老齢年金を繰下げした場合も、受給額は毎年変わるのですか?

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、繰下げした場合の年金受給額について、年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。 今回は、繰下げした場合の年金受給額についてです。

Q:老齢年金を繰下げした場合も、受給額は毎年変わるのですか?

「私は老齢厚生年金の繰下げ受給を考えています。65歳からもらえる老齢厚生年金を2年間、繰下げた場合、増額率は、いつ時点の年金額に掛ければいいのでしょうか? また、老齢基礎年金は、毎年、受給額が変わるそうですが、繰下げた老齢基礎年金の金額も増えたり減ったりするのでしょうか? 同じように、老齢厚生年金も、繰下げすると毎年、増えたり減ったりするのでしょうか? もしくは65歳時点の老齢基礎年金額に増額率を掛けて増額した年金額は一生涯、変わらないんでしょうか?」(匿名希望)

A:老齢年金の金額は毎年、物価水準や賃金水準、経済マクロスライドにより見直しされます。繰下げ受給している場合も、毎年の老齢年金額には増減があります

結論からいうと、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の金額は繰下げた場合も、毎年増減があります。老齢基礎年金の金額は毎年4月に、物価水準や賃金水準、経済マクロスライドにより見直しされます。 老齢厚生年金の金額についても、老齢基礎年金同様に、物価水準や賃金水準、経済マクロスライド、その人の厚生年金加入記録をもとにした平均標準報酬額から計算することになり、毎年4月に見直しがされるのです。 老齢年金を繰下げ受給をした場合の加算額は、老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に下記の増額率を乗じることにより計算します。 増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数 老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)を繰下げした場合も、毎年4月に見直しされた年金額が適用されることになります。 老齢基礎年金を繰下げした場合…… 「4月に見直しされた老齢基礎年金」×65歳からの繰下げ月数×繰下げ率0.7% 老齢厚生年金を繰下げした場合…… 「4月に見直しされた平均標準報酬額から計算された老齢厚生年金額」×65歳からの繰下げ月数×繰下げ率0.7% 例えば、65歳から老齢厚生年金を受け取れる人が、24カ月繰下げ、67歳0カ月で受給した場合で考えてみます。 「4月に見直しされた平均標準報酬額から計算された老齢厚生年金額」に16.8%(0.7%×24カ月)の増額がつきます。増額率は1カ月0.7%と一定ですが、乗じる年金額は毎年4月の年金額改定後の額となりますので、67歳0カ月で受け取れる年金額と、次の4月になり年金額が改定した後(68歳に達してから)に受け取れる金額は変わることになります。 文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士) 銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。 (文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))

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