15年分溜まりに溜まったiPhoneの写真を振り返って気づいた「撮りたいもの・見せたいもの」の変化

リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。

第14回は先日開催されていた『ProLight&ProVisual2024』を訪れてテンションが上がっている三沢がお届けします。思わず動画と写真をパシャパシャ撮りたくなる展示ばかりで、あちこち目移りしながら歩き回っていました。

さて、つい先日漫画家の大童澄瞳さんが投稿したある内容が編集部内で話題になっていました。

「最近の漫画はスマホやコンデジを参考にしているからか広角が多い」という大童さんに対して、同じく漫画家の浅野いにおさんが「広角なのも“その世代の表現”」と返したと、そんな内容です。大童さんもこれには納得の意を示しており、ポストを見た自分も「たしかに」と思わされました。

ところで、筆者はiPhoneのバックアップをかれこれ15年間一度も消さずに来た人間です。自撮りもほぼしないし、そもそも写真をそこまで多く撮る方ではなかったので枚数としては人並み以下なのですが、初めて購入した『iPhone 3G』の頃からずーっと残っています。今回の投稿を見て「自分の写真から“世代の表現”って見つけられるかな?」と気になったわけです。

というわけで、今回は“古のフォトライブラリ”を少しばかり振り返っていきたいと思います。覚えている限り機種名も載せたいと思います。あらかじめお断りしておきますが、当時の筆者は写真に詳しかったわけでもなく、ブレ・ボケ上等な写真ばかりなので温かい目で見ていただければ幸いです。

■コピペもできなかった『iPhone 3G』 謎の加工アプリで“エモ”を求める

まずは国内では初めて発売された『iPhone 3G』から。古くからiPhoneをお使いの方であればご存じかと思いますが、当時の「iPhone OS 2」はコピペができないという致命的な欠点があったのを今でも覚えています。……その後登場した「iPhone OS 3」でコピペができる! と大騒ぎしたことも(笑)。

この頃に撮った写真を見てみると……。

たまたま撮った写真ですが、同級生はまだガラケーを使っている時代です。2枚目はモノクロ加工でそれっぽい雰囲気を出そうとしています。当時改装されたばかりの登戸駅です。

そしてこの加工である。高校生(当時)らしく、エモを追い求めています。でもこれ、いま見てもそんなに悪くないですね。

■『iPhone 4』は少し画質がマシに ミニチュア風の加工にチャレンジする

『iPhone 3G』が限界を迎える前に、『iPhone 4』が出てくれました。当時一番うれしかったのはメモリが増えたことでした。マルチタスク機能が使えるようになってmixiとTwitter(当時)を行ったり来たりできたんですよね。

この当時、話題になったのが「ミニチュア風の加工」。たしかTwitter(当時)で見て試したハズ。写真の上下にブラーをかけることでそれっぽくなるということで、何枚かトライした記憶があります。

あらためて写真を見返してみると、やはり現在の機種と比べて画質が粗いです。フィルム風やミニチュア風の加工をするのは、そうした中で少しでも綺麗な写真に見せたいという欲求のあらわれだったんでしょうか。

■少しづつノーマルが増えた『iPhone 5』 相変わらず暗所は苦手

『iPhone 5』の思い出といえば、「4G LTE」サービスが開始されたことでしょうか。いち早く手に入れたいがために深夜からApple銀座に並んだことを覚えています。「乗るしかない、このビッグウェーブに」という言葉が記憶に新しい時代。ちなみにこのときはライターの白石(倖介)さんと一緒に並んでいました。

このころから少しずつノーマル(無加工)の写真が増えています。明るいところであれば十分にキレイな写真が撮れることも理由だと思います。ただ、『iPhone 5』はまだ夜間の写真を苦手としていますね。

■『iPhone 6 Plus』は“動画で残す”ことが増え、夜の撮影もかなりマシに

『iPhone 6 Plus』の世代になると「タイムラプス」「スローモーション」といった動画が撮影できるようになったり、夜の撮影もかなりマシな仕上がりになっていたり少しづつカメラ性能が進化しています。

そのおかげで夜景やイルミネーションなど、暗所で写真を撮ることが増えていました。プロジェクションマッピングもかなりキレイに撮れています。

『iPhone 5』ではダメダメだった暗所のローストビーフも、『iPhone 6 Plus』ではそれなりに撮れています。なぜかローストビーフが比較用の写真になるというのも変なハナシですが……。

■スられた『iPhone 7Plus』の悲劇と『iPhone X』の衝撃

いまでも悲しいし悔しいんですが、筆者は海外旅行先で買ったばかりの『iPhone 7 Plus』をスられています。そのせいで一切写真が残っておらず、しかも『iPhone 7 Plus』はカメラ性能がかなり向上した機種なのに何も残っていないという……。悲しい事件でした。

幸いクレジットカードに付帯していた海外旅行保険を利用することで事なきを得たのですが、あまりに悔しすぎて次の機種まで『iPhone 6 Plus』を使い回すことに。ということで一気に『iPhone X』まで飛ばします。

『iPhone X』くらいになると流石にカメラがかなり進化しています。めちゃくちゃキレイです。このあたりからカメラや写真に詳しくないiPhoneユーザーの間でも被写界深度、ボケ感を意識する人が増えたんじゃないでしょうか。ライブラリを見ていて食べ物の写真ばっかり増えてるのがウケました。

■そして「広角」が増える『iPhone 11 Pro』、『iPhone 14 Pro』へ

そんなこんなで振り返ってきましたが、ここで冒頭で述べた「広角」が登場します。明らかに画角が広く、たとえば自分の腰から下を歩きながら写す……なんてのは広角ならでは。スクランブル交差点の信号待ちをしながら「QFRONT」(TSUTAYAなどが入っていたビル)をまるっと収められます。

それから、景色やその場の雰囲気を撮りたいときは広角レンズを多用するようになった気がします。後から切り取れるから、なるべく多くの要素を写しておきたいから……そんな欲求に従って。

「その場の雰囲気も含めて、より多くの情報量を写真に残したい」というのは、今の世代(のiPhoneユーザー)にもきっと広がっているのでしょう。そして、その意味では空間の情報すらも残しておける「空間ビデオ」の登場は必然だったのかもしれません。これからの「世代の表現」がどのようなものになるのか、今から楽しみです。

(文=三沢光汰)

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