「専業主婦はもらえる年金が少ないかもよ」と言われました。実際どうなのでしょうか?

専業主婦がもらえるのは国民年金

日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建て構造となっています。働き方などによって加入する年金が図表1のように異なり、専業主婦は国民年金の加入対象です。

【図表1】

日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」より筆者作成

国民年金は職業や所得別に被保険者区分が図表2のように分類され、そのうち専業主婦は第3号被保険者に該当します。

【図表2】

日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」より筆者作成

第3号被保険者の国民年金保険料は、第2号被保険者が加入する年金制度によって負担します。第3号被保険者の加入する年金制度が国民年金ですが、毎月の保険料を自分で払い込む必要はありません。

専業主婦がもらえる年金額はどのくらい?

専業主婦がもらえる国民年金は、保険料の納付期間に応じて決まります。令和5年度分の国民年金の満額は年79万5000円(月額6万6250円×12ヶ月分)となり、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)、国民年金保険料を欠かさず納付した場合にもらえる金額です。

それに対し、国民年金保険料を納付できなかった期間がある場合は「79万5000円×(納付月数÷480ヶ月)」にて、もらえる年金額を計算します。

なお、厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の厚生年金の平均受給額は、65歳以上の男性は16万7388円、65歳以上の女性は10万9165円です。厚生年金と比べて、専業主婦がもらえる年金額は少ないと認識してよいでしょう。

老後資金が用意できない場合は繰上げ受給も可能

年金は、原則として65歳から受け取れます。ただし、配偶者の退職などを理由に老後資金を用意できない場合には、年金の繰上げ受給によって60~64歳11ヶ月までの間に前倒して受け取ることも可能です。

ただし、年金の受取開始時期を1ヶ月繰上げるごとに0.4%(最大24.0%)の減額率が適用され、年金額が減ることを避けられない点に注意してください。

専業主婦がもらえる年金額を増やす方法

専業主婦は、会社員などの厚生年金に加入する第2号被保険者と比べてもらえる年金額は少ないですが、以下の方法によって増やすことは可能です。

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・追納制度
・繰下げ受給
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それぞれの内容を解説しますので、どの方法が効率よく年金額を増やせるか検討する際に役立ててください。

追納制度

「保険料の免除・納付猶予を受けたことがある」「学生納付特例の承認を受けた期間がある」などの理由で、国民年金保険料の未納期間がある方は、追納制度によって年金額を増やすことが可能です。

ただし、追納をする際には、以下のように追納が可能な期間などが限られている点に注意してください。

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・追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限る
・保険料の免除や納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に追納する場合、承認を受けた時点の保険料額に対して経過期間に応じた加算額が上乗せされる
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繰下げ受給

原則として65歳から受け取れる国民年金ですが、貯金や配偶者の就労収入などで老後資金をまかなえる場合には、年金の繰下げ受給で年金額を増やすことを検討してもよいでしょう。

年金の繰下げ受給とは、年金を65歳から受け取らずに66歳以降75歳までに遅らせる制度です。年金の受取開始時期を1ヶ月繰下げた場合の増額率は0.7%となり、最大84.0%まで増額できます。適用された増額率は一生涯適用されるため、年金を効率よく増やすのに適した方法です。

もらえる年金額を理解して老後資金の計画を立てよう

専業主婦が加入する年金は国民年金となり、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)で未納がない場合、受け取れるのは年額79万5000円(令和5年度分、月額6万6250円×12ヶ月分)です。

なお、ねんきんネットやねんきん定期便などからも将来的に受け取れる年金額の目安を確認できます。もらえる年金額を理解し、老後資金を増やしたいと考えたら、追納制度や繰下げ受給に加えて、iDeCoやつみたてNISA、貯蓄型保険などの適切な対策で増やすことを検討してみてください。

出典

日本年金機構 た行 第3号被保険者
日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
厚生労働省年金局 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 年金の繰下げ受給

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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