良好な人間関係が築けるだけではない…「お裾分け」がもたらす、もう一つの〈よい影響〉とは

(※写真はイメージです/PIXTA)

「たくさんもらったからどうぞ」「作りすぎちゃったからどうぞ」と、友人や知人に何かの「お裾分け」をすることも、またはされることもあるでしょう。この「お裾分け」の行為には、2つの良い作用がある、と作家の有川真由美さんは言います。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、詳しく見ていきましょう。

ゆたかな人は、愚痴や悪口を言わない

お金の余裕があって、幸せに暮らしている、いわゆる“ゆたかな人”から、愚痴や悪口を聞くことは滅多にありません。

その反対で、お金の余裕がなく、不幸せそうな人は、「どうして会社はなにもしれくれないのか」「どうしてあの人はダメなのか」と、似たような立場の人と集まって愚痴や悪口を言い合っていることが多いもの。たまのストレス解消としては有効な手段ですが、それが習慣になっていては進歩もないでしょう。

ゆたかな人は、恵まれているから、愚痴を言わないのではありません。愚痴や悪口を言わない習慣があるから、経済的にも精神的にも、ゆたかになれるのです。

「今日は〇〇ができて嬉しかった」「明日は△△があるから楽しい」など、つねに楽しいこと、嬉しいことなど明るい言葉を使う習慣があります。

とくに不遇な状態のときに、どんな言葉を使って、どんな行動をとるかが、ゆたかさを決める分かれ目。そんなときこそ、明るく前向きな言葉を使おうとする人は、“生きる筋力”がついて、その場から抜け出し、成長していけるのです。

自分の性格をポジティブに変えるのは、時間とエネルギーがいります。

しかし、言葉を変えるのは簡単。試しに「どうして?」と言いたくなるところを、「どうしたら?」と言い換えてみるといいでしょう。

たとえば「どうして給料が上がらないのか」を「どうしたら給料が上がるのか」と言い換える。すると「昇進に挑戦する?」「転職する?」「副業する?」とさまざまな手段を考えるようになります。

自分の口から出る言葉を明るく前向きなものにするだけで、これまでと違う自分になることも可能なのです。

商売も“聞き上手”のほうが成功する

ユダヤの諺に「神が人間に二つの耳と一つの舌を与えたのは、話すよりも聞くことを重視したからである」というものがあります。

人に溶け込めない人はよく「私は口下手で……」なんて言いますが、コミュニケーションが得意な人は大抵、人の話に興味をもって楽しそうに聞いている印象です。

仕事がデキる人も“話し上手”より“聞き上手”。たとえば、営業でありったけの知識をペラペラとしゃべりまくる人より、お客様の話をしっかり聞いて、その人に合った商品やサービスを薦めてくれる人のほうが信頼されるでしょう。

相手の話を聞くメリットは、印象がいい、情報が入ってくる、学びがあるなどいろいろありますが、いちばんは“観察力”が養われて相手を理解できるようになること。「この人はどんな人?」と話に耳を傾けるスタンスでいると、言葉だけでなく、表情、目の動き、声のトーン、動作、クセ、雰囲気など“観察”する習慣が生まれます。

「相手の求めるものを、相手が求めるときに提供する」は“商売”の基本です。

初対面でも、雑談をするときも、まず相手の話を聞くことから始めてみましょう。

ほんとうの“聞き上手”は、ただ話を聞くだけでなく、「えーー! 面白いですね!」と“感動上手”であり、「どうしてそう思ったんですか?」など“質問上手”。相手が気持ちよく話せるように合いの手を入れたり、引き出したりするのです。

自分のことを伝えるときも、相手の話に乗っかって「じつは私も〇〇が好きです」「それなら、いい情報がありますよ」などと話すとよく聞いてもらえます。

自分の話を聞いてくれた相手の話は、ちゃんと聞こうとする態勢になるのです。

「口を閉じるほど、自分の話を聞いてもらえる」という諺も納得するはずです。

“お裾分け”の持つ「すごい効果」とは?

季節の果物をたくさんもらったり、お漬物を大量に作ったり、旅先でめずらしいお菓子をいろいろ買ってきたりしたら、近くに住む友人たちに“お裾分け”をします。

お裾分けはわざわざ用意したり、おもてなしをしたりする必要がないので、気がラク。「ついでに人にも喜んでもらおう」というだけで、お返しを期待していないけれど、友人たちもなにかあったときにもってきてくれます。「煮物をいっぱい作ったから食べて」「お中元で大量にもらった洗剤、いる?」という具合に。

そんなちょっとしたやさしさは身に染みるもの。お惣菜をもらったときは、容器にお菓子を入れて返したり、こちらのお中元もお裾分けしたりしていると、自然に関係が深まって“生活互助会”のような感覚になってきます。

職場でも「実家から田舎のお菓子を送ってきたので食べて」「じゃあ、お返しに……」と分け合うことがあれば、相手の背景も垣間見えて距離がぐっと縮まるもの。言葉だけではなく物を交換すると、不思議と安心感も生まれるのです。

お裾分けには、人間関係を深める効果のほかに、もうひとつ意味があります。

お金を遣わなくても、お裾分けや物々交換で「物を手に入れられる」という原始的な経済活動が、お金の不安を多少なりとも払拭してくれるように思うのです。

田舎に移住したとき、毎日、ご近所さんから食べ切れないほどの野菜や果物をいただいたものでした。なにかと家に出入りする人がいると、「蚊取り線香が必要だね。家にたくさんあるから、もってくるよ」「どくだみで作った虫刺され薬もあげる」と、生活用品がそろうので、当時はお金をまったく遣わない日が続いていました。

都会では「ゼロ円生活」はムリでも、ときどき物々交換をして貨幣経済から少しだけ解放されると、心がふっとラクになります。お裾分けの習慣は、お金の不安を軽くしてくれる一助になるはずです。

有川 真由美
作家

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