている。

 今回、文化庁による対応強化の契機の一つとなったのは、休眠状態にあった宗教法人を巡る2013年の脱税事件。各地でセミナーを開いていた福岡県の会社がこの法人の代表権を購入し、セミナーの受講料を寄付金として法人口座に振り込ませて納税を免れていたことが判明した。その後も不活動宗教法人が悪用されるケースが後を絶たないという。

 岡山県によると、県が所管する宗教法人は3628法人。各法人は宗教法人法に基づき役員名簿や土地、建物の財産目録などを年に1度、県に提出する必要があるが、昨年12月末時点で3.5%に当たる128の法人が提出していなかった。いずれも連絡が取れなかったり督促に応じなかったりで実態がつかめず、県は「不活動」と判断した。

 実態把握に向けて県は24年度から、所管する総務学事課の体制を強化し、法人施設への現地調査や周辺の聞き取りを進める予定。文化庁は宗教活動が1年以上行われていないなどの実態が判明すれば裁判所への解散命令請求の対象になるとの基準を示しており、県は調査や聞き取りの結果を踏まえて対応を検討する。

 県総務学事課は「より詳細な実態把握を進めるとともに、法令に基づいて適正に対応していきたい」としている。

厳正に対応を

 宗教法人の実情に詳しい河田英正弁護士(岡山弁護士会)の話 不活動となり放置された宗教法人は反社会的勢力などが入り込むリスクがあり、所管する自治体には宗教法人法に基づく厳正な対応が求められる。その一方、解散命令は憲法が保障する「信教の自由」の侵害につながりかねないだけに、自治体による正確な実態の把握が何よりも重要となる。国も予算や人員面でバックアップすべきだ。

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