「老老介護」で苦しい…利用者だけでなく、家族にも笑顔を届けたい ニーズ高まる「訪問看護」 TikTokで発信続けるワケとは?

看護師などが自宅を訪問し、病気や障害のある人のケアを行う「訪問看護」。
高齢者の増加や、「最期まで家族と自宅で過ごしたい」といったニーズから、年々需要が高まっています。
こうしたなか、鳥取県米子市の訪問看護ステーションが、今TikTokで人気を集めています。
SNSで発信を続ける理由とは?

TikTok動画
「おいしい~何年振り羊羹なんていつ食べたんだろう」

おばあちゃんがおいしそうに羊羹を丸かじりする動画。
動画共有アプリ・TikTokに投稿されたもので、475万回以上再生される人気となっています。(※1月23日時点)

動画を投稿しているのは、鳥取県米子市にある「楽訪問看護ステーション」。
動画に登場するおばあちゃんは、このステーションの利用者です。

看護師や理学療法士が自宅に訪問し、病気や障害のある人などに必要なケアを提供する「訪問看護」。
楽訪問看護ステーションでは、24時間365日体制で利用者のサポートにあたっています。

楽訪問看護ステーション 岡由里香 代表(看護師)
「人生において“楽しい”とか、“身体や心が楽”であるというのが、本当に私は大事だと思っていて、どんなにつらい中でも楽しく生きられるように関わっていく、という思いで名前をつけました」

「楽」という名前の通り、ケアの間も笑い声が絶えず楽しそうな様子です。

岡さん
「おばあちゃん、アンパンのことをアンパンマンって覚えてるんです。アンパンマン食べたいねえ」
おばあちゃん
「はい!羊羹もたべたい!甘いもの大好き!」

取材させていただいたこの日も、おばあちゃんのおしゃべりは絶好調です。

楽訪問看護ステーションが動画を投稿し始めたきっかけは、意外なところにありました。

楽訪問看護ステーション 岡由里香 代表(看護師)
「きっかけは、“老老介護”です」

老老介護。
介護をする側と受ける側どちらもが高齢者である状況のことをさします。
おばあちゃんと共に暮らす娘さんも70代、先の見えない介護に疲弊しきっていました。

楽訪問看護ステーション 岡由里香 代表(看護師)
「人って認められないと頑張れない、私たちが言葉をかけるよりも、もっとたくさんの人の言葉がけが必要かなと思ったんです。それで、SNSの発信してもいいですかって聞いて許可を得て、発信するようになりました。そしたら思った以上に反響があって…」

TikTokに寄せられたコメント
「素敵な家族でおばあちゃん幸せだね」
「私も幸せな気分になりました。こういう投稿またよろしくお願いします」

時には批判的なコメントもありますが、多くの励ましの言葉や動画を楽しんでくれる人の存在が、家族の心の支えにもなっているといいます。

楽訪問看護ステーション 岡由里香 代表(看護師)
「ご家族も、今では気持ちが切り替わって『よし。もっと頑張って介護しよう』って思うようになったと言ってくださって。ありがたいですね。」

利用者だけではなく、その家族の心の負担や不安な気持ちにも寄り添った看護を。
そんな楽の存在に救われているという家族は、ほかにもいます。

「楽」を利用する女性の娘(76)
「これから母を見ていくのをどうしようっていう不安がすっかりなくなりました。なんでもお願いしますって感じで。」

こう話すのは、1月はじめから楽の訪問看護を利用するようになった女性。
98歳の母親の足に床ずれができ病院を受診したところ、楽訪問看護ステーションを紹介されました。

「楽」を利用する女性の娘(76)
「お世話は私たちにできないことで、専門的なことだからすごいなと思うんですけど、それ以上にこの人間関係がすごく気持ちよくて。母だけでなく、私たちまで楽しさをいただいているんですよね」

身体の不自由な母を連れ、毎日のように通院することを考えるととても気が重かったという女性。
楽の訪問看護に出会って救われたと言います。

明るく楽しい楽のスタッフとの関わりを通して98歳の母親にも変化が…。

「楽」を利用する女性の娘(76)
「母が緊張するようだったら黙りっこくなるんです。それが、本当におしゃべりになってきて。
楽さんって幸せの運び人なんだなっていう風に感謝してます」

一人一人に丁寧に向き合うこと、自分たちもワクワクしながら働くこと。
そんなスタッフの思いが、みんなに幸せを運んでいます。

楽訪問看護ステーション 岡由里香 代表(看護師)
「とにかく山陰で訪問看護ステーション、楽っていう名前を皆さんに知ってもらえるように日々丁寧に行っていけたらなと思ってます」

訪問看護についてもっと多くの人に知ってほしい。
一人でも多くの人に「楽」を届けたい。
幸せの運び人は、きょうも米子の町で奮闘しています。

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