【後編】82歳 ガーデナー 長塚のり子さんの楽しい暮らし。「視点を変えれば、“不便”は“富”のひとつ」

「のり子は模様替えがすごくうまい。テーブルは普通、壁に対して直角に置くでしょ?うちは45度なんだよ(笑)。でもこういう発想がいい。気分変わっていいんだよ」と、誠志さん。テーブルは誠志さんの手づくり。

日々を明るく照らしてくれる小さな楽しみや、心を潤すための暮らしの工夫は、幸せを感じさせてくれます。そんな暮らしを営み、わたしらしく、今を生きる女性を紹介する『60代からの小さくて明るい暮らし』(主婦の友社)から、ガーデナー 長塚のり子さんの後編をお届けします。

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PROFILE
ガーデナー
長塚のり子さん(82歳)
静岡県在住。夫婦ふたり暮らし
神奈川県出身。プレスやショップの店長等さまざまな仕事を経験。夫・誠志さんとともに27年前に静岡県へ移住。現在の住まいは、8年前に新築した戸建て。日々ガーデニングに励みつつ、年に数回、自宅の多目的ルームを開放し、仲間内で楽しむためのイベントの開催も。

気の置けない人たちとの出会いで人生の楽しさが何倍にも

独学で一から始めたリースづくりは、気づけばワークショップを開催するほどの腕前に。多目的ルームを開放しての音楽会や古代文字のレッスンの際には、家具のレイアウトを考えたり、テーブルコーディネートを工夫したりと、のり子さんの“得意なこと”が暮らしの中で花開いています。

「やっていること自体はひとつひとつバラバラ。でも歳とってくると、それが全部まとまる。やっといてよかったって思えるようになるんだよ」と、部屋をぐるりと見回す誠志さん。

なお、この日は12月に開催する音楽会に向けて、巨大なリースができ上がりつつありました。イベントの際は、毎回、1ヵ月くらい前から用意を始めるそうで、それが今の暮らしの楽しみに。

「ふたりだけで楽しんでいればいいとなったら、きっとここまでやらないと思うんです。人様が来てくれることがエネルギーになるんですよね」

とはいえ、がんばりすぎると何事も続かないので、料理は持ち寄り式に。普段の来客の際も、知人の場合はゲストとホストをあえて区別せず、“それぞれが自分のできることをしながら、その場を楽しく共有する”というのが、長塚家のルールです。

「なかでもうちに来るたびに、庭掃除や薪割りなどをして暮らしをサポートしてくれる若き“助っ人さん”たちには、とても感謝しています」

彼ら彼女らは、活力や笑いを。長塚さん夫妻は、これまでの人生で培った知識や知恵、技を。そんな持ちつ持たれつのやりとりができる関係性の中で育んできた人との心の通った交流が、何よりの宝もの。

「都会では、“遠慮”が当たり前だった暮らしが嘘のよう。計画性もなく、勢いで始めてしまった田舎暮らしですが、何気ないときにふと、これでよかったのよと思うんです」

庭から見える富士山。
LDKの様子。食器棚の奥がキッチン。要所要所にとりつけられた照明は幾度かの引っ越しを経て現在の家に。物持ちがよく、鍋にいたっては60年愛用しているものもあるのだとか。
手前の菱形のお皿はフランスの蚕の市で買ったもの。「実家からもらってきた器(積み重ねているもの)とよく似ていて、なんだかうれしくて」。長塚さん宅には、このお皿のほかにも器や調味料入れなど、パリで購入した生活用品がたくさん。「娘と孫がフランスで暮らしていて、ときどき、訪ねるのが楽しみなんです」。
庭の一角に手づくりの薪小屋が。「ここで暮らしていると、なんでもできるようになるんだよ」と、誠志さん。

日々を潤す、暮らしの工夫と心がけ

趣味を生かして私たちらしい場づくりを

庭の手入れとディスプレイはわたし、大工仕事は夫の担当で、ふたりともいつも何かしら手を動かしています。長年使っているソファも夫作。大工仕事は“今あるものでつくる”のがテーマなようで、思わぬものが使われていたりすることも楽しい。たとえば多目的ルームのドアの取っては、もとはアルミ鍋の持ち手なんです(笑)。

視点を変えれば“不便”は“富”のひとつ

日課の犬の散歩も含めて、毎日5000歩くらいは歩いているようです。散歩の途中に富士山を見上げたり、花が咲いているのを見つけたり、そんな一瞬一瞬が宝もの。不便な生活は敬遠されがちですが、不便だからこそ気づける喜びもあるのかもしれません。動かないと生活できないので運動不足の解消にもなりますしね。

自然の恵みで健やかに

家のまわりの豊かな森がわが家の財産。というのも加熱せずに食べられる生ハチミツをつくってくれる貴重な日本ミツバチがここにはいるのです。食べるのはもちろん、自家製のローズマリーのクリームと合わせて毎日のスキンケアに使っています。

庭で育てたローズマリーを蒸留し、ワセリンと混ぜてつくったクリームは保湿ケアに。「顔は生ハチミツを塗ってから、その上にこのクリームを重ねて塗ります。
今年とれた日本ミツバチの百花蜜。
巣箱は全部で5棟。「家族と友人で食べるだけですが養蜂家の届け出も出しました。巣箱からいただくハチミツは各棟1箱分だけ。残りはミツバチ自身が冬を越すための栄養分として残しています」
食生活を見直して、心身の不調を改善!

色が健康の基本と考えています。だけど食事はおいしくいただきたいので、ベーコンやスモークチキン、スモークチーズなど添加物を気にせず安心して食べられるものを手づくりするようになりました。また、食後の眠気や体のだるさをきっかけにグルテンフリー生活を始めて5年目になります。普段は家でつくる食事が主ですが、いただいたり、たまに外で食べたりする分にはOKという柔軟なスタンスで続けています。

着心地のいい天然素材の服で、毎日を心地よく

昼夜問わず、可能な限り天然素材を身につけるようにしています。日常的に重宝しているのは「パジャマ屋イズム」のアイテム。ソックスはウール。腹巻きつきレギンスは内側がシルクで外側がウールや綿なので、汗をかいても冷えずに快適。シルクのパジャマはとにかく肌触りがなめらかで気持ちよく、着ていてノーストレス!

写真/清永洋

※この記事は『60代からの小さくて明るい暮らし』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。


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