祝・卒業

 「みんなのお母さんと同じぐらいの年齢かな」-2年前の入学式。おずおずと自己紹介した彼女に、同級生から衝撃のひと言が飛んできた。「ヨシムラさん、ウチのおばあちゃんと同い年っす」▲長崎市の吉村愛さんが医療従事者の道を志すきっかけになったのは、看護助手として働いていた長崎大学病院の病棟で「とてもカッコいい看護師さん」に出会ったことだ。そういえば看護師になりたかった時期もあったなあ。気持ちに火がついた▲何で? 何を今さら。家族の反対に遭っても、ハートの炎がなかなか消えない。1年後-やっぱり学校行きたい。57歳の春、長崎市医師会看護学校准看護科の学生になった▲もちろん簡単な挑戦ではなかった。プリントの文字ってなんでこんなに小さいの。〈点滴の滴下数を数えましょう〉…うわ、見えん。「実習では患者さんから年齢を聞かれてばかり」-苦難の日々を振り返る口調が、しかし明るく弾む▲28人の同級生とともにきょう看護学校の卒業式に臨む。「成績優秀者」として表彰してもらえるのだという。そう“昭和の子”には根性が(※個人の感想です)▲「働ける残り時間は決して長くないから、しっかり患者さんに寄り添いたい」。秋の誕生日で60歳の遅咲きルーキーはデビューの日を心待ちにしている。(智)

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