今週、大きな注目を浴びたのは、今年8月に開業予定のコストコ沖縄南城倉庫店でオープニングスタッフの募集が始まったというニュース。記事の見出しは「時給は1500円以上 破格の待遇、沖縄の雇用市場に影響も」としましたが、これに対して、SNS上では「果たして時給1500円は破格の待遇なのか」と疑問が噴出しました。
グローバル企業「コストコ」の時給は、首都圏でも、沖縄でも、日本全国一律の1500円スタート。パートタイムの場合、残業は1分単位でカウントし、時給の1.35倍(時給1500円なら2025円に)の賃金が支払われるそうです。
沖縄の求人平均時給は「965円」
一方で、沖縄県内の最低時給は「896円」。
県内最大級の求人情報誌・サイト「Agre(アグレ)」に2022年4月〜2023年3月に掲載された求人(全業種、9万148件)の平均時給は「965円」。時給1500円以上の求人は全体の2%のみでした。そんなデータを踏まえると、確かに時給1500円は「破格」といえるかもしれません。
「健康で文化的な最低限度の生活」
ですが、目線を変えると、また違った景色が見えてきます。
時給1500円のパートタイムとして、コストコ求人票の上限(週40時間、週5日勤務で1日8時間)で月20日働いたとします。税金などを差し引くと、手取りは月に20万円余り。物価が高騰する県内で、憲法25条に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むにはぎりぎりの額です。
県内の他企業との比較ではなく、「憲法」や「生活」に軸点を移すと、確かに時給1500円を「破格」とはいえません。改めて、言葉を使うことの難しさ、多様な視点から記事を書くことの大切さを痛感しました。
あれもこれも値上がりで…
島しょ県・沖縄の物価は近年、全国を上回る伸び率で上昇しています。
今週も、琉球・那覇バスが16年ぶりに運賃を値上げするというニュースが飛び込んだばかり。全国では、4日から「セブンカフェ ホットコーヒーR」「セブンカフェ アイスコーヒーR」の価格が110円→120円に上がる、という発表がありました。物価変動を考慮した2023年の県内実質賃金は、前年比5.5%減となり、2005年以降で最大の落ち込みです。
昨年、県内エリア別で「900人の麺好きが選ぶ! うまい沖縄そば」の記事を用意した時も、取り上げたほとんどの沖縄そば店で値上げを余儀なくされていました。私の行きつけの沖縄そば屋さん(那覇市内)も、ここ10年で、そばとじゅーしーセットが550円→1000円に上がりました(涙)。原材料費や人件費の高騰分を価格転嫁しづらい飲食店の厳しい事情は重々分かりつつも、いち生活者の立場としてはなかなか世知辛いものがありますよね。
広がる助けあいの輪、思いやりリレー
賃金は上がらないのに、物価は上がる。そんな中で、今年もいろいろと物入りになる春がやってきました。家計を節約したい方、子どもの卒業や成長で着終えた制服を役立てたい方、近くのリユース店に足を運んでみませんか?
沖縄タイムスデジタル版では、助け合いの輪が広がる「制服リユース店」の最新情報を紹介しています。眺めているだけでも、ほんわか、温かな気持ちになります。ぜひ、ご覧ください。
今週のデジ編チョイスは篠原知恵が担当しました。それではみなさま、また来週!